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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第三百四十話


「その奴隷商だがな、姿を見せたのはここ最近のことだ。ひと月前、くらいだ」

「いや、三か月前にはもうやってたわよ? ……あんた、色々興味を持ってるように見えて抜けてるから、情報が曖昧なんだよね」

「――うぐっ」

 レリアルが間違った情報を口にしたため、すぐさま人族の女性職人が冷たい口調で厳しいツッコミを入れた。


「はあ、仕方ないわね。ここからは私が説明するけど……自己紹介するわ、私の名前はベリー。レリアルとは幼馴染の腐れ縁ってとこね。一応こいつよりはまともな情報をもっているはずだから安心して」

「俺はアタル、キャロにバルキアスにイフリアに……妖精だ。よろしく頼む」

 アタルが紹介していくと、それに合わせて全員が頭を下げる。


「あぁ、その子は妖精さんでいいのね……さて、奴隷商だったわね。さっきも言ったけど、三か月前くらいからこの街にやってきて店を開いていたわ。最初のうちは奴隷を扱っているやつなんて……ってみんな敬遠していたんだけどね。はあ……」

 そこまで言うと頬に手を当てながらベリーはため息をつく。


「どうやら口が上手い奴らしくて、金を持っているやつから徐々に使うようになってあっという間に受け入れられたみたいなのよね。それからは、種族差別みたいなものが徐々に広がってきて、正直今はあまりいい環境ではないのよ……」

 生まれ育ち、自分が好きだった街が変化してきていることにベリーは悲しんでいるようで肩を落としている。


「なるほど、ちなみにその奴隷商の店の場所、それから妖精が売りに出されているかわかるか?」

「場所は……えっと、レリアル、地図持って来て」

「はいはい」

 ベリーの指示に従って地図を用意するレリアル。

 このやりとりからも普段の二人の関係性が見えてくる。


「ここが今いる工房区で、ここがレリアルの工房。で、奴隷商の店は商業区のここにある。潰れた二店舗を買い取って一つにしたらしいわ。妖精が売りに出されているかはちょっとわからないけど……」

「まあ、妖精が売りに出されたとなれば噂になるだろうから、恐らくは今は出されていないんじゃないかな」

 いまいち確証がなさそうな雰囲気のベリーの言葉に、腕組みをしたレリアルが考えを付け足していく。


「なるほど、そっちは俺たちで探りを入れてみよう」

「はいっ! 妖精さんのお友達を必ず助け出しましょうっ!」

 アタルの言葉にキャロが強い言葉で賛同する。

 自分が奴隷だったことや、獣人の国で攫われた経験もあるため、思い入れが強かった。


「それで、もう一つ聞きたいことがあるんだが構わないか?」

「もちろんよ」

「おう」

 アタルの確認にベリーとレリアルは当然だと頷く。


「この街に、ウサギの獣人はいるか? 歳は四十歳前後だと思う」

 キャロの年齢、キャロの叔父の年齢からおおよそを推測して両親の年齢をあげる。


「ウサギの獣人――そっちのキャロちゃんって子の関係の誰かというわけね? ……うーん、どうだろ? 少なくとも工房区にはいないと思うけど……」

 ベリーは言いながら、周りの職人たちに確認の視線を向けていく。


「……一つ思い当たることがある。その件の奴隷商だが、そこには大層腕のたつ用心棒がいるとのことだ。まあ、ああいった仕事だと他所とのトラブルもあるだろうから、必要な戦力だとは思う」

 小さく手をあげてから話しているのは、背の高い寡黙そうな虎の獣人だった。


「その用心棒だが、確かウサギの獣人だという噂を聞いたことがある」

「――そんなっ!?」

 虎の獣人の話を聞いてキャロは思わず立ち上がる。


「キャロ、座るんだ。まだそれがキャロの親父さんだとは限らないだろ?」

 動揺するキャロをとりあえず座らせる。

 アタルも内心では、きっとそれがキャロの父親であるだろうと予想していたが、落ち着かせるために優しく声をかける。


「す、すみませんっ……でも、そんな、まさか……」

 座ってからもキャロの動揺は消えず、胸元に手をやりながら落ち着かない様子である。


「とにかく、妖精の件にしても、ウサギの獣人の件にしても、行き当たる先は奴隷商というのはありがたいことだ。一つの場所で用件が済むからな」

 そう言うとアタルは立ち上がる。


「お、おい、もう行くのか?」

 レリアルは急いでいる様子のアタルに驚いた様子で尋ねる。

 せっかく来てもらったのであれば、彼らの質問に答えるだけでなく色々な話を聞きたかった。


「わかった、奴隷商のほうはあたしのほうで様子を見てくるからあんたたちはゆっくりしているといいよ。どんなやつらがいるか、戦力はどれだけなのか、ウサギの獣人の人相。そのあたりを調べてきてあげるよ。なあに、あたしに任せておくれ!」

 それに声をあげたのは、女ドワーフの職人だった。

 どんと胸を叩きながら会話に入ってきた彼女はアタルたちの返事を聞く前に出て行こうとする。


「あ……」

 アタルが呼び止めようとした時には、大きく開け放たれた工房の扉が閉まるところだった。


「ははっ、ミランダはせっかちだからな。あぁ、ミランダっていうのはさっきの彼女の名前なんだが、まあ彼女はやると言ったらやってくれるから、任せていいと思うぞ。それより、色々話を聞かせてくれ。この素材の魔物は一体どんなやつなんだ?」

「えぇ、私も気になるわ!」

 レリアルとベリー、それに残った職人たちも興味津々といった様子で聞く態勢に入っていた。


「はあ、まあ調べてくれるならいいか。それじゃあ、話していこうか――あれは俺たちがエルフの国に……」

 それから、しばらくの間アタルたちは玄武だけでなく戦ってきた魔物たちの話をしていくこととなった……。





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