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~新たな入学者~

 私は弓月ゆみつき沙也加さやか。今年、津嘉山つきやま高校に入学するの。でもその高校は「死の学校」と言われ、恐れられている所らしいの。で、でも最近は事件とか聞かないし、きっと大丈夫だよね! それにしても……津嘉山高校かぁ……。オープンキャンパスは無いし、入試の時は違う場所で受けたから、学校自身は行ったことないんだよなぁ…。エリート校らしいんだけど……。今日は高校の入学式!! 初めて学校に行くから凄く楽しみ!!

「あぁ~これでようやく私も高校生!!」

「そうねぇ~。沙也加も高校生かぁ……。あ、こら! 寝ながら食べないの!」

母は入学式に行く準備しながら、弟晃司(こうじ)に叱る。

「んん……母ちゃん……眠い……。もう少し寝てから食べる……」

「晃司? ちゃんと食べないと、お母ちゃんが怒るよ? お母ちゃんが怒ったらどうなるか……あんたが一番よく分かってるじゃないの?」

私がそう言うと、晃司はビクッと飛び跳ね、慌てて朝御飯を食べる。

「ふふ、いつもありがとね、沙也加」

「ううん、晃司の扱いなんて慣れてるから」

私はそう言って笑った。

「それじゃあ…行きましょうか。いい? このお札、絶対に離したりあげたりしちゃ駄目よ。絶対!! じゃないと貴方も…“彼女„に連れていかれてしまうから……」

「はいはい分かってるよ……。ちゃんと持っとくから」

「はいは一回!」

「……はい」

こうして私達は高校へと向かった。私は長年事件が起きていないから大丈夫だと思っていた。

……あんなことになるまでは。


 高校の入学式は盛大に始まった。上級生から歓迎され、入学おめでとうと皆から言われた。校舎は伝統のある学校というのもあって、古びた感じだった。けれどもそれがまた、歴史のある感じがして私は素敵に思えた。

『……貴方……私に似てる……』

「!?」

声が聞こえ、キョロキョロと辺りを見渡す。けれど皆は先生の話を聞いてるため、誰も喋ってない。

「だ、誰なの……?」

私は小声でそう呟く。

『……あら? 貴方、私のこと、知らないの…?』

「!! も、もしかして……100年前に亡くなった……三山梨美(りみ)さん……?」

『……そう。私は三山梨美。私も昔……この高校に通ってた……。この高校はね…凄くいい所よ。行事とか…雰囲気とか…いいし…タノシイ……よ』

「そ、そうなんですか……」

『安心シテ……貴方を襲ったりはシナイワ……。もう私は…死んでるミ……。誰も私のことなんか…ミエナイダロウカラ……』

「それはどういう……」

それからは“彼女„の声は聞こえなかった。これは…夢? 何? でも夢ではなさそう…。頬をつねると痛い…。……寒気がした。もしかして私……“彼女„に目を付けられたのかな……? ……気のせいだ。それに“彼女„は襲わないって言ってたもの。きっと大丈夫。……そう信じた。


 鳥が鳴く。その鳴き声に俺は目を覚ます。

「……うるせぇ鳥だ……ったく……」

そう愚痴を言って、ゆっくり体を起こす。

「あいててて……くそ…昨日あのまま寝落ちしてしまった……首が痛いぜ……」

独り言を言いながら、時間を見る。

「ん~……7時50分……? はぁ!? 7時50分!? やっべぇ!! 遅刻する!!」

俺は飛び跳ねて急いで制服を着る。

「今日は確か高校の入学式だったぁぁぁぁ!!!」

俺は叫び、持ち物を確認して部屋を出、1階に下りる。

「おはよう、零士れいじ。どうしたの? そんな慌てて……」

「母さん、大変だ!! 入学式、明日って言ってたけど今日やった!!!」

「えぇ!? ちょ、今からじゃ間に合わないわ!! 零士、先に行ってなさい!! 私は準備してすぐ追っかけるから!! あ、あと食パンだけ食べていきなさい!!」

「ああ、分かった。行ってきます、母さん!! はむっ」

俺は食パンを咥えて家を出、走って高校へ向かった。

 俺は瀬川零士。今年から津嘉山高校1年となる男子だ。……これでも高校1年だ。遅刻しそうで走ってるけれども。ちゃんと高1だから安心しろ。え、安心出来ない? ……まぁこれからもっと余裕持つようにする……。パンを食いながら俺は高校へ走った。

「こっちだったっけな……。高校の近くにコンビニがあって……。あ、あった!! 間に合った……。今……8時15分……。ほっ……良かった……」

『……貴方……私の恋人に似てる……』

「はっ!?」

俺は周りを見渡す。だが誰も俺に話し掛けてなんかなかった。俺を抜かしていく生徒達。きっとこいつらも俺と同じ入学者。だけどこいつらじゃないということは……頭に直接……?

『……大丈夫……。私の声が聞こえるからって、どうかなる訳じゃないから…』

「そ、そうか……。お前は…もしや、三山梨美か?」

『おっ、よく分かったね。そう、私は三山梨美。私もかつて津嘉山高校に通ってたのよ』

「らしいな…それで自殺したとか」

『……エエ。私はもう死んだ身。もう生き返ることも…天国に行くことも出来ない……。だからワタシ、此処にいるノ。ズット。大丈夫、貴方を襲いはシナイワ。私は……貴方に用はナイモノ。……ただ、貴方を見て、恋人を思い出したわ……。あぁ……あの人、何処にイルノカシラ……。私、あの人がイナイト……』

「そんなに大事なんだな、その人のこと。なら、何で自殺なんかしたんだ?」

『!? 自殺……。アァ……ソウダ……。ワタシ、自殺、シタンダ……。アノヒトをオイテ……。アハハ…あはハハはハハハハはははハ!!!』

「す、すまん。そんなつもりじゃ…!!」

それから返事は返ってこなかった。俺は寒気がした。もしかして…俺のせいで“あいつ„を狂わせてしまったのではないか…? そして、俺は“あいつ„に目を付けられたのでは……。大丈夫だろうか…。いや、大丈夫なはずだ。俺はこのお札を持って――――……あれ、お札何処だ……。おい、何処だ…!? はっ!! しまった…俺の部屋の引き出しに入れっぱなしだ……!! おいおい待てよ…俺、今やばくねぇか? やばくねぇか!??

「お~い、そこの男子~。早く行かないとチャイム鳴るわよ~」

「!? 今……何!? 8時28分!?? やべぇぇ!!!!」

俺は急いで校舎に入る。お札を忘れたが、まぁ大丈夫だろうと少し…思ってしまってた。長年事件は起きてない。なら大丈夫だと。“あいつ„もすぐに元に戻るだろう。きっと。……そう信じていた。

……あんなことになるまでは。


 入学式は壮大だったが、正直つまらなかった。だが、雰囲気は凄く素敵だと思う。伝統のある高校だと聞いていたが、ここまで歴史のある感じだとは…。古びているが何処か、西洋を感じさせる雰囲気…。なかなかにいいじゃないか。

『……それが津嘉山高校のいいところ……』

「あ、お前か。さっきはすまなかった…」

『いいよ…。私は貴方の言う通り…自殺した人だし……』

「そ…そうか…。俺のせいでお前を苦しめたのかと心配だったんだ……」

『……私のこと……心配してくれたの……? ……ありがと……』

「いやいや、俺のせいだし…心配するのは当然だろ?」

『……優しいんだね。やっぱり貴方……アノヒトニ似てる……』

「あの人に……」

それからは返事がなかった。

「“あいつ„……やっぱり俺を……」


 おやおや、二人もの新入生が“彼女„に目を付けられてしまったこと。……まぁでも仕方ない。何故かって? それはですね…沙也加という女子高生は三山梨美の生まれ変わりなのです。そして瀬川零士は三山梨美の恋人…齋藤(さいとう)類の生まれ変わりなのですよ。……まさかこんなまぐれが起きるなんて…さすがにびっくりです。さぁ貴方も注意して下さいね。貴方も今、この呪われし津嘉山高校…別称「死の学校」に来ているのですからね。あ、安心して下さい。他の生徒は貴方のことは見えません。貴方は生徒の姿を見ることが出来ます。……生徒には見えてなくても……もしかしたら……“彼女„は……貴方のこと……ミエテルノカモシレマセンヨ…? あまり“彼女„に刺激を与えないことです。

『……あら、貴方……随分と不思議な存在なのね……』

これはこれは、三山梨美様。私達が見えたのですか?

『ええ。うっすらと…だけど。あら、今日は独りじゃないのね。一人…生きている人間がいる……』

こら、あまり脅さないこと。この人は私達の大切なお客さんなのだから。……何です? “貴方も死んでいるのですか?„と。……その通りです。私も既にこの世を去っております。あぁ、安心して下さい。貴方をあの世に連れていくことはしません。貴方には知って頂きたいのです。……この事件の結末を。

『ふふ、貴方、この人の話は長いから気を付けてね。時々難しい言葉、使うかもだけど、無理に理解する必要、ないからね?』

あぁ、申し遅れました。私は齋藤類と申します。……おや、どうしたのです? そんなに驚いて……。そう、私が“彼女„の恋人です。私はあれから交通事故ですぐに死亡し、しばらく彷徨っていると“彼女„に出会えました。“彼女„は私を置いて行ってしまったというのもあって狂ってしまったのです。今、私が頑張って“彼女„をサポートしているのですが……どうも、わたしも“彼女„の影響を受けてシマッタヨウデ……。安心して下さい。()()()()帰します。ですが次、此処に来た時……私達はアナタを……連れ去ってシマウカモシレマセン……。それでは参りましょうカ……。二人の運命を見に行きニ……。

『類……会えてヨカッタ……。ワタシ、ズット…貴方をマッテタ……』

マタセタネ、梨美……。もう離さないよ。ズット…ソバニイルから……。

『……うん!! 大好きだよ……類……』

……ありがと。おおっと、失礼しました。では行きましょうか。

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