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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第二百八十一話


 セイラの質問が終わったのはそれから数時間あとのことだった。

 魔の森の魔物についての質問と、アタルたちがなんでそんなに強いのか? という質問が話題のほとんどだった。


 アタルは特殊な武器を使っている。キャロはフランフィリアがギルドマスターを務める街で多くの魔物を倒したことで強くなった――そう話してなんとか納得してもらう。

 フランフィリアも話を合わせてくれたが、セイラは納得できないと根掘り葉掘り質問を続けていた。


 全ての話を終えたところで、今度は報酬の話に移る。


「えっと、出発前に話していた報酬の魔道具ですが……こちらとこちらでいかがでしょうか?」

 冒険者として依頼を受けたのはアタルとキャロであるため、二人分の報酬が用意される。


「ちょっ! セイラ、いいの? それって……」

「フランちゃん、いいんですよ。もう私たちには必要のないものですから」

 差し出されたそれを見て慌ててセイラを問い詰めようとするフランフィリアだったが、にっこりと笑うセイラに迷いはないようだった。


「これは『魔導テント』と言って、設置するとテントがある領域が聖なる結界に守られて魔物などの侵入を気にせずに休むことができます。中身も空間魔法によって広く作られていて、四つの部屋があるのでとても便利なものです」

 その説明を聞くだけで、そしてフランフィリアの反応を見るだけでこのテントがかなり貴重なものであることがわかる。


「いいのか?」

「もちろんです」

 確認するアタルに対してセイラは笑顔で頷いた。

 もう自分には必要ないものだから、有効利用してほしいと、その目は語っていた。


「わかった、ありがたく頂戴する」

 頷いたアタルは受け取るとそれを自分のバッグにしまっていく。


「キャロさんにはこちらをどうぞ。これは『鉄壁の指輪』といいます。キャロさんは恐らく素早い動きで戦うでしょうから、ダメージを受けることはそうそうないと思います。それゆえに装備も身軽なものにしているのだと……ですが、それでもこの先ずっとノーダメージというわけにはいかないでしょう。ですから、この指輪をつけることで手助けになると思います」

 手渡された指輪をキャロは左手の小指に装着する。


「身に着けましたね。それでは失礼して」

「えっ?」

 キャロが何事かと反応する前に、すっとよどみない動きをしたセイラはキャロの隣に立っていた。

 そして繰り出されるのは強力な一撃。


「――きゃっ!」

 まさかセイラに攻撃されるとは思っておらず、完全に油断していたキャロは、彼女の拳による攻撃を受けてしまう。


「あいたたた」

 しかし、そう口にしたのは攻撃をしたセイラのほうだった。

 痛む手を抑えながら顔をしかめている。


「全然……痛くないです。もしかして、この指輪の力ですか?」

 キャロは完全にノーダメージであることに驚いて、少し赤くなった手をふーふーしているセイラに質問する。


「いてて……はい、そうです。名前のとおり鉄壁。その者の防御力を何倍にも高めるのです。恐らくキャロさんは本来の防御力が高いため、私の一撃程度ではびくともしないのだと思われます」

 ふにゃりと笑って自らの右手を撫でながら答えるセイラ。その拳は赤く腫れていた。


「もう、セイラったら実際に見せたほうが早いからって、いきなり思い切り殴りつけるのはやりすぎでしょ。全く、見せてみなさい」

 呆れたような表情でセイラの手をとったフランフィリアがどこからか取り出したポーションを拳に振りかけて治療を始める。


「それじゃ、俺たちはそろそろお暇させてもらうよ。旧友の親交の邪魔をしたくないからな」

「指輪とても助かります。ありがとうございましたっ!」

 二人は挨拶もそこそこに部屋をあとにする。


 慌てて出て行ったようにも見えるが、ここまでセイラの質問が長かったため、早く解放されたいというのが理由のほとんどを占めていた。





「さて、依頼は終わったから次はどうするか……」

 考えながらアタルは一緒に階段を下りるキャロに話を振る。

「そうですねえ……もう少しの間、この街にいるというのはどうでしょうか?」

 思ってもみなかったキャロの返答にアタルは面をくらってしまう。


 階段を降り切って、ギルドの外へ出たところでアタルはキャロの言葉に質問を重ねる。


「この街にもう少しいる理由っていうのはなんなんだ? 確かに悪くない街だけど、とりたててここにいなきゃならないこともないと思うが」

 実際のところでは、アタルも別にここにいても構わなかったが、キャロには明確な考えがあるようなのであえてこの質問をすることにした。


「一つ目はこの街に来てゆっくりする機会がなかったので、街の散策をしたりゆっくりするのもいいかなと考えましたっ」

 言われてアタルもなるほどと頷く。


「二つ目に、海底の神殿の問題が解決したので、海に漁に出る方も増えるのではないかと……」

 遠慮がちなその言葉を聞いてアタルは笑顔になる。


「美味い魚が食えるかもしれないな! 新鮮な魚なんてしばらく食ってない気がする。この世界では刺身を食ったりもするのか?」

「刺身、ですか……?」

 聞いたことのない言葉であるため、ぎこちなく聞き返しながらキャロは首を傾げる。


「あぁ、新鮮な魚をさばいて、薄く切ってそれを醤油につけて食べるんだが……美味いぞ!」

 いつもの冷静さはどこへやら、アタルは刺身について熱弁する。

 日本人であり、生魚を食べる習慣があったアタルにとって刺身は好物の一つであった。


「な、生でお魚を食べるんですか!? それと、しょうゆ、ですか……?」

 アタルはキャロの反応を見て、表情を曇らせる。


「やっぱりか。生の魚を食う習慣はなくて、醤油もないか。そうだよなあ、ここにいたるまで醤油やそれに近いものを見たことがないもんなあ……よし、次の目標はキャロの両親の情報集めをしつつ醤油を探す、もしくは作ることだ!」

 最初はがっかりしたものの、刺身を食べることはアタルにとって重要事項であるらしく、その決意は強かった。


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