~ネェ……アイタイ……~
俺は怖い気持ちを押し殺して、沙也加と共に子供部屋を調べ回った。こんなとこ……早く調べて出たい……。きっと沙也加もそう思っているだろうと、手掛かりを探す。
『お困りノヨウネ』
「!?」
頭に直接流れる声。梨美だ。
「おい……!! 此処にも何か隠してあるんだろ!? 場所教えろ…!! 早く此処から出たいんだよ……!!」
『……でしょうね。アナタ、怖いオモイ…シタモンネ……?』
「梨美さん……さっきのは……本当なんですか……? ……自分で自分を責めていたって……」
『……ホントウ……ダヨ。私、自分をスキに……ナレナイ。だから。イツモ…自分をセメテタ……。自分ガ……ボロボロにナルマデ……』
梨美は……苦しんでた。だけど…だからって俺達を巻き込んでまで……。
『そう……ダヨネ。ゴメン……なさい。アナタタチハ……関係ナイ……。コレハ……私のモンダイ……』
…………。梨美……本当は巻き込みたくて巻き込んだんじゃ……ないのかもしれない。……狂ってしまった時に……巻き込もうとした……。梨美…お前は…弱いだけ。弱くて…狂いやすくて…話を聞いてもらいたかった……。それできっと……俺達を……。
『……アノヒトが来なくて……寂しかった。……ずっとココロが……イタカッタ……』
「梨美さん……貴方は……寂しさのあまり……」
『言わないで……イワナイデ……。嫌…嫌…イヤァァァァァァァァァァァァァ!!!!!』
梨美が叫び出すと、照明が赤く点滅し始めた。気持ち悪くなる。目が痛い。赤・赤・赤。点滅の速度が速くなる。
『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』
さらに点滅する速度が速くなる。俺は気持ち悪くなり、倒れ込み、そのまま気を失った。
「零士君!? 大丈夫!? うっ……頭……が……!!」
そして沙也加も気絶した。すると赤い点滅が無くなり、元に戻る。そして影から何かが出る。
『…………。ワタシは……そう、寂しさのアマリ…自殺シタンダヨ……。沙也加の言うトオリ……。私はニゲテバカリ……ナンダヨネ……』
「……んん……」
目を覚ますとそこは子供部屋じゃなかった。
「……!? どうなってんだ!?」
俺は驚き、つい大声を上げる。隣で沙也加が倒れている。
「沙也加……おい…おいっ!!」
沙也加の体を揺さぶる。まだ温かい。顔色も大丈夫そうだ。だが……右足がやばそうだな……。俺は沙也加を背負って歩く。
「此処は……何階だ……? 子供部屋からは出てる……。くそっ……真っ暗で何も見えないぜ……」
俺は歩き続ける。すると明かりが見えてきた。
「明かりだ……!! 助かった……」
俺はそこへ向けて歩く。
『グルルルルルルルルルルルルル…………』
唸り声が聞こえる。化け物が来たのか? 明かりの範囲が小さく、正体が見えない。
「……お前は……何だ……?」
『……コロシ……テ…ヤル……』
「……!? 零士君……。何か……やばい……かも……」
沙也加が後ずさりする。……嫌な予感がする……。
『……アイツのせいで……アイツのせいで……!! ボクハ……好きな人ト……会えなくなった……』
「……あいつって……梨美のことか……?」
『……ソウダ。お前達も……気を付けた方が……イイ。離ればなれにナッタラ……オワリだ。モウ会えなくなる……。此処から……ドンドン厳しくナッテ……いく……カラ……』
もしかしたら、こいつの彼女も…此処にいるかもしれない。それとも……死んでしまったのだろうか……。
『モシ……会えたら……言っといてクレナイカ……? 会いたがってるモノガいるト……。ボクハ……此処で……終わりそう……ダ。これ以上ハ……ウゴケナイ。……アァ……ア イ タ カ ッ タ』
その言葉を最後に声が聞こえなくなった。死んでしまったらしい。グチャッ……と音が鳴った。体がグチャグチャになったような……とにかく気持ち悪い音だった。
「……俺達みたいに取り込まれた奴がたくさんいるみたいだな……」
俺はそう呟き、明かりを見つめる。……壁に何か書いてある……。
カベ…………チガ……ミツケ……
「……何だ……? 壁……? 見つけろってことか? 何を……? チガ……? 血……? ……よく分からない。とりあえず、壁に何かある…ということだな」
壁に書かれたその文字はきっと血で書かれた物だろう。所々、垂れていた。
「壁……? 一部分だけ違う…ということなのかな……? 見た感じ、大体同じ感じだもの。一部だけ違うとこがあるんだよ、きっと」
沙也加は考えながら言う。そうだ……こういう時は…ホラーゲームの場合を……。確か…ホラーゲームでありがちなのが……沙也加の言う通り、壁で一部、違うとこがあって、そこを見つけた時、何かイベントが起きる……。だが……今、俺達は懐中電灯を持っていない。正確に言うと、付かなくなったのだ。それで違いを判断するためには……実際に触るしかない。だが……触るとやばいことが起こることだってありえる。むやみに触るのは良くないだろう……。
「……っ、どうすりゃあいいんだ……!!」
『……オコマリノヨウデ』
「……!?」
咄嗟に振り向くと半透明な化け物がいた。
『コレハコレハ……失礼シマシタ……。驚きマシタカ……。私はコノ病院で医者をヤッテイタ者デシテ……。歩いていたら、コマッテル声が聞こえたモノデ…つい』
そう言って、医者の男らしき化け物は笑った。……不気味だが悪い人ではなさそうだった。
「……此処の壁、一部違う所があるらしいんです。教えてくれませんか?」
『ナルホド……。ソウイウコトデシタカ。分かりました。私が触って確認イタシマショウ』
「ありがとうございます…!!」
奇跡だと思った。此処には狂った化け物ばかりだと思っていたからか、身構えがちだった。だがこの人は大丈夫そうだ。俺は警戒するのをやめた。
『……フム……』
半透明の男は壁に触れながら確かめていく。そもそも死んだ者が壁に触れられるのだろうかと、若干疑問だったが……。するとある場所でピタッと止まった。
「……!! あったのか?」
『はい。確かに此処……少し窪みが……』
「じゃあ……此処に触れれば……」
男が触れて、大丈夫だったので、俺は安心してその窪みのある壁に触れた。すると、吸い込まれるような感覚が……。
「!? これは吸い込まれていいのか!?」
俺は辺りを見渡す。だが何もなかった。いや正確に言うと、見えない。……? 一瞬何か……。
『……!! イソグンダ!! 化け物が来る…!!』
半透明の男が警告する。よく見ると、血だらけで目玉が飛び出てる化け物がこちらへ向かって来ている。
『ぎゃあああああああああああああ!!!』
もう聞き慣れた叫び声が院内に響く。
「……!! 零士君……!!」
「分かってるって!! 行くぞ、沙也加!!」
「で…でも…吸い込まれても……」
「あの化け物に殺されたいのか!? とにかく行くぞ!!」
「……う、うん……」
俺は沙也加をぐいっと引っ張り、壁に吸い込まれた。
『……梨美様。アチラニ誘導スルコトニ成功シマシタ……。これにて、私の役目ハ終わりデスネ。ソレデハ失礼シマス』
此処は何処だ……? また真っ暗で何も見えない。沙也加は…無事だろうか……? よく見えない……。うぐっ…頭が…痛い…。くそっ…意識…が……。俺は頭痛に耐えようと必死にもがくが、敵わず、気絶した。
『コチラノ男性のテレポート完了シマシタ。女性ノホウハ?』
『コチラモ完了シタ』
『梨美サマに報告シニイコウカ』
半透明の男が誰かとの連絡を切り、姿を消した。
『テレポート完了…トノコト』
『ゴクロウサマ』
『コレカラハ一人一人デ行動シテモラウことニナルね』
『ソウダネ』
『イママデは協力でイケタガ……一人プレイだと…ドウナルカナ?』
『さあね。モシカシタラ…死んじゃうノカモね? 片一方……』
『ははは。カモシレナイネ』
『そろそろこのゲームも本番、カナ』
『アア。……梨美……』
『……? ドウシタノ? 類……』
『梨美の後ろに……ナニカ……イル……』
『エッ……ナニナニ…!? イヤ…イヤァァァァァァァ!!!』
『落ち着け!! ダイジョウブだ…。僕が助けてやるカラ……』
『……。ホントウ……?』
『……ああ。絶対ニ……』
『アリガトウ……』
……梨美の後ろに影がアッタ。その影が梨美に悪い影響をオヨボスカモシレナイ……。警戒シトカナケレバ……。梨美が…幽霊としてでも死んでしまうカモシレナイ……。僕が守る。梨美を…守ってミセルカラ……!! サァ、二人ヨ。二人だったお前達が一人ダト……ナニガ出来るカナ? 僕が梨美の後ろの影を何とかシテイル間、セイゼイ苦しむコトダ。……梨美……お前は……絶対に死なせナイ……!!




