~続々の化け物~
今回、かなりのグロ表現ありです。
御注意くださいませ。
私達は“彼女„達によって、ある異空間に連れてかれ、しかもそこには得体の知れない化け物がたくさん彷徨っていた。そんな私達に特別に(まあ、“彼女„のミスらしいけど)銃を与えられた。でも銃に入っている弾の量は僅か。何でもかんでも撃って殺すことで逃げるということは出来ないらしい。
「もう少し武器があればいいんだけどなぁ……」
「いや、そうは言っても、一般的なホラーゲームもあまり武器はないぜ。大概武器なしの素手だからな。ってことは俺達だってやれば出来るってことだな」
「そうは言っても……さっき見たでしょ? あの化け物が追っかけてくる速度。結構速かったし、逃げ切れそうにないよ……?」
「諦めるな!! ゲームとしてはまだ始まったばっかなんだぞ!!」
「うぅぅ……そう言われても……」
「とにかく進むぞ!!」
そう言って、零士君は歩き出す。私は慌ててついていく。病院の中は凄く散らかっていた。医療器具、機械、服、そして吐きそうになるほどの血。
「……鍵……とか……ないのか……? 全部閉まってるっぽいし……」
病院の扉は全て閉まっていた。硬く閉ざされてる、鍵がかかっているとかあるいは空間で固定されてるとか鍵は掛かっていないけど、長い黒髪がドアノブに絡みまくり、固定されて開けることが出来なくなっている。
「気持ち悪いドア……。この黒い髪……燃やせないかな……」
「マッチ……か。探せばあるかもな。探してみよう」
私達は引き続き、病院中歩き回った。だけどいくら探しても見つからなかった。しかも化け物があちこち彷徨っていた。あまり細かくは調べることが出来なかった。
「見つからない……何も……見つからないよ……」
「落ち着け、大丈夫だ。……ん?」
気配を感じたのか、零士君はまた後ろを向く。
「な、何……!?」
私は後ろを見ると腕と足が変な方向に向き、顔が上下逆になって化け物がいた。よく見ると、その化け物は何かを持っていた。
「ねぇ……あの化け物…何か持ってるよ……?」
「……! どうすれば取れるのだろうか……」
零士君はじっと化け物を見つめる。
『……アナタ……モ……此処に……ツレテコラレタ……のね……』
「!?」
「あ、貴方もって…ということは…貴方も連れてこられたってこと?」
『……ソウ……。ワタシモ……ココニ…連れてコラレタ……。あの“フタリ„に……』
「二人? あれ…私達は“一人„ですが……?」
私がそう言った時には、化け物は体が溶けて血肉になった。
「ああ……」
血はどんどん広がっていき、血塊が露わになっていく。骨が溶けてしまったみたいだ……。血塊の中から血まみれの何かが出て来ていた。私はそれを取り出すと、鍵だった。
「見つけた……! 鍵!!」
「!! ……204号室……? そこに何かあるのか……?」
「とにかく…行ってみよ……!」
私達が歩き出そうとしたその時、
ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!
物凄い破裂音が鳴り、びっくりする。恐る恐る振り向くと……
「ぎゃあああああああああああああああああ!!!」
……あの化け物だった。鍵を見つけたことでそれに反応したのだろう。
「きゃ!!」
「逃げろ、沙也加!! こいつは俺が引き付ける!!」
「だけど、零士君は!?」
「俺は大丈夫だから!! 早く行け!! 沙也加!!」
私は零士君に言われるがまま、走った。すると私の前方から別の化け物が現れた。
「きゃ!! こっちも……!!!?」
私は必死に走る。足がどうにかなりそうなくらい、走った。だけど化け物も恐ろしいスピードで追いかけてくる。
「きゃ……!!」
私は何かに躓いてこけてしまう。足を痛めてしまい、立ち上がることが出来ない……。後ろを見ると、化け物がもうすぐそこまで来ていた。
「嫌……やめて……死にたくない……!!」
私は後ずさりする。化け物はもう目と鼻の先にいた。駄目……食べられる……!!
「ぐるるるるるるるるる……」
「嫌…嫌……嫌ああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
私は叫ぶ。最後の叫びを。もう死ぬんだと覚悟して。
「ぎゃああああ!!」
化け物は叫んだ。
…………。
…………………………………。
あ……れ……?
私は恐る恐る目を開ける。化け物は赤く気味の悪い目で私を見つめる。……敵……じゃ……ない……?
『……逃げ……テ……。ワタシハ……アナタを……襲い……タクナイ……』
「えっ……?」
『ハヤ……く!!』
私は痛む足を引きずりながらその場を離れる。零士君を探さなきゃ……。私は来た道を戻ることにした。
「零士君……無事でいて……」
私は歩き続けた。でも真っ暗でよく見えない…。懐中電灯は零士君が持っていた。懐中電灯の光を探した。すると光が遠い所にあるのを見つける。私はその光の元へ歩く。すると化け物の血塊が分散していた。零士君はしゃがみ込んでいた。顔に血が付いていた。
「れ……零士君!!」
「……沙也加……」
零士君は小さな声で反応した。零士君は無事みたい。
「良かった……」
「それよりも…お前は……」
「私は大丈夫だから」
「大丈夫ならいいが……。じゃあ行こうか。204号室だから……2階だな」
「うん」
私達は歩き始める。床に血だまりがあったのか、歩くとピチャピチャと音が鳴った。
「……階段見えた!! 行こう!!」
「うん……!!」
階段を登ろうとすると、上から何か落ちてきた。
「え……何……?」
よく見ると、内蔵が飛び出た遺体だった。しかも上から血がポトポト落ちていた。
「ひっ!!」
私はそこを避けて階段を上る。
ガシッ!!
「きゃああ!!」
見ると遺体だったはずの物が私の足を掴んでいた。どれだけ足を振っても、離れなかった。するとだんだん掴む力が強くなり、足から血が出始まる。
「う……うぅぅぅ……」
駄目……足が……千切られそう……。もう痛みも感じない……。意識が…飛んでいく…。
「沙也加…!!」
バァン!!
破裂音が聞こえたのを機に、私は気を失った。
「……残りの弾、少ねぇのに……」
俺は沙也加を助けるために、残り少ない弾を犠牲にして、化け物を殺す。だが沙也加はもう右足は使えないだろう……。皮膚が僅かにくっついてる状態だった。ぶらぶらと右足が揺れる。あまりの痛さに沙也加は気絶してしまった。出血を止めるためにも、何処か、休める所に避難しなければ……。
「沙也加……ちょっと辛抱しろよ……」
俺は沙也加を背負い、ぶらぶらと揺れる右足を優しく持って、階段を上る。
「……すまない、沙也加。俺が…お前を守れなかったせいで……」
沙也加の顔が青白い。相当な出血で貧血状態のようだ。止血……!! 止血しないと沙也加が……!!
俺は駆け上り、2階の部屋で唯一開いていた部屋に逃げ込み、ベッドに沙也加を寝かせ、急いで治療する。
「消毒……。あと、こうして…包帯で固定……っと」
俺は何とか沙也加の治療を終え、座り込む。
「……此処でしばらく休めそうだな……」
病院の中は何処を歩いてもカビと血の臭いで充満していたが、此処はまだマシなようだ。治療薬も充実しているっぽい。此処は何処だ……。薬とか保管されていて…治療が出来るし、休むことも出来る……。……何だか眠たくなってきた。此処で眠くなるとか…どんな神経だろうか。だが此処でしか寝ることはできないだろう。そう思うと心が安心して、気付いたら、眠りに落ちていた……。
『1階は何とかクリア…ですか。デスガ、一人がかなりの重傷デスね…。あれでは歩くこともデキマイ』
『それにしても……化け物で裏切りがデルトハ……ね』
『またミスですか?』
『……どうやらソウミタイ。長年、教育シテナカッタから……気が緩んでるのカモ。後で教育し直サナイト……』
『……君も疲れているんだヨ……。色々。私がいない時トカ…特に頑張っテタミタイだし……』
『ソウナノカナ……。私が頑張ってないダケだよ……』
『梨美はよく頑張ってるよ……。今も……生前も』
『類……ありがと……』
……もしかしたらもう、梨美も精神が限界なのかもしれない。今度は私が頑張る番。せいぜい、足掻くんだな、弓月沙也加、瀬川零士。梨美のタメに……シネ。




