第7話 曖昧な勝利
しかし、安心と勝利の確信を得てもゴレムスを倒す手段がない。
チマチマ殴って倒すか?流石に疲れる。
「せめて、木の棒くらいあれば…」
「…おいガキ。何ぼそぼそ言ってんだ。なんなんだお前。俺の攻撃が効いてねぇのか?」
ゴレムスが話しかけてきた。
どうやら、攻撃が当たらずイライラしてる様だ。
ガキはどっちだ、ガチムチおっさんが!
しかし、本当にキリがない。
なら、攻撃を全部受け続けて降参させよう。
「おい、おっさん!あんたの攻撃はヒョロいな!なんだあの棘は!痛くねぇぞ!」
「後悔するなよガキが。試合が終わる頃には身体中穴だらけで生きていくにも辛い姿に変えてやるからよぉ」
どうやら、激おこぷんぷん丸みたい。
そして、再度ゴレムスが攻撃を仕掛けた。
手を地面に叩きつけ、棘を生やす。
そして、その棘をゴレムスが掴んで折った。
また、棘を生やした。が、その棘はさっき折った棘に巻き付き、まるで斧の様な形になる。
「これで、お前の四肢をぶった切ってやるよ」
「切れるもんなら切ってみなよ」
ゴレムスはカイルに急接近し、斧を振り下ろす。
ん。あの時のオークと場面が似ているな。懐かしい。
そして、斧は確実にカイルの腕を狙い切り落とした。
…
……と思われたが。
腕は付いたまま。傷もない。
「さっきと同じだ…」
「なんだあいつ。気味が悪ぃ…」
観客がざわつき始めた。
そんな中ゴレムスは黙々と顔を真っ赤にしながら斧で攻撃をしていた。
時々、地面から棘を生やし心臓を貫かせようとしたが、効果はない。
あれから、1時間ほど経った。
ゴレムスは体力が限界に達していた。
そして、バタリと倒れた。
「勝者、カイル」
闘技場にカイルの勝利が響いた。
しかし、カイルはあまり納得いってないらしい。
「どうしたカイル。勝ったんだぞ?」
「キラスさん。勝ったんですけどなんか、達成感が無くて…」
実際、カイルは何もしていなかった。
ずーっと棒立ちでゴレムスを貶し続けていただけだったのだ。
「確かにそうだな。俺がどうにか説得して武器を貸してもらうよう頼んでみるよ」
「ありがとうございます。」
このあとも試合が何回か行われ、次の対戦相手が決まった。
相手はクラムという、カイルより少し年上の男の子だった。