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第二百二話


 金属の魔物は強力なビーム攻撃を繰り出してはいたが、キャロとバルキアスの動きは素早く、直線状の単調な攻撃ではとらえられない様子だった。


『グアアアアアアッ』

 そのことにしびれを切らした金属の魔物は狙いを定めず、次々にビームを放っていく。しかし、その無軌道な動きですらキャロたちには見切れるものであり、一度として食らうことなく余裕を持って避けていた。


「バル君、攻撃方法が変わったようですが私たちのやることは変わりません。いきますよ!」

『うん!』

 二人は攻撃をよけながら、反対に金属の玉への攻撃を繰り返している。連携のとれた二人の攻撃は寸分たがわずに同じ場所を狙い続けていた。


 最初の一撃はもちろん傷をつけることが叶わず、ただ衝突時の金属音を響かせるだけだったが、今は表面に細かい傷ができていた。


 強度の高い表面だったが、同じ場所を攻撃し続けることで小さいながら傷をつけることに成功していた。

「まだまだっ!」

『うおおおおっ!』

 攻撃を避けながら連撃を決める二人の動きはとても素早くも力強い勢いを感じさせ、アタルはその動きに感心していた。


「よくあれだけの攻撃をよけながら、攻撃を繰り出せるものだな」

 アタルの戦闘方法は銃をつかったものであり、肉体を使っての近接戦闘では圧倒的に二人のほうが上だった。


「さて、俺のほうも準備をしておかないとな……」

 頼もしい仲間の戦い振りにふっと微笑んだアタルは二人の戦い振りをただ静観するだけではなく、自分の出番が回って来た際の用意をしておく。




「――えい!」

 ショートソードで斬りつけるキャロの攻撃による傷は次第に大きくなってきている。それまでの擦ったようなものではなく、はっきりと刃による裂傷だと認識できるほどに。

『ガアアア!』

 バルキアスの鋭い爪による攻撃もキャロの開けた傷をさらに大きくするように入っており、少しだが傷口からヒビが広がっている。


 だが金属の魔物は痛みを感じていないため、そのことに気づかず、ただただちょこまかと動く二人のことがうっとおしいと思っている程度であった。


「すごいな……よくあれだけの傷を」

 スコープごしに見るアタルには、二人が攻撃を加えている部位が確実な傷として映っていた。

「これならいけるな――あのビームがうっとおしいが……」

 少し苛立ち交じりの表情を見せるアタル。弾丸を放っても、無軌道で発射されるビームによって撃ち落とされる可能性を考えて彼は引き金を引くチャンスを見つけられずにいる。


「――アタル様!」

 すると、突然キャロから声がかかった。そして、彼女はちらりと視線も送っている。わずかなものだったが、魔眼を持つアタルならばどんな些細な動きも見逃さないと分かっての行動だった。


「わかった」

 その視線だけでキャロの意図を汲んだアタルはいつでも引き金をひける準備をしていた。その表情に先程の苛立ちはもうない。


 アタルが準備を終えたと同時にキャロとバルキアスは示し合わせたように跳躍して、空中に金属の玉の意識を誘導する。その状態ではビームを避けるのも難しい。それどころか、これまで狙いを定められなかったビーム攻撃の恰好の的になってしまう。


 そんなことはキャロもバルキアスも承知していた。しかし、それ以上にアタルの実力を信じていた。


「――いけ!」

 二人の信頼を感じながらアタルが放った弾丸は三発。音は二回聞こえた。

 最初の一発は単発で、次の二発はほぼ同時にしか聞こえないほどの速さで連続で打ち込んでいる。狙うは当然のごとく二人がつけた傷。


 金属の玉はアタルが攻撃を放ったことに気づいた様子だったが、それに対処しようという動きはみられなかった。なぜらなら、自分の装甲に絶対の自信を持っているためだった。


 しかし、その考えは打ち砕かれることとなる。


 弾丸の一発目が金属の魔物に触れる。これまで狙った獲物を外したことのない腕前のおかげでキャロたちが作った傷の部分に命中したが、傷が少し大きくなっただけで致命傷といえるものではなかった。


『グアアアアア!』

 想定通りのダメージに金属の魔物はアタルの攻撃を無視した。これでちょこまかと動き回る目の前の二人に止めをさせると、金属の魔物は目からビームを放とうとしたが、次の弾丸がそうはさせなかった。


『グアア?』

 何かが身体を弾くような感触とともに赤く光っていたはずの眼の光が収まっていく。


「――悪いが、させない」

 最初の弾丸は強通常弾。二人がつけた傷を少しだけ広げるのが目的だった。そして弾丸のあとをつけることで、次の弾丸が接触した時にずれることがないように。


 次に放った二発の弾丸はどちらも貫通弾であり、貫くことに特化した弾である。

 一発目が表皮と思わしき部分を貫き、金属の魔物の途中まで、おおよそ中心に届かない少し手前のあたりまで到達する。


 その止まった貫通弾をも貫通していくのが二発目の弾丸。それは確かに貫通弾だったが、通常の貫通弾ではなく強貫通弾だった。

 威力でいえば、貫通弾の数倍の力を持っており、金属の魔物の中心にある魔核を貫くことに成功する。


 金属の魔物の身体の内側から突き抜けるような衝撃が起こり、魔核の破壊によって内包していたエネルギーの放出が起こる。衝撃波のように一瞬強い波動を発したのち、自身の終わりを悟ったのか金属の魔物は断末魔の叫びをあげる。


『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』

 狂化した時と同じように、大きな声をあげたため、着地していたキャロとバルキアスはもちろん、離れているアタルも耐えるように不快な表情をしながら耳を塞ぐこととなる。


 しばらく続いたその苦しげな叫び声は、ある一点でピタリと止まり、金属の魔物の目から光が失われる。色を失った目からは底知れぬ闇を感じた。


「や……」

 やったのか? そう口にしようとするアタルだったが、すぐにこの言葉は危険だと考えてぐっと飲み込んだ。


 飛び上がっていたキャロとバルキアスも着地した場所から動かずに、金属の魔物の様子をうかがっていた。

 だが魔核を失った金属の魔物からは一切の魔力を感じることなく、念入りにアタルも魔眼で注視するがこれ以上動くことはないと判断し、二人のもとへと移動していく。


「キャロ、バル、ごくろうさん。よくあれだけの攻撃を全て避け切ったもんだ。すごいぞ」

 優しい労わるような表情でアタルはキャロ、続いてバルキアスの頭を大きく撫でた。


「えへへ、よかったですっ」

『やったね!』

 柔らかく目を細めながら二人は笑顔になって喜んでいた。


「――さて、あとはこいつをどうするかなんだが……」

 表情を切り替えたアタルが金属の魔物に近づいてそっと手を触れると、ギリギリを保っていた均衡を崩すように触れた場所から徐々に崩壊し、バラバラになったかと思うと、ついには塵になって風化してしまった。あまりに一瞬の出来事で、さすがのアタルたちにも考える隙も無かった。


 その様子を三人は口をあけたまま、呆然と見ることしかできなかった。


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