理不尽な姫様
ある大陸の東の果てには、小さな島国があった。
その島国には魔物が巣食っていた。
しかし、とある勇者が現れ魔物から人々を救い、今ではその国は大陸の国々に負けないほど発展していた。
それでもやはり魔物たちは湧いてくる。
そんな魔物を退治封印している者たちがいた。
「御当主様!こいつは強すぎます!」
「私たちではどうにも太刀打ちできません!どうか姫様の応援をおねがいいします!」
はあ~
私の名前はかすみ。
『八神 十兵衛 かすみ』
十兵衛とあるがこれでも女子である。
そして、八神家の当主でもある。
今は巫女たちを纏めるものとして、魔物討伐にきている。
「どうしてもあの子呼ばなくちゃダメかな?」
「こんな状況です。他に作はありません」
ですよね~。
姫様というのは私の妹のことである。
出来れば私は妹を使いたくないのだ。
なぜかというと、いや、使って見せた方が早いだろう。
「はづき~おねがいあいつをやっつけて~」
ん?
返事がない。
かすみが待機させていた葉月の方を見ると、木に寄り掛かって眠っていた。
かすみに『万が一の時までは手を出すな』と言われてふて寝していたのだ。
「葉月起きなさい!」
「ん?どうしたのだ姉ちゃん。もうやっつけたのか」
「なに寝ぼけてんの。手伝えって言ってるのよ!」
「いや、当主に手を出すなと言われたのだ。それはできないのだ」
「当主はあたし。あたしがいいって言ってるんだからいいの。はやくしなさい」
葉月は音のならない口笛をふいて無視をしている。
こ、こいつ~
「わかったわよ、さっきはごめんなさい。これでいい?」
「ほんと姉ちゃんはしかたがないなあ。でもまだ駄目なのだ。お小遣いくれるなら、やってやってもいいのだ」
お小遣い?
昨日あげたばかりなのに?
葉月の奴いったい何に使ったんだ。
説教したくなるのをぐっとかすみは堪えた。
今はそれどころではない。
この魔物を退治する方が先である。
「お小遣いやるから、早くこいつをやっつけてちょうだい」
「わかったのだ」
そう言うと葉月は立ち上がり刀を抜いた。
葉月はゆっくりと魔物に近づいて、10mほどのところで止まると目にもとまらぬ速さで突撃した。
魔物は10m以上ある蛇の魔物である。
「お前気持ち悪いのだ!死ね~~!」
魔物も葉月に牙をむいてくるがそんなのお構いなしに葉月は一刀両断した。
どうだ参ったかと真っ二つにされた魔物に言うと、かすみにVサインを送った。
ほんとにこの子は理不尽なほどに強いわね。
そんなことをかすみは思った。
葉月はかすみに褒めてもらおうとよってきた。
しかし、褒められることはなかった。
石畳は見事にこなごなに破壊されていたのだ。
これがかすみが手を出すなと言った理由であった。
葉月が手を出すと、いつもこのありさまで修繕費を支払うことになる。
というわけで赤字になるのである。
「あんたって子は~いつになったら手加減ってのをおぼえるのかしらね~」
「いたいいたい。頭ぐりぐりするのはやめるのだ~」
この後葉月は、お小遣いのことも含めて説教されることになるのである。