六話『ソラの運命』
逢魔が刻がくる。
私は一人で白椿のもとへ向かっていた。
東条君には何も言っていない。
これさえ終れば。
もう苦しむ人だって。
じきに見え始めた白い椿の花。
その下に佇む白い着物の青年。
私はレイラを取り出して、白椿の青年に切りかかる。
どうなったとしても、兄と約束したのだから。
これだけはどうしても、やり遂げなければ。
「この世には変えられない運命があり、宿命がある。
あなたはただの人間であって、大きな流れにあらがうことはできない。
あなた一人に変えられるものは何もなく、あなたという存在は空に浮かぶ星よりも、海辺に転ぶ砂粒の一つに近しい」
白椿の青年は静かに囁く。
「あなたのために海が流れを変えることはなく、あなたのために風が凪ぐこともない」
一瞬、心臓がどくんと大きく鳴ったが、渾身の力でレイラを青年の心臓に突き立てる。
「ですから、もう苦しみなさいますな」
「――」
けれど……体が動かない。
両腕から結晶化していく私の、体。
「不幸があるから幸福がある、悪があるから善がある。
あなたがたが望んだ願いは、最初から矛盾していた」
水晶のようにぱりぱりと、私の体が変わっていく。
それの意味するところを、私は理解していた。
「生まれいずる命があれば、死する命がなければならない。
すべては循環する、ただのひとつの流れにすぎない」
よどんでいく意識の中で、最後の声を聴いた。
「だが、あなたの運命はすでに決まっていた。
あなたは正しく、あなたであった」




