第百三十一話
店を出たアタルとキャロは今後どう自分たちが動いていくか考えていた。
「どうしましょうか、アタル様」
どこへ向かうでもなく道を歩きながらキャロはアタルに問いかける。
この街で受けた依頼は完遂、そして霊獣や神獣と契約をするという目的も達成した。とすると、次はどうするのか。その疑問が出てくるのは当然のことだった。
「そうだな……ラーギルのやつもどこに行ったかわからんし、本来の道に戻るのがいいかもしれないな」
アタルとキャロの本来の目的、それはキャロの故郷に向かうことだ。
「そうですねっ! そうです、それがありました!」
ハッとしたように口を押えたキャロは色々なことが起こっていたため、自分の最大の目的を忘れかけていた。
「まあ、色々あったからな……そういうわけで、キャロの故郷のある獣人国を目指そうと思うんだが、問題はないか?」
「もちろんですっ!」
『僕も行ってみたい! キャロ様の故郷見てみたい!』
眩しい笑顔を向けながらキャロもバルキアスもアタルの意見に賛同する。
「それじゃあ、その線で動くことにしよう。まず向かうはエルフの国だ」
「おーっ!」
『おー!』
アタルの宣言を受けて、二人は手をあげて気合を入れた。
「とりあえず、ギルドの二人には報告しておくか。さっき出たばかりなのにすぐ戻るっていうのも、なんかな……」
「それなら、今日のところは宿に戻りましょうか。宿の出発の手続きもして、明日の朝いちばんで出発の挨拶に行けばいいと思いますっ」
せっかく次の行動が決まったのにもかかわらず、出鼻をくじかれたようにアタルが気乗りしない様子だったため、微笑んだキャロがそう提案した。
「あぁ、それがいいな。そうしよう」
「えへへ、お役に立ててよかったですっ」
アタルがキャロの提案を受け入れ喜んだため、キャロも嬉しくなって長いウサギ耳が機嫌よく揺れていた。
その後、彼らは宿でゆっくりと休養を取り、翌昼前に冒険者ギルドを訪れた。
「冒険者のアタルだが、ギルドマスターたちに面会を頼む」
アタルは人の少ないホールで、受付の職員にそう依頼する。
「あぁ、アタルさんですね。少々お待ち下さい」
対応してくれた職員は昨日も勤務しており、アタルたちがギルドマスタールームに行くのを見ていたため、彼らなら話をとおしても大丈夫だろうと考え、すぐに階段を上がっていった。
「さて、どんな反応をするかな?」
ここ最近の依頼はアタルたちを頼りにしているため、そのアタルたちがいなくなるとギルドとしても困ることになる。そのため、引き留められるかもしれないとは考えていた。だがアタルの気持ちはもうこの街を旅立つことで固まっている。
「うーん、引き止められそうですけど、ここにいる理由がなくなってしまいましたから……」
旅を優先するため、キャロもここに残るつもりはなかった。
そんなことを話していると、すぐに先ほどの職員が戻って来た。
「お待たせしました。申し訳ありません、ギルドマスターですが来客中でして、あとにしてもらうようにとのことです……」
職員は申し訳なさそうに頭を下げてそう言った。
「そうか、それは残念だ……じゃあ、ここのカウンター使っても大丈夫か?」
アタルはそう言うと紙とペンを取り出した。そこにブレンダとミランへの伝言を記していく。自分たちがこの街で行うことがなくなったこと、そして別の国に向かう予定であること。それらを世話になったことへの謝辞を交えて残した。
「それじゃ、これを渡してくれ」
簡単に書き終えた用紙を半分に折りたたむと、それを受付職員に渡す。
「は、はい、承知しました! あ、でも今、来客のほかにもちょっと立て込んでいるようなので、後で渡すことになりますがよろしいでしょうか……?」
それを受け取った職員は申し訳なさそうな表情で念のため確認をし、アタルはそれに対して大きく頷いた。
「あぁ、それでいい。頼んだぞ。キャロ、バル行くぞ」
職員がしっかり頷いたのを確認したアタルは二人に声をかけて、ギルドをあとにする。
ちなみに、この手紙をあとで渡したこの職員は、ブレンダとミランになぜアタルたちを引き留めておかなかったのだとこっぴどくしかられることとなった。
「さあ、これで報告は終わったから獣人国へ向けて出発だ。その手前にあると言われてるエルフの国に向かうぞ」
「はいっ」
『うん!』
馬車に乗り込んだ一行はそうして何度目かの宣言をしつつ、街をあとにした。
エルフの国の情報は事前に仕入れており、アタルは情報共有を兼ねて再確認をする。
「エルフの国は確か、全体的に穏やかな印象だったよな。外に知識や技術をあまり出さないけど、来る者は拒まずだったと思うが……」
あっているか? とアタルは視線をキャロに向けて確認する。
「そうですね、その認識であっていると思いますっ。他には、自然が豊かな国だったと思いますよ。大自然と共存していて、王都の周囲も森に囲まれていたはずですっ」
それを聞いて、アタルはエルフ国の様子を思い浮かべる。日本にいる時に読んだ物語のエルフのイメージのとおりであるなと考えていた。
「それはまあ、あれだな、いかにもファンタジーのエルフだ。ちなみにエルフは魔法が得意だったりするのか?」
これまた物語でよくある特徴なため、アタルは質問する。
「えっと……確か木を操る魔法や、妖精? 精霊? だかと協力した魔法が得意だと聞いたことがありますっ。種族内の連帯が強く、騎士団も強力な力を持っているとか」
思い出すように話すキャロの説明を聞いて、アタルはうんうんと頷いていた。
「それならあれだな。特に気になることがない限りは早めに国を抜けたほうがいいかもしれない」
これまでも何度か面倒ごとに巻き込まれていたため、エルフの国ではそういったことは最小限にとどめておきたい。そう思いながら、行く先に視線を送った。
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