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第二話


「ここが異世界か……そういえば、この世界の名前を聞き忘れたな。まあいいか」

 異世界に降り立ったアタルが周囲を見渡すと、そこは広大な草原の中だった。転移先について神に頼んだ条件は三つ、戦闘の真っただ中ではないこと。転移したことを誰かに見られない場所であること。そして、街までそう離れていない場所であること。


 とりあえず街道に出ることにしたアタルは武器や自分の能力を確認しながら、街道に向かって移動する。

 以前は平均的な成人男性だった彼の見た目にも肉体改変が行われており、身長は本来のものより10cmほど高い180cm。全体的に引き締まった肉体であり、適度に筋肉がついている。髪の色は黒のままだったが、目の色は青色になっていた。


「視力もだいぶ強化されているな」

 アタルは弾丸生成能力についての話し合いが終わったあと、もう一つよく見える眼が欲しいと希望し、それを叶えてもらっている。それが青い目になった理由だ。

 最初の場所から街道までもそれほど離れていなかったため、すぐに辿り着くことができた。何人もの物や人が歩いたことによって踏み固められた街道はわりと見通しが良い。


「さて、どっちに行けばいいのやら……」

 辿りついたもののこの世界の地理情報まではわからないため、どちらに迎えば街が見えてくるのか判断しかねていると、馬車が大きな音を立ててやってくるのが見えた。目をこらしてよく見ると、どうやら馬車は魔物に追われているようだった。

「あれは、どうみても困っているよな……」


 さらに御者に焦点を絞れば必至の形相で馬に鞭を打っている。本来ならば御者の顔までは見えないはずの距離があったが、ここまではっきりと見えていることからも神にもらったこの青い目の調子はなかなか上々のようだ。

「お、お嬢様、しばし我慢して下さい! 街まで辿りつけばなんとか!」

 御者の男は中にいるらしい少女へ大きく声をかけるが、馬車の窓から見える限りでは彼女も必死で馬車に捕まっており、返事ができないようだった。

「グオオオオオ!」

 その後ろを追いかけているのは、狼型の魔物三匹と少し足が遅いオークが共闘して追ってきていた。


 この状況に先に音を上げたのは馬だった。豪奢なつくりの馬車は重量があるため元々馬への負担が大きい。そこを追っ手から逃げようと急いでいたこともあってカーブでついには耐えられなくなり、馬が倒れ、それとともに馬車も転倒してしまった。

「うおおおおお!」

 御者はその勢いで外に放り出されて、どさりと草原に落ちてしまう。

 馬車内にいた女性は外に放り出されることはなかったが、馬車の中で頭を打ち、ぐったりと気絶してしまっている。


「それじゃ、こいつの威力を確かめてみるか」

 困っている人を見て見捨てるような性格ではないアタルはスナイパーライフルを構え、照準を魔物の頭部に合わせる。


 スコープに狼をとらえたところで引き金を引く。

 発射音と共に鋭く発射された弾丸が勢いよく狼の頭に命中する。着弾すると瞬時に狼の頭は吹き飛んであたりに血しぶきと肉塊が飛び散り、狼は絶命した。


「ふう、当たるもんだな。これならいけそうだ」

 アタルの口角はぐっと上がっている。自身の腕がなまっていないことと神と一緒に作り上げたスナイパーライフルはまるで自分の手足のように馴染んでいることに満足していた。

 魔物たちは共に馬車を襲っていた狼が目の前で一瞬のうちに死んでしまったため、驚いて足がすくみ、頭部をなくして倒れた狼へと視線が集まった。


「隙だらけだ」

 戸惑う魔物たちをよそにアタルは次の狼に狙いを定める。まずは動きの速い魔物から撃破する考えだった。弾丸は自動で再装填されているおかげですぐさま次の攻撃に移ることができる。

 順番に放たれた二発の弾も一直線に残った狼たちの頭部へと向かい、着弾と同時に二匹の頭が吹き飛んだ。


「あとはお前だけだな」

 この時点になると、残ったオークもかなり離れたところにいるアタルが何かをしてきたのだと分かったようで、アタルを睨み付け一心不乱に向かって来た。

「なんで俺が狼から先に倒したと思ってるんだよっと!」

 次に放たれた一発もオークの頭を狙っていたが、彼らも馬鹿ではないようで手にした手斧によって弾は防がれてしまった。距離もあることからそれがいくら素早い物でも何かが飛んできたことで盾代わりにと咄嗟に武器を構えたのだろう。


「グルルル」

 狼たちが防げなかった攻撃をいなせたことでいい気になったオークはにやにやと笑いながら向かってくるが、この程度はアタルも想定していた。足の遅いオークは未だ普通の人なら顔も見えないほどの距離にいる。

「だったら、次はこれだ!」

 アタルはほぼ同時ともいえる速さで、三発撃つ。


 一発は斧を狙っている。それは当然のごとく金属音をたてて斧によって防がれた。

「グラララ」

 先ほど弾いた斧を狙うとは馬鹿なことをとオークは意地悪く笑っていた。

「ガアアアアアアア」

 しかし、余裕ぶったその笑顔のオークもすぐに叫び声をあげることとなる。


 アタルの一発目は斧を、そちらを防いでいる間に二発目は斧を持つ手を、三発目は足を狙っており見事に命中していた。鋭くオークの身を突き抜ける弾は的確に相手の戦意を剥ぎ取っていく。次々と襲いかかるそれになすすべなく、死への恐怖の色をくっきりと目に浮かべている。

「それじゃ、さよならだ」

 呟きと同時に放たれた止めの一撃はオークの頭部を貫通し、あっという間に絶命させた。ここまであまりに一瞬のことだったため、断末魔の叫びもあがらなかった。


 アタルのいる場所から魔物のいる場所まではかなりの距離があったが、これくらいの距離は彼の腕からすればないも同じだった。周囲を見回しても他に追っ手がない様子から彼は立ち上がる。

「とりあえず、様子を見に行くか」

 アタルはライフルを肩に担ぐと、倒れた馬車へと近寄っていく。


「おーい、無事か?」

 とりあえず馬車の外からアタルが声をかけるが、返事はなかった。

「おーい……っといたいた。大丈夫か?」

 倒れた馬車の中に潜り込むと女性が気絶しているのを発見するが、彼女から返事は返ってこなかった。先ほど馬車の中で必死に揺れに耐えていた女性の姿と一致するその見た目は、近くで見るとそれなりの身分なのか綺麗な顔立ちをしている。

「呼吸はしているみたいだな……とりあえず外に出して横にするか」

 アタルは彼女を優しく抱き起すと、馬車の外に連れ出して神からのプレゼントの一つである特殊なバッグから適当な布を取り出してその上に寝かせる。もちろん、街道ではなく草原の草を倒した上に。

 

「あっちの人も移動させておくか」

 草原に放り出された御者も背負って運び、彼女の隣に敷いた布の上に寝かせる。

 女性のほうは目立った外傷がないためそのままにし、御者の男性は頭部にけがをしていたので、別の布を取り出して止血だけしておく。

「さて、次はこっちか」

 アタルは馬車の前に立ち、これを引き起こそうとした。豪奢なつくりの馬車は本来ならば数人がかりでやっと持ち上げられるものであることが一見してわかる。


「せーのっと!」

 だが肉体改変により彼の力も強くなっており、馬車くらいであれば一人で起こすことができた。

「馬のほうは……大丈夫か。一応街道からは外れておくか」

 馬車が倒れた際に手綱が放された馬は自分で起き上がっていたので、声をかけて馬車ごと街道から外れた場所に移動しておく。


 ★


 アタルは二人が目覚めるまで、近くに腰を下ろして改めて自分の能力の確認をしていた。

「さっきのあれでポイントが増えたみたいだな」

 彼が神から与えられた弾丸を作りだすことができるという能力。これは無尽蔵に作れるというわけではなく、魔物ごとにポイントが存在し、それを倒すことで弾丸ポイント通称BPが増え、それを使って弾丸を生み出すというものだった。

 アタルが倒したのは狼型の魔物三匹、オークが一体だった。


「結構おいしいな。さくっと倒せてポイントゲットだ」

 通常の弾丸はポイントゼロで作ることができるため、さっきのように苦戦せずあっさりと倒せるのであればポイントに困ることはないと考えられた。

「能力の確認と実戦ができたのはいいけど、この人たち大丈夫かな?」

 しばらく待ってみたものの一向に目覚めない二人にアタルはどうしたものかと悩んでいた。


「……う、ううーん」

「おっ」

 先に目覚めたのは女性のほうだった。彼女の髪は金髪で、服装もぱっと見で高いものだと思われる仕立ての良いものだった。この世界の基準はアタルにはわからなかったが、目を覚ました彼女は日本の基準で美人の分類に入ると思われた。

「こ、ここは、痛っ!」

 彼女は身体を起こしたが、馬車の転倒の時に軽く頭を打ったらしく、そこへ手をやりながら痛みに顔を歪ませていた。

「お、ようやく起きたのか?」


 ようやく起きてくれたことに安堵したアタルが声をかけると、彼女は慌ててアタルへと視線を向ける。

「あ、あなたは誰ですか!」

 彼女は見知らぬ男に声をかけられたことに驚き、座ったままの姿勢で後ずさりをしていく。どうやら先ほどの襲撃のせいで色々と混乱している様子だった。

「いや、俺は……」

「ギ、ギール! ギール、大丈夫!?」

 パニック状態の彼女は後ずさりをしていると、隣に寝ていた御者の男性に気付いたようで飛びつくようにして慌てて声をかけた。


「う、うぅ、お、お嬢様? ご無事ですか、お嬢様」

 馬車から投げ出された彼のほうがダメージは大きいと思われたが、まず最初に心配したのが自分の身ではなく女性の無事というところに彼の忠誠心がうかがえた。

「ギール! 大丈夫、私は大丈夫よ!」

 その二人のやりとりをアタルは黙って見ていた。先ほどの彼女の様子からきっと今声をかけても先ほどのように話が進まないと思ったからだ。


「はっ、そうよ! ギール、変な男がいるのよ!」

 どうやら彼女は未だ混乱の最中にあるらしく、何も話していないアタルのことをすっかり変な男と決めつけていた。

「むっ……も、もしかして、あなた様が我々を助けて下さったのですか?」

 しかし、ギールは混乱する彼女をなだめながらも周囲の状況を確認しており、近くにある馬車、二人の身体の下に敷かれた布を見てそう判断した。


「まあ、そうなるな。どうしたらいいのかわからなかったから、とりあえず二人をここに寝かせておいたんだ。魔物たちの死体は放置したままだけどな」

 アタルが指し示す方向に、馬車を狙っていた魔物の無残な死体が転がっているのを確認して、女性は顔を青ざめさせながらようやく自分の間違いに気づいたようだった。

お読みいただきありがとうございます

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