五話「イノチ」
その日、学校では全校集会があった。
屋上から飛び降りて死んだやつがいたのだ。
校長の言葉を聞きながら、俺はぼんやり考えていた。
この世に神がいようといまいと、この世に救いがあろうとなかろうと。
もしも俺に魂と呼べるものがあるなら。
いずれ目覚めて元の場所に戻るということで。
そりゃあ、人生は長い一本の映画を見ているようなものかもしれないと。
だがいつか目覚めるからといって、死にたくて死んだやつがこの世に一人でもいるのだろうか。
屁理屈言えば、手足を落とされて内臓をえぐりだされたような状態なら、死にたくて死んだかもしれないが。
まずそんな状態になりたがる奴があんまりいないだろう。
理由があって、死ぬしかないと思い込んじまった結果。
こういうことになったんだろう。
そしてその理由には、見えない怪物がかかわっているかもしれないということを。
今の俺は知っている。
教室へ向かう道すがら見かけたソラは悔しそうだった。
別におまえのせいではねえだろうにと思いもするが、もともとの性格なんだろう。
◇◇◇
その後、非常に残念なことだが、教室はくだらない話で盛り上がっていた。
死体を発見した生徒が写真を撮っていたとかで、その死体が面白いとか面白くないとか。
「いやな話だよなー」
俺の隣に居た友人が口を開いた。
「本気で死に立ち会ったことがねーんだろうな」
「そーかもな」
死に方が面白いとか、面白くないとか。
自殺がどうだとかそういう問題じゃない。
俺は口を開く。
「まぁでも」
「ん?」
「健康な精神とやらなら、まずあぁもならねえだろうさ」
「あー」
そう思えば、死を悼むことができることは恵まれているのかもしれない。
友人は言う。
「この世に一人でも同じ人間なんて、いないしな」
◇◇◇
私は体の異常を感じていた。
限界が近づくのを感じていた。
『ねえソラ、もうこれ以上は……』
レイラの言葉に首を横に振る。
「今更でしょう、だからこそ、私は」
日が暮れていく。
人の世界と見えない世界がつながる時間がやってくる。
『彼には何も言わなくていいの?』
「関係ないでしょう、あの人は」
『ほんと、頑固なんだから』
◇◇◇
「もしもあなたがこの時、選択を変えていたなら」
白椿のもとで青年はつぶやく。
「あなたの肩を掴み、叫ぶ兄の声を聞き届けていたなら。
あなたも彼も、きっと」




