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第二百四十九話



 オニキスドラゴンと戦っているイフリア。

 そこにフェウダーが参戦する。


「あんた強いな! 俺も一緒に戦うぞ!」

 イフリアとオニキスドラゴンの怪獣大決戦。そこに加わるSランク冒険者フェウダー。

 しかも彼はアタルの弾丸によって怪我も治り、しかも肉体も強化されている。


 それゆえに、戦いに参加してもなんら遜色はなかった。

 次々と繰り出されるフェウダーの攻撃がオニキスドラゴンに向いていることにイフリアはすぐに気付き、うまく共闘していく。


『GUOOOOO!』

 それを鬱陶しく思ったオニキスドラゴンが声をあげる。


「とりあえずは、あれでしばらく持つはずだな」

 アタルはフェウダーの戦い振りを見て、しばし安堵する。


 そして、キャロとバルキアスはアタルの指示に従って逆鱗を探していた。

 しかし、オニキスドラゴンは巨体であり、しかも戦闘中で動いているとあっては簡単にそれを見つけ出すことができない。


「――二人にかかってるんだ、頼むぞ」

 そう呟いたアタルは、スコープを覗きこみ、回転する弾丸のジャイロバレットを撃ち込んでいく。

 この弾丸は着弾と同時に回転して、深くに突き刺さろうとする。

 もちろん、オニキスドラゴンの鱗は堅く、回転が止まると鱗に弾かれ落ちてしまう。


 しかし、この弾丸は次々と連発されていく。


「一発でダメなら、十発ならどうだ?」

 関節の部分であったり、なるべく強度の低い部分を狙っていくアタル。


 イフリアたちと戦っていて、標的が激しく動いているにも関わらずアタルの射撃は精確だった。

 アタルは十発撃つとすぐに場所を移動している。そのために、オニキスドラゴンはこの小さな、鬱陶しい攻撃がどこからやってくるのか把握できていなかった。

『GRRR』

 苛立ちを募らせるオニキスドラゴン。


「バル君! あれ、そうじゃないですか?」

 オニキスドラゴンの全身をくまなく見ていたキャロはある違いの一点に気づき、近くにいたバルキアスに声をかける。

『あっ! そうだね、あれだけ形が違うよ!』

 すぐにその方向を見たバルキアスと共に二人で確認がとれた。


 ならばと、二人はオニキスドラゴンの近くから一度離脱してアタルのもとへと戻っていく。


「アタル様っ! 見つけました!」

「わかった、報告を頼む。俺は攻撃を続ける」

 キャロたちが戻ってきたことを気配で感じながら、アタルはスコープから目をそらすことはない。

 別の魔法弾を装填して、攻撃の種類を変える。

 使った弾丸は氷の魔法弾――それも強化されたもの。強氷魔法弾だった。


 大きなダメージを与えることはできないが、翼や足の表面を凍らせていく。

 動きを封じることはできていないが、確実にその範囲はじわじわと広がっていた。


「左の翼の付け根、影になって見づらい場所に一つだけ形の違う鱗がありましたっ!」

「左の翼……」

 アタルはスコープごしに、キャロが見つけたという場所を確認する。

 倍率をあげていくと、確かにそこだけ形が違うのがわかった。


「確かにあるな。二人ともよくやった」

「アタル様、どうしますか?」

 場所を変えるアタルについていき、キャロが問いかける。


「俺はさっきからずっと、あいつの左足を中心に攻撃している。回転する弾丸、氷の弾丸を何十発と撃ち込んだ」

 アタルの言葉に耳を傾けながらキャロが確認すると、翼や他の部位に比べて左足の氷結範囲が広かった。


「さすがに逆鱗を直接狙うのは難しい。俺が弾丸で撃ってもいいんだが、一発当たったところで致命傷は無理だ。だから左足を攻撃して膝をつかせる――そこに最大の攻撃を撃ってもらう」

 最大の攻撃、つまりフェウダーのドラゴンスレイヤー。

 強壮弾で力が増強しているドラゴンスレイヤーであれば、ブラックドラゴンに放ったそれよりも強力なものが撃てるはず――それがアタルの考えだった。


「キャロ、フェウダーに作戦を伝えろ。まずは左足、その次が逆鱗だ」

「承知しましたっ。バル君、行きましょう!」

 次の役割をしっかりと果たすべく、キャロとバルキアスが走り出す。


「俺は、少しでもダメージを与えておかないと」

 明確に左足を狙ってるとばれないように、右の足、左右の翼、顔の周囲も攻撃していく。

 撃ち込んだ弾丸の数は既に二百を超えている。


 そして、イフリアとフェウダーを相手取っている。

 そんな状況にあっても、オニキスドラゴンは揺るがない。


 キャロの指示を聞いたフェウダーは徐々に戦う位置を移動させていく。

 アタルは最初に左足、次に逆鱗。それしか伝えていなかったが、キャロはその指示に加えて、左足を狙っているのがギリギリまでばれないようにと付け加えていた。


 イフリアもキャロたちのやりとりを聞いており、意識が自分に向くようにオニキスドラゴンの右側から攻撃を与えていく。

 フェウダーがSランク冒険者といえども、オニキスドラゴンが最も注意を払わないといけないのはイフリアであるため、徐々に右側へ注意が向いていく。


「……いいぞ、いいぞ――――いまだ!」

 タイミングをしっかりと見極め、この一瞬だと判断した時、アタルは火の魔法弾を氷に向かって放ち、溶かす。少しずつ広がった氷が解け、水になる。

 そこに更に水の魔法弾を撃ち込んでいく。

 加えて、雷光の魔法弾を撃ち込む。雷の属性と光の属性を有す特性の魔法弾。それに、ジャイロバレットの回転属性を加えていた。


「GYAAAAAA!」

 回転しながら、雷光の魔法が発動して足を広い範囲で攻撃する。

 強力な弾丸であるため、次の弾丸を装填するためにクールタイムが必要となるため、連発できずにアタルは解除のタイミングを今か今かと待つ。


「バル君、いきますよ!」

『りょーかいっ!』

 そして、雷光が収まってきたところで二人が弾丸が命中した位置を攻撃する。


「よくやった! うおおおおおお!」

 更にそこへフェウダーが強烈な一撃を放つ。


「GUOOOO!!」

 オニキスドラゴンがひときわ大きな声をあげる。強烈なダメージを与えたことを示している。


 膝をつかせたことで、翼までの距離が縮まった。

「てええええい!」

『ガオオオオ!』

 そして、翼目がけて、正確には翼の付け根の逆鱗目がけてキャロとバルキアスが攻撃する。


 二人の攻撃は大きなダメージどころか、多少のダメージしか与えることができていない。

 しかし、この攻撃の目的はフェウダーに場所を知らせる目的で放たれており、キャロは魔力で目印をつけていた。


「重ね重ねよくやった――俺も負けてられないな!! “ドラゴン……スレイヤー”!」

 黒竜を倒した強力な一撃、しかも今のフェウダーの身体は強化されている。

 ならば、この一撃の威力は最大最強のものとなっている。


 剣から放たれた斬撃は真っすぐ逆鱗に向かい、命中する。

 ギリギリと音を立てながら逆鱗を打ち砕こうとする。


「GUAAAAA!」

 かつてない痛みに叫び声をあげるオニキスドラゴン。

 そして、次の瞬間、フェウダーの渾身の一撃により、パリーンという音と共に逆鱗が砕けた。


「やった!」

 この言葉はドラゴンスレイヤーを放ったフェウダーの言葉である。

 もし、アタルが近くにいたら、フラグを建てるなと怒られていただろう。


 そして、フラグは見事回収されることとなる。


「GUOOOOO!」

 逆鱗を破壊されたオニキスドラゴンは、痛みに怒りのボルテージが最高に達する。

 目が血走り、我を見失ったように暴れ狂った。


 尻尾を大きく振り回して、キャロ、バルキアス、フェウダーが一気にまとめて吹き飛ばされる。


「きゃああああ!」

『アオオオオオン!』

「ぐおおおおおおお!」

 そして、オニキスドラゴンは瞬時に迫ると右手で思い切りイフリアを殴って吹き飛ばす。

 さすがに我を失った状態の凶暴性が高まったオニキスドラゴンの攻撃は相当重い。


「あぁ、さすがだな。だが、これでさようならだ」

 もしかしたら、こうなるかもしれない――アタルは最悪のケースを想定しており、引き金を引く。


 まっすぐ飛んでいく弾丸。

 逆鱗が先ほどまであった場所をアタルの弾丸が鋭く撃ち抜く。

 この弾丸は強力な魔法弾、使われた属性は光光光。

 つまり、光の力を詰め込めるだけ詰め込んだ強力な一撃。


 それが、逆鱗があった場所の皮膚を貫き、身体の中で爆発する。

 オニキスドラゴンの漆黒の身体が内側から発光し、眩い光がその身を貫く。

 強力な光の魔法を、身体の中から受けたとあってはさすがのオニキスドラゴンも立っていることができず、そのままその場に倒れこんだ。


 吹き飛ばされた四人は受け身を取ってなんとか無事だったが、倒れたオニキスドラゴンをしばらくの間呆然と見ていた。


 

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