七話『シキの運命』
路地裏、夜。
ソラは黙っていなくなってしまった。
またあの椿のところへ行ったのだろうと、ふらふら怪物斬りをしながらそこへ向かっていたときだった。
「あれ、は……」
愕然とした気持ちだった。
全身を水晶に変えた、両手にナイフを……。
レイラを持つ少女。
よくよく見知ったそれは、間違いなく。
「ソラ?」
『……』
少女は何も答えない、ただレイラを構えた。
『シキ!』
シズイの声で我に返り、襲い掛かってくる連撃を避けて後ずさる。
『だめだよ、ああなったらもう、殺してしまうしかない。
そうしないと、ずっと彷徨うだけだから』
「――」
いつかこうなる。
そんなのは最初から分かってた。
「あぁ、畜生」
シズイを構える。
『レイラを切り離して、心臓を貫けば彼女は死ぬよ』
「平気で言うなぁおまえも」
『だって……そうするしかないでしょ?』
シズイらしからぬ言葉に驚いたが、会話をする余裕はない。
相手はソラだ、長期戦にはできない。
覚悟を決めて腕に力を込めた。
だが。
「……え」
腹に走った痛み。
『……』
レイラが貫通した……、俺の。
瞬時に間合いを詰めた、目の前にある銀色の双眸。
そこまで考えて、レイラを引き抜き間合いを取って、シズイでソラの心臓を突き刺した。
「くっそ……!」
そのあと、残る力でレイラとソラを切り離す。
その体はがらがらと崩れ落ちて、霧のように消え去った。
「……あーあ」
『シキ! シキってば!』
朦朧とする意識のなかでシズイの声を聞いた。
「情けない最期になっちまったな」
ソラのように変わり果てるまであらがったのでもなく。
非情になりきることもできなかった。
人間らしく愚かな俺の最期。
「あいつは……」
白椿のやつは、死んだのかな。
そう考えていると、ぼやけはじめた視界にそいつが見えた。
「あなたは、正しくあなたであった」
……くっそ、最悪な幻覚だぜ。
心の中で悪態をつく。
「いずれ、また、会う日まで」




