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第百十八話


「さて、このへんでいいでしょう。止めてきますね」

 しばらく戦いを見ていたギガイアはアタルにそう言うと、魔物に近づいていく。ゆっくりと、しかし無駄のない動きで距離を詰めると、それに気づいたキャロとバルキアスが距離をとった。


「瘴気の魔物、というのは現役時代にもお目にかかったことがないですね」

 近寄ってくる彼を標的に定めて拳を振り上げてくる瘴気の魔物だったが、ギガイアはそれを避けることなく真っすぐ進んで行く。

「危ないっ!」

 拳が何の防御姿勢も取らないギガイアに当たろうとしたため、キャロが思わず声をあげてしまう。


 しかし、次の瞬間、ギガイアの目の前で瘴気は霧散していた。

「なかなか強力なようですが、こういった属性に対しては私のほうが一枚上手だったといったところでしょうか」

 クスリとほほ笑んだギガイアは勢いよく手を瘴気の魔物の胴体に突っ込んで、そこで聖属性の魔法を放っていた。


 その次の瞬間には瘴気を吐き出している魔物を手でつかんでいた。身動きができない黒い魔物は苦しげに唸っている。

「ふむ、通常の冒険者であれば正体を知ることができずやられてしまいそうですね。正体がわかればこんなものなんですが……」

 この魔物によって命を奪われていったであろう冒険者たちのことを考えたギガイアは悲しそうな表情になっていた。そっと顔を伏せ、簡易的ではあったが冒険者たちの魂に祈りをささげる。


「それで、そいつはどうするんだ? もう一度封印するなら、俺たちでやっても構わないが」

 アタルが提案するがギガイアはゆっくりと首を横に振った。

「いえ、それは私が行いましょう。あなた方の封印は強力すぎるため、かけた当人でなければ解除できないようですから……それでは」

 一息吐くと、ギガイアは魔物を掴んでいる手とは反対の手に魔力を込めていく。


「“魔物封印”」

 彼の口から出たのはシンプルな言葉だったが、手から放たれた魔力は球を成して、吸い寄せるように魔物を閉じ込めていく。形はアタルたちが作ったものと同じ球状だったが、その色は真っ白だった。

「これで完了ですね」

「ほー、すごいな」

 自分たちとは別の方法で封印球を作り出したギガイアにアタルは感心していた。


「何を謙遜されているのですか、他者が破ることのできない封印を施せるあなた方のほうが十分すごいですよ」

 苦笑交じりでギガイアは手の上で封印球を転がしながらアタルに言った。


「そうか? まあ、なんにせよこれで俺たちの依頼は完了でいいよな?」

 アタルの質問にギガイアは笑顔で頷いていた。

「今回の依頼についてはこれで完了です。ありがとうございました」

 その答えを聞いて何か含みを感じ取ったアタルは眉をひそめる。


「今回ってことは、まだ何かあるのか?」

「えぇ、これから調査結果をまとめますので、それをまとめた手紙をブレンダに届けて欲しいのです」

 アタルたちが街に戻る前提でギガイアは話を進めていく。


「あー、そういうことか。まあ、別にいいんだが……あんまり会いたくない人物ではあるな」

 面倒くさいという雰囲気を出して頭を掻くアタル。彼はブレンダに対して苦手意識を持っていた。

「まあ、そう言わずに……タダで、とは言いません。もう一つずつ好きな物を持っていっていただいて構いませんので」

「うっ……わかった。受けるよ」

 ギガイアの言葉にアタルは倉庫にあったものを思い浮かべ、その魅力に負けて依頼を受けることにした。


「それなら、もう一度装備をみたいですっ!」

 びしっと手をあげたキャロは既に乗り気になっており、どの装備をもらおうか思い浮かべていた。

「俺も別のものを色々見せてもらうか」

 アタルもキャロ同様、何を選ぶかすでに考えていた。


「ふふっ、それでは戻りましょうか。私は魔物についてまとめますので、お二人はご自由に選んでいて下さい」

 微笑んだギガイアが先導して、再び部屋に戻って行く。





 それからしばらくの間アタルとキャロは倉庫に籠って依頼料となる報酬のアイテムをどれにするか探していた。バルキアスとイフリアはまた隅の方で一緒に休んでいる。

 一方で、ギガイアはブレンダあての手紙をしたためている。

 今回の魔物について、どんな能力なのか、正体はなんなのか、倒すにはどうすればいいか。それらを簡潔に記していく。


 それと同時に、ブレンダが気にしていたアタルとキャロについては、力を見たが強かった等の内容にとどめていた。

「こんなものでいいですかね。彼女、怒りそうですが……まあそれも一興でしょう。娘さんにその矛先がいかないことを祈っておきましょう」

 柔らかく目を細めたギガイアがそう呟きながら手紙に封をしていると、アタルとキャロがアイテムを選んで倉庫から出て来た。


「ちょうどいいタイミングですね。こちらも書き終わりましたよ」

 アタルたちが倉庫にいたのは数時間であり、手紙を書くには十分な時間だった。

「それはよかった。それじゃあ、俺たちが選んだアイテムの確認をしてもらおうか」

 そう言ってアタルが出したのは、腕輪だった。


「あー、これを選びましたか。懐かしいですねえ。私たちが初めて攻略したダンジョンで手に入れたものですが、なんだかんだと最後まで使い続けたものですね。少々傷がついていますが、効果は変わらないと思います」

 確かに腕輪には経年劣化による傷がついていたが、この腕輪の本質はアクセサリのそれではなく、マジックアイテムとしてのそれだった。むしろ、それだけ長く使われるほどのものだということを傷が物語っている。


「使ってみた感じでは力が上がったように感じたが……実際はどうなんだ?」

 魔眼で見た限り特別なアイテムだということはわかっており、身に着けてみたところ装着前に比べて力が出ているように感じていた。


「あぁ、確かに力が強くなる効果もありましたね。ですが、その腕輪の最大の効果はそれではなく、防御力をあげる効果があることなのです。装着者が持つ本来の能力によりますが、あなたであれば多少の攻撃は防げると思われますよ」

 防御能力強化の腕輪。これがこのアイテムの持つ本来の能力だった。


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