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1/4 ge-mu  作者: 芝深矢
1/1

『合崎由奈の法則、田辺香蓮の本則』

人のざわめく音が聞こえる。


叫び声、足音、クラクション、着信音


視界がぼやけて、声も出ない


あー……私、死ぬ……のかな ?


熱い


痛い


冷たい


苦しい


痛い

痛い

痛い


怖い

怖い

怖い




けど………











































『次のニュースです。モデルでタレントの合崎由奈さんが昨夜〇〇市の繁華街で何者かに刺され、意識不明の重体です。犯人は現場から逃走し、今も行方がわかっていません。』

















「香蓮!香蓮!!目を覚ましなさい!!香蓮!!」



誰……?

ママ…?あれ、今海外遠征じゃ……



っていうか、『かれん』って誰?


重たい目を半分開き、普段よりも重く感じる体を無理やり起こす。



「ママ?どうしたの今海外遠征中でじゃあ……」



「この馬鹿!!なに言ってるの!!」



バチン


そんな音が聞こえたような気がした。

気が付くと頬が熱く、打たれたのだと分かるまできっちり3呼吸かかった。



「母さん、いくらなんでも。せ、先生を呼んで来よう。もしかしたら頭に異常があるのかもしれない」


右側を見ると50代ほどの男性が立っていた。頭は見事なバーコード。背は小さいのにお腹がベルトの上に乗っているせいでさらに小さく横長に見える。

既に頭おかしいのよ!と叫んでいる女性は目を真っ赤にさせながら鬼の形相。

50代ほどの女性で、男性とは正反対で髪の量い。というか、パーマをかけているせいでさらにそう見える。

そして何より、私のママではなかった。



「えっと……どちら様ですか?」

「ふざけたこと言って!ごまかされないからね!」

「え……」

「母さんやっぱり頭が……記憶喪失感かもしれないよ!?」

「そんな都合よくなるわけないじゃない!あんたって子は!自殺未遂なんてして!どれほど心配したと思ってるの!!」

「……」



……え?



周りを見ると、どうやら病室らしい。

個室で、他の入院患者はいない。

ベットからゆっくり起き上がる。病院の真っ白いシーツは昔から苦手だった。





何かがおかしい。

これってドッキリ?

それともドラマの撮影中だっけ?



ふと見た自分の手。

丸くて、手首と指が太くて短い。

ネイルどころかお手入れもまともにしていない。自分の手とはかけ離れた醜い手。

恐る恐る左側の窓を見る。

そこに映っていたのは手のように厚みがある丸っこい身体。

まっ黒くてボサボサの中途半端な髪。

腫れぼったい目。

低い鼻にカサカサの肌。




これは……誰?


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