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第二百九十五話


「なるほどな。なんとなくわかったけど、核心の部分は誰も知らされていないって感じだな」

「そうですね……となると、どなたかの屋敷に忍び込むのが一番でしょうか?」

 アタルのつぶやきにキャロがなかなか物騒なことを口にする。


「あぁ、それも悪くないな。だが、俺たちが出向くのも面倒くさいな……そうだな、あれにしてみるか」

 口元に悪い笑みが浮かんだアタルの顔を見て、捕らわれた男はブルブルと震えていた。

「あれ、ですか?」

 キャロはきっとアタルの提案なら間違いないだろうと思いながら、一体どんな案なのかと思案を巡らす。


 男たちを全員起こして、アタルはその案を実行するための準備をしていく。

 額を打ち抜かれて死んだと思っていた男たちが生きていたことは、彼らを驚かせる。


「――ちなみに、今回は脅しのためだったから命を奪うことはなかったが、次は本気だからな」

 アタルの念押しの一言は、彼ら全員の身体を震わせることに成功する。






 作戦の仕込みを終えたアタルたちは一度食堂に戻る。

 ニャムとカッターは戦う力がないため、一度避難をしてもらいアタルたちと戦える料理人バンブで食堂に待機している。


「で、よくわからんかったんだが、どういうことなんだ?」

 アタルは戻ってくるとすぐに状況説明と、これからの作戦を説明していた。もちろんバンブもその場におり、説明に頷いていた。


「お前、聞いてなかったな。まあ、やってもらうことは簡単だ。俺の指示に従って侵入者を撃退してくれればいい」

「おう、それなら簡単だ。任せておけ」

(不安しか残らないな……)


 アタルたちはそれからしばらく、食堂内で談笑をする。

 そこにイフリアが戻ってくる。


『動いたぞ。身なりの良さそうなものもついてきているな』

 端的なその報告を聞いて、アタルは再びニヤリと笑う。


 各屋敷から部隊が出発したのをイフリアが確認していた。

 アタルが考えていた作戦のとおりに貴族たちが動いたことで彼の口元に笑みが浮かんだのだ。

 しかも今回は手下だけでなく、首謀者も同行しているようだった。


「お疲れ様。あとはあいつらが来たら動くぞ」

「わかった」

 そう言いながらも二人は飲み物を口にして、相手がやってくるのをゆっくりと待っていた。


 イフリアが確認したのは屋敷から出るタイミング。

 飛行してきたことを考えると、やつらが到着するまで一時間はかかる。それゆえのゆとりだった。

 イフリアの分の食事も用意してあり、イフリアもひと時の休息を楽しんでいた。


 予定の一時間経過後、アタル、バンブ、イフリアが戦闘態勢に入る。


「店を壊すわけにはいかない、外に出るぞ」

 三人が店から出ると、そこには三勢力が集まっていた。


「これはすごい。かなりの人数が集まって来たな」

 それぞれの勢力の先頭には貴族の男と、その護衛がいる。


「貴様は何者だ? そこで何をしている?」

 貴族の一人が質問する。


「何を、と言われてもなあ?」

「俺はシェフだ。食堂にいてなんら不思議はない。そして、こいつらは客だ」

 アタルの代わりにずいっと前に出たバンブが答える。


「そんなことは聞いていない! その店はニャムとカッターという者たちの店のはずだ。あいつらはどこにいる! あいつらを出せ!」

 額に青筋を浮かべながら強い口調で質問する貴族。


「あの二人なら今頃、いいホテルで優雅に遊んでいるんじゃないか?」

 二人が避難した先はアタルが用意したホテルであり、ここ数日忙しかった二人へのちょっとしたプレゼントだった。


「何をふざけたことを……あの二人はとんでもないものを持っていったのだぞ! 早く居場所を教えろ!」

「その、とんでもないものっていうのは、これのことかな?」

 アタルはスイカくらいのサイズに膨れた袋を見せる。


「それは! 貴様が持っていたのか……それを寄越せ!」

「いや、それは私のものだ」

「お前たちには渡さん!」

 貴族三人が争い始める。


「はあ、あいつらは何をやってるんだ?」

 その様子を見てバンブが呆れてため息をついた。


「まあ、あれで数が減ってくれればらくなんだけど……」

 しかし、アタルの思惑通りにはいかず貴族たちの間で話が進んでいく。


「それでは、あいつを先に倒したものが勝者で全てを総どりということでいこうじゃないか。お前たち、さっさとあいつらを倒せ!」

「負けるな、先に倒すぞ!」

「さっさと戦果をもってこい」

 それぞれの勢力が、それぞれの指示を受けてアタルたちへと襲い掛かる。


「まずは俺が戦うか」

 アタルはライフルのスコープを覗き、敵を捕捉すると即時引き金を引く。


「なっ!?」

 あっという間に倒されていくのを見て、貴族たちだけでなくバンブも驚いている。

 バンブも魔法を使うのをみたことがあるが、アタルの攻撃には魔法の発動が見られない。


「え、ええい! ひるむな!」

 なんとか鼓舞しようとするが、部下たちは二の足を踏む。どんな攻撃をされているのか理解できないうちに、倒れていく仲間を見ては動くこともできずにいる。


 一歩、二歩と徐々に後退していく部下たち。

「さ、下がるなあ!」

 貴族の声もむなしく響く。


「があっ!」

「ぐはっ!」

 そして追い打ちをかけるように、後方から苦しみの声があがる。


「な、なんだ?」

 今度は後方にいる者たちがバタバタと倒れる。


「逃がしませんよ。全員連行させてもらいます!」

 それはキャロの声だった。

『ガウッ!』

 ともにいるのはバルキアス。


 更に、冒険者ギルドから数名の手助けを呼んできており男たちを完全に包囲していた。


「あ、あぁああぁ」

「終わりだ……」

「無理だ……」

 貴族の三人は絶望に打ちひしがれがっくりと項垂れる。


 そこからはアタルの予定通りに、全員が冒険者の手によって連行されていった。

 アタルが流した情報に踊らされた貴族たちは、これまたアタルの作戦通りに捕縛されることとなった。


「さあ、あとはここに眠っていたものの回収だけだな」

 アタルの視線は食堂の、その下を見ていた。



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