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第百六十八話


「まず、アタル君の武器はこれだ」

 テルムがふわりとした笑顔を向けつつアタルへ手渡したのは盾だった。

「武器? 盾?」

 武器と言われたのに、渡されたのが盾、これではアタルも疑問に思うのは当然だった。


「ふっふっふ、ただの盾に見えてそうじゃないんだよ。説明するね? まず、基本性能として盾としてのものがある。これは玄武の甲羅を使っているから強度はバッチリでかなりの攻撃を防げると思うよ」

 訝しげな表情でアタルは受け取ったそれの表面に触れる。それだけで、強固なものであることがわかる。


「いい盾だが、武器は……」

「まあまあ、慌てないでよ。攻撃を意識しながら軽く魔力を流してもらえるかい? あぁ、人の方向は向けないように」

 首を傾げつつもアタルは言われるがままに、誰もいない方向へと向けて極少量の魔力を流していく。


 すると、盾から小さなナイフのようなものが射出される。

「おぉ!」

 魔力が弱かったためかそのナイフはすぐに下に落ちて消えた。急に現れたナイフに、アタルをはじめ、キャロやバルキアスも驚いている。

「これは、盾で防ぐと同時に攻撃を行えるものなんだ。込める魔力の属性に合わせて射出される武器の属性も変わる。もちろん威力は魔力量次第だよ」

 テルムが沸き立つ高揚感を抑えつつ語ったそれにアタルは目を輝かせる。


「それはすごい、俺は遠距離武器だから、そこを別動隊にみたいなやつらに狙われてもこれなら戦えるな!」

 攻守一体だけではなく、攻撃の汎用性が広がったことに喜ぶアタルに、テルムはもう一つのものを取り出す。

「それだけじゃないよ、こっちの剣も君のだ」

 差し出されたのは短剣のようだった。先ほどの盾のインパクトからつい期待が高まる。


「これは短剣か?」

 しかし、アタルが鞘から剣を取り出すと柄の部分しか見当たらない。

「ん? 壊れたか……いや、そもそも刀身がないみたいだな」

 きっとなにかあるだろうかと訝しげな表情をしつつ鞘の中を確認してみるが、そこにも刃の部分は見当たらなかった。


「それも盾と同じだよ」

 クスリとほほ笑むテルムに言われて、なるほどとアタルは魔力を込めてみる。すると、柄から魔力の光を帯びた刀身がするりと伸びてきた。

「お、おおおぉ。すごいな! これも色々に応用できそうだ」

 興奮気味で話す二人のやりとりを見ていたブラウン、キャロ、ナタリア、バルキアスには驚きはあったが何がすごいのかがわかっていないようだった。


「みんな、この武器の特徴がわかっていないようだね。……でも、説明はしないでおこう」

「あぁ、そうだな。考えるのもいいことだ、キャロとバルは俺がこれを使う場面を楽しみにしていてくれ」 

 答えのわかっている二人は意地の悪い笑顔でそう言った。


「もう、すぐそうやって遊ぶんだから」

 テルムのこの表情は見慣れているのか、ナタリアは仕方ないわねと呆れ交じりの笑顔になっている。

「なんでしょうか? うーん、刃がないことでのメリット……」

 アタルの戦闘スタイルや新しい武器たちの特徴を思い浮かべながらキャロは真剣に考えていた。


 だがブラウンとバルキアスは、教えてくれないのでは興味がないと関心がなくなっていた。







「さて、それじゃ最後になるね。キャロさんの武器だよ!」

 気を取り直すように手を一度叩いたテルムがキャロに見せたのは数本のナイフ、そして数本の片手剣だった。

「近接戦闘が多くて、場合によって武器を交換したりするって言ってたからね。いくつか武器を用意してみたんだ。特性としては、この短剣は魔力を流すと重さをほとんど感じることがなくて素早い攻撃につなげることができる。剣の方も同じ特性なんだけど、こっちは魔力を流すことで属性武器にしたり斬れ味を上げたりすることができる」

 その全てが魔剣としての特性を帯びていることにキャロは目を開いて驚いていた。


「た、確かにそう言ったと思いますが、これすべてにその効果が?」

 無茶ぶりを言った自覚のあったキャロが驚きながら問いかけると、自信満々にテルムは頷く。

「それと、この剣の素材なんだけどかなり硬い玄武の骨を軸として魔力浸透性の高い金属なんかも使っているから、単純な剣としての性能も僕が作った中でも上位……いや、トップだと言っても過言じゃないよ!」

 両手を広げてそう宣言したテルムの表情は誇らしげだった。職人として最高のものを作れたことはとてつもない幸福感があるのだろう。


「あ、あのっ触ってもいいですかっ?」

 欲しい物を目の前にしてうずく心を抑えつつ恐る恐る尋ねるキャロに、テルムは満面の笑顔で頷く。

「もちろん! これは君の物だよ!」

 許可がおりると飛びつかんといわんばかりにキャロはナイフと剣を手にとっていく。柄や鞘も女性であるキャロが使うものであるため、華美ではないが細やかな装飾が施されていた。


「……キャロさん、気に入りました? 鞘とかのデザインは私がやったんですけど……大丈夫ですか?」

「もちろんですっ、すごい綺麗ですっ!」

 うかがうようにナタリアは自分が手掛けたと伝えるが、内心では不安が大きかった。しかし、その不安もキャロのキラキラと眩しい笑顔を見て吹き飛んだ。本当にそう思っているのが強く伝わってきたからだ。


「アタル様っ、アタル様っ、これすごいですよ!」

 キャロは嬉しそうな笑顔を浮かべつついち早くアタルに見せようとするが、当のアタルはというと自分の武器の使用方法を考えるのに夢中な様子だった。だが先ほどのアタルの喜びようを見ていたため、あとで改めて見せようと大事な物を抱えるように武器をそっと胸元に寄せた。


「……ごほん、二人とも喜んでいるのはいいが、俺の作った防具も忘れないでくれ。早速装備してみてくれるとありがたいんだが」

 ぶすっと不貞腐れたように腕を組むブラウンは武器にばかり注目が集まるのが面白くない様子だった。確認もかねて試着してもらいたいと不機嫌に告げる。


「あ、あぁ、そうだな。キャロ、バル、全部ちゃんと装備してみよう」

 ハッとしたように我に返ったアタルの言葉に二人は頷き、三人は防具と武器を装着していく。サイズは事前に測っていたため、吸い付くように彼らの身体にピッタリ合った。

「一応、サイズ変化の魔法も知り合いの錬金術師にかけてもらったが、元のサイズはしっかり合わせたほうがいいからな」

 うんうんと頷きながら語るブラウンは体型が多少変わってもそれに対応できるようきちんと手をうっていた。


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