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第二百六十七話


「仕方ない、そこまでわかっているなら隠し立てしないで全て話そう。最悪、依頼失敗でも仕方ないからな」

 ため息交じりのアタルは腹を括って説明をすることにする。


「今回の依頼、雷獣を倒してくるのと素材を持ってくること。ただし、討伐証明の方法は指定されていなかった」

 ここまでの説明に対してセイラは頷く。


「その条件で俺たちは山に向かった。最初に俺たちに襲い掛かってきたのは子どもの雷獣だった。そいつを倒せるところで、親の雷獣が出てきたんだ。サイズは、見上げるほどの大きさだったよ。この時点で俺たちの意思は決まっていた」

 その時のことを思い出しながらアタルは言葉を続ける。


 特に打ち合わせをしたつもりはなく、アイコンタクトすらとっていなかった。

 しかし、四人の考えは全く同じもので、雷獣親子を殺さずになんとかしようというものだった。


「そこで俺たちがとった方法は、親も子も気絶させるというものだ。少し苦戦はしたが、結果として双方を気絶させることに成功した。まあ、結構強かったよ」

 雷獣は子どもであっても、相当な力を持つ魔物である。それを相手にして、結構強かったと評するアタル。

 しかも、アタルもキャロも傷らしい傷は一つも見られない。


「はあ、やっぱりあなたたちは相当な実力をお持ちのようですね……」

 驚いたセイラは思わず力を抜きつつため息をついていた。


「まあ、そのあとは交渉して角を一本もらったんだよ。命の次に大事だと言われている巨大な角を用意すれば、討伐したと判断してくれるかもしれないと思ってな。まあ、ギルドマスターさんには全てばれていたみたいだけど」

 やれやれとアタルがセイラを見て肩を竦める。


「えっと、その、すいません。でも、みなさんが雷獣親子を逃がした理由は、悪いものではないですよね?」

 悪いものとは――例えば別の場所に放ってそこを襲う。しばらくしてから再度討伐依頼が出たところで倒す。再度角を奪う。などなど考えられるものはいくつもある。


「ない」

 しかし、アタルは即答する。


「私たちはあの親子の雷獣を殺すことはできませんでした。互いに寄り添って、あの山の頂上で暮らしている。そこを人が立ち入るのに危険だからと討伐するのは、良心が許しませんっ」

 キャロは真剣なまなざしでセイラに訴える。

 これで依頼失敗と判断されても構わない。そんな強い思いをキャロは持っていた。


「す、すいません、大丈夫です。依頼は達成したことにしますから。雷獣には人に害をなさないように話して、別の場所に行くように話してくれたんですよね?」

 確信めいた表情でセイラが言う。


「あぁ……――なんで、俺たちの考えがわかるんだ? そもそも、なんで名前を知っていたんだ? 俺たちの力のことも知っているような口ぶりだったが……どういうことだ?」

 セイラの問いに答えたアタルはずっと引っかかっていたことを矢継ぎ早に質問する。

 全て見透かされているようで、アタルはスッキリとしていなかった。


「わわっ、す、すいません。お名前もお力も、お人柄も全て友達から聞いていたのです」

「……友達?」

 まくし立てられたためセイラは慌てて、知っている理由を話すことにする。


「そ、そうです。お二人もご存じだと思います。フランフィリアと言って、別の街の冒険者ギルドマスターをしているのですが……知って、ますよね?」

 名前を言ってみたところで、もしかして知らなかったらどうしようとセイラは不安になり始めていた。


「あぁ、知っているよ。そうか、ギルドマスター同士で連絡できる魔道具があるのか……いや、友達だと言っていたから、二人が個人的に持っている魔導具かもな。そもそも、ただの友達が俺たちの情報を共有することはないか……フランフィリアとパーティを組んでいたとかそういうことか」

 アタルが腕を組んで考えながらその結論を出す。


「…………」

 セイラは口をポカーンと開けたまま、言葉を失っていた。


「あ、あの、セイラさん? 大丈夫ですか?」

 それを心配したキャロがこてんと首を傾げつつ声をかける。


「はっ! す、すいません。あまりにおっしゃるとおりなので、驚いてしまいました……。アタルさんのおっしゃるとおりです。私とフランフィリアは元々一緒のパーティーにいたんです。黒き氷のフランフィリア、白き風のセイラなんて言う人もいたんですよ……」

 昔のことを思い出して、セイラは懐かしさに笑顔になっていた。


「アタル様すごいですね! 少しの情報からそこまで導き出すなんて」

「いや、カマをかけた部分もあるけどな。まあ、なんだかんだセイラからも歴戦の勇士の気配はあるから、予想はできたけどな」

 目を輝かせたキャロがアタルを褒めたが、彼自身は大したことはしてないとあっさり種明かしをする。


 そんな様子を見て、セイラはニコニコしていた。

「ふふっ、フランちゃんから聞いたとおり、お二人はとても仲良しなんですね。主従関係だけど、互いに支えあっているって聞いていたんですけど……うん、とてもいいパートナーです!」

 そう断言するセイラ――彼女の二つ名は”風姫セイラ”、もう一つが”先見のセイラ”。

 彼女の先行きを見通す、そして人を見る目は群を抜いていた。


「えっ!? えぇええぇえ! ぱ、パートナーだなんて。そんなっ……」

 キャロは頬を赤くして、両手で頬を押さえてきゃあきゃあと小さく騒いでいた。


「ふふっ、フランちゃんが言ってましたよ? 彼女が本気で戦ったとしてもあなた方には勝てないだろうと。フランちゃんもすごい魔法使いなんですけどね、その彼女が認めるほどということは相当な実力者であるということがわかります。そもそも、これほどの角を持つ雷獣と戦って無事なのですから、すごい力です」

 雷獣の角をそっと撫でながら笑顔で告げたセイラはフランフィリアの情報、そして結果を出した二人のことを認めていた。


「でも、雷獣の件を納得してくれるなら助かるよ。それじゃ、あとで手続きをしてもらおう。それと……なにか俺たちに用事があるんだろ?」

「……あ、あはは、わかります?」

 どうせなにかあるから呼び出したんだろうと言わんばかりのアタルの指摘にセイラは乾いた笑いを浮かべていた。


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