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魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!(Web版)  作者: かたなかじ


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第十七話


 作戦を聞いたキャロは気配をできるだけ消して、ウルフにばれないギリギリの距離にまで移動する。彼女の小さな体はうまく周囲の障害物が隠してくれていた。

 そこで親指を立ててアタルへと合図をする。特殊な目をもつ彼にはどんなわずかな合図であろうと見逃さなかった。

「よし、準備完了だな。それじゃ、弾丸をアレに変えてっと」

 合図の確認を終えたアタルは以前に作った特殊弾に入れ替える。


 アタルが作った特殊弾は二つ、一つはキャロに使った強治癒弾。そして今回装填したのがもう一つの特殊弾、炎の魔法弾だった。

「いくぞ」

 にやりと口元に笑みを浮かべると、愛銃を構えてその引き金を引いた。


 集まって何か話でもしているのか、リラックスした何体かのウルフが集まっている。その中心にまずは炎の魔法弾を撃ち込んだ。その弾は一体に着弾すると、そこを中心に周囲の数体を巻き込んで炎の魔法を巻き起こす。

 この魔法は炎の魔法を使える魔法使いであれば大抵の者が使えるものだったが、ここまでの超長距離で同じ威力で放てる者は宮廷魔術師にもいるかわからなかった。


 キャロはその様子を見て内心驚いてはいたが、事前に効果のほどを知らされていたため、それを表には出さずに素早く駆け出し、自分の獲物へと向かっていた。その間にもアタルの愛銃から響く音を遠くに聞きながらその音に紛れるように近づいていく。

 その両手に持つ短剣はアタルに買い与えられたもので、片方はマジックウェポンという話の通り、キャロの身を軽くしていた。自分の思っている以上の速さで走れていることに驚きながらも嬉しさの方が勝る。この身体を取り戻し、いい武器を与えてくれたアタルの作戦を実行することだけに集中し始めた。


「せいっ!」

 余分なことは口に出さず振り下ろす時の声だけを口にして、一番近くにいるウルフに斬りかかる。右手の短剣で首元に斬りつけ、左手の短剣で同じ場所へと二撃目を加える。

「ぎゃううううん」

 魔法に気を取られ、隙を作っていたウルフは不意に現れた彼女の連撃によってあっという間に倒された。


 他の個体もまだ状況を把握できておらず、何が起こったのかと戸惑っている。その隙をキャロは見逃さなかった。反応速度も上げてくれる効果もあって元々観察する力があった彼女の動きをさらにスムーズなものにしている。

「ていっ! とりゃっ!」

 小さい身体を活かして素早く舞うようにウルフを翻弄するキャロの動きも慣れたのかどんどん研ぎ澄まされていき、的確にウルフを捉えていく。

 更に二体のウルフを倒したキャロの前には、ようやく状況を把握し終えたウルフ一体だけが残っていた。警戒心をむき出しにしているのか歯を見せて威嚇している。


「あなたで最後です」

 淡々と告げたキャロの言葉はボスであるデスウルフを無視したうえでのものだった。彼女の役目は雑魚であるウルフを全滅させること。

 ウルフは周囲にさっきまでいた仲間が自分以外に誰も生きていないことに驚愕し、目の前の少女に対して焦り、恐怖などいくつもの感情がその心の中に渦巻いていた。しかも先ほどからなにか爆発音のようなものが周囲に響いていて、ボスが無事でいるのか気がかりで仕方ない様子だった。


 当のボスウルフことデスウルフはというと、アタルの銃弾を避けることに精一杯でウルフを助けにいく余裕がなかった。耳と鼻の良さから恐らく向こうで仲間が襲われていることはわかってはいたが、自分の身を守ることだけで必死だった。

「あっちにいかせるわけにはいかないんだよっと!」

 アタルのライフルは一般的な地球でのライフルとは異なり、使い手次第で連射も行えるオンリーワンの代物だった。


 それゆえに次々と襲い来る銃弾は一撃でデスウルフを倒せないまでも動きを制限するだけの攻撃を行えていた。

「ぐるるるるる」

 反対に動きを止められているデスウルフは思うように動けないことにイライラが募っている。


「ぐおおおお!」

 そして苛立ちから大きな一声をあげるとウルフたちを助けることは諦め、銃弾が飛んでくる方向を睨み付ける。そして、強く足を踏み出そうとしたところへ予測されていたかのようにそこへ再び銃弾が飛んできた。

「ガァッ!」

 デスウルフは人間でいう舌打ちをしたような苛立ちを見せた。同じ場所から攻撃されていることはわかっていたが、近づこうにも近づけないのだ。


「ふう、確実に居場所はばれただろうから、そろそろ動いてくれると……」

 同じ場所から連続した射撃を続けているため、アタルはデスウルフの動きを止めることに限界を感じ始めていた。


「てやあああぁ!」

 そのタイミングで先ほどのウルフを倒し終えたキャロが声を上げながらデスウルフへと斬りかかっていく。彼女の能力はウルフたちを倒したことで経験を積んで強化されており、またここまでで自らの武器の性能も把握し、戦いに対する慣れもでてきている。


 しかし素早く繰り出された攻撃はデスウルフによってさらりと避けられてしまう。そのことによってキャロの姿勢が一瞬崩れてしまう。

「があああ!」

 チャンスが舞い降りたと言わんばかりにそこにデスウルフの爪が襲いかかる。

 彼女も攻撃を受けないようにとすぐにデスウルフとの距離をとろうとするが、やはり高ランクであるデスウルフの動きは圧倒的に速く、爪の迫る速度のほうが一枚上だった。多少の怪我をすることを覚悟して身構えたキャロ。


「ぎゃうん!」

 しかし、情けない声を出したのはデスウルフのほうだった。

 キャロに迫っていた爪はアタルの放った弾丸によって撃ち抜かれていた。


 弾き飛ばされた爪の破片がいくつかキャロに向かって飛んでいったが、防御の姿勢をとれていたことで大きなダメージにはなっていなかった。

「うちのキャロにそう簡単にダメージ与えられると思うなよ? 犬っころ」


「てえええっ!」

 多少怪我をしながらもデスウルフにできた隙をキャロは見逃さなかった。

 その一瞬を突いた攻撃は見事にデスウルフに届き、皮膚を切り裂くことになる。その傷口からデスウルフは血をしたたらせたが、通常のウルフの何十倍もの力を持っているだけあり、ダメージはそれほどでもないようだった。


「つぎっ!」

 だが、キャロの攻撃は一撃で終わりではない。更なる追撃が同じ部位を狙ってきており、傷を負ったデスウルフはその攻撃も受けてしまうことになる。

「があああう!」

 それでもまだ致命傷とはいえず、再びキャロへと攻撃を繰り出そうとする。


 そこにアタルの銃弾が飛んでくる。これをデスウルフは予想しており、一瞬だけ動きを止めて見極めたそれを避けることに成功し、再度残った側の爪が勢いよくキャロへと向かっていく。一度食らった手を何度も喰らうほどデスウルフも甘くはなかった。

「くっ、いつまでも守られてばかりでは!」

 キャロは両手にある短剣を十字にして爪を防ごうとするが、数瞬拮抗したのち、その小さな体は勢いに負け、そのまま後方へと吹き飛ばされてしまった。


「きゃああああ」

 吹き飛ばされた先は背の高い草があり、そこに着地したことで大きなダメージにはならないようだったが、彼女の手からは短剣は弾き飛ばされていた。悔し気に唇をかみしめながら短剣がなくても戦わなければとその身を起こそうとするが、へにゃりと力をなくしたキャロの耳へ時を待っていたかのように力強いアタルの声が聞こえた。

「キャロ、よくやった」

 最後までキャロが抵抗したことでできたその隙はアタルにとって十分すぎる攻撃のチャンスを作っていた。


 キャロが攻撃をしている間にアタルは新しく特殊弾を作成していたのだ。

「これで、終わりだ!」

 それを頭に浮かべて特殊弾に切り替わったその引き金を引くと弾丸はキャロが作ったデスウルフの傷へと向かい、そこから体内に入り込んだ。

「ぐおおおおおおおおおお!」

 それはデスウルフの雄たけびだった。傷口に塩をぬりこむかのように入り込んだ弾丸がデスウルフを苦しめている。


「まだ、その弾は続きがあるぞ」

 にやりと笑みを浮かべたアタルが指をパチンとならすと、弾から魔法が発動された。

 雷魔法を発動し、バチバチという音が響き、外へ溢れるように光が見えたと思えばデスウルフを中から焼き尽くし、さらには皮膚までもを焦がした。 そして、丸焦げになったデスウルフは力なくそのままバタンと横たわった。


「よし、これで依頼完了だな。キャロは……無事か。よかった」

 草を払って立ち上がり、ゆっくりとアタルのもとへと向かってくるキャロの姿を見たアタルは安堵の声を出した。

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