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第二百四十七話


「ふー……少し落ち着こう」

 アタルは大きく息を吐くと、焦っていた気持ちが凪いでいくのを感じていた。

 

 これまで彼はいつも冷静に攻撃を行っていた。

 城塞都市の魔物討滅戦、ゴーレム戦、玄武と戦った時――その他のどの戦いでも、アタルは冷静に彼我戦力を把握して、突破口を見出していた。


 しかし、今回の戦いでは自らもかなりの危険にさらされることもあり、冷静さが欠けていた。


 だが、仲間であり、大精霊であるイフリアが現れたことで、一気に戦況が変わったことを感じ取ったアタルは、いつもの冷静さを取り戻しつつあった。

 

 そのため、アタルは深呼吸をして心臓の鼓動を落ち着かせる。


「黒竜はあいつらだけでもどうにかなるな。問題はオニキスドラゴンだ……」

「な、何か策はあるのか? いや、それよりも後から出てきたあの竜はなんだ? 名前を呼んでいるようだったが、知っているのか? こっちの味方をしてくれているみたいだが」

 いまだ混乱しているバートラムが続けざまに質問をするが、それはアタルの集中を乱すことになる。


「はあ……あの竜はフレイムドレイクという種で、俺の仲間で名前をイフリアという。今はあいつがオニキスドラゴンを抑えてくれているが、いつどうにかなるかわからないから何か策を考えなければと思案中だ。悪いが、邪魔をしないでくれ」

 ため息交じりでざっとアタルは質問に答えると、スコープを覗いてオニキスドラゴンの様子を確認していく。

 バートラムは聞きたいことがひとまず聞けたため、邪魔をしないように他の指示に回って行った。


 鱗が持つ強度はかなりのもので、貫通弾や強通常弾を使ったとしても貫くのは難しい。

 かといって、属性弾を使ったところでダメージを与えられるとも考えづらい。


 魔眼でオニキスドラゴンの鱗を確認したが、鱗自体は闇雷という特殊な属性であり、おそらく光の弾丸を使ったとしても大きなダメージを与えることはできない。


「――眼を狙うといってもな……」

 今現在オニキスドラゴンはイフリアと格闘を続けており、眼をピンポイントに狙うだけの余裕はみられない。

 そして、眼の粘膜の強度も高く、通常弾程度では弾くだけの堅さがあった。


「ならば……」

 アタルは弾丸の一覧を表示して、操作して新たな弾丸を作り出していく。

 弾丸の製造を終えるとアタルは立ち上がって走り出した。


「バートラム、冒険者たちがオニキスドラゴンに近寄る時は気を付けてくれ。あいつは他の竜と格が違い過ぎる。下手したら一発でもってかれるぞ」

「き、君はどうするんだ? ここから援護をしていたから、みんな戦えていたんじゃないのか?」

 アタルがこれまでと動きを変えるということは、戦況が変わるかもしれない――バートラムはそう考えていた。


「みんな強い。今は俺の援護がいらないくらいにまで状況が好転している。だが、あのオニキスドラゴンは単独で戦況を覆すだけの力がある――だから、俺はイフリアに加勢してオニキスドラゴンを倒してくる!」

 どうやって? その疑問がバートラムの頭を支配するが、それを口に出そうとした時には既にアタルの姿は遠くにあった。


 駆け出していったアタルはオニキスドラゴンとの距離を徐々に詰めながら、それでも姿をなるべく見られないように移動していく。


 キャロとバルキアスはアタルが動き始めているのを感じ取っており、早く黒竜を倒そうとフェウダーと共に戦っている。


「もう一度俺が黒竜の顎をかちあげる。キャロとバルキアスはあいつの眼を攻撃してくれ!! ……そのあとは――Sランクの力、見せてやる!」

 フェウダーの言葉に、キャロとバルキアスは返事はせずに行動で示す。

 どう動けばいいのか考えながら、二人は左右にわかれて黒竜に向かっていた。


 二人はこれまでに黒竜に幾度もダメージを与えてきたため、その存在を無視することはできず、黒竜の視線は二人を追っていた。


 その隙をついて、フェウダーが懐に入り込む。


「うおおおおおお! “ボーパルハンマー”!」

 二人に紛れて飛び出したフェウダーは大剣をハンマーに見立てて、腹の部分で思い切り黒竜の顎をカチあげる。


『GAAAAAA!』

 これまでに顎への攻撃は何度かくらっているため、黒竜は歯を食いしばってそれのダメージを最小限にしようとしていた。


 だが、思い切り力を入れたことで、身体の硬直を生んでしまう。

 それは、同時に意識が完全にフェウダーに向いてしまっていることを表す。


「てええええええええええい!」

『ガオオオオオオ!』

 かけ声と雄たけび、それが何者によるものなのか? 黒竜が察した時には既に手遅れだった。


 キャロとバルキアスはフェウダーの指示のとおり、左右の眼へと強力な一撃をお見舞いする。

 ただ攻撃を当てるだけでなく、それぞれの武器が当たる瞬間に、それぞれが強力な魔力を込めて竜の回復力といえどもすぐには修復できないようにダメージを与えた。


『GAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 両の手で目を押さえようとして、身体がのけ反る黒竜。


「それだけ大きく腹を見せてくれると助かる」

 この状況はフェウダーが望んで生み出したものである。

 ニヤリと笑ったような表情でフェウダーは力をためていた。


 竜の身体で防御力の低い場所。

 それは眼、口の中などの粘膜部位。関節部分などの曲がる場所。

 そして、鱗に覆われていない腹部だった。


「“ドラゴン……スレイヤー”!!」

 フェウダーがSランクとして認められた最大の理由。

 それは、過去にある国を襲った巨竜を倒した功績が認められたことだった。


 居合いの要領で鞘に入れた大剣を素早い動作で引き抜いたフェウダーは、そのまま黒竜の腹を綺麗に真っ二つに切り裂いた。


『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』

 黒竜は断末魔の声をあげると、そのままぐらりと身体のバランスを失い、土煙を上げながら地面に倒れてぴくりとも動かなくなった。


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