幕間1 魔女の涙1
レイン、その後です。
前後編になります。
その連絡が入ったのは、わたしとヴィーがク・クーレのレインのもとを訪れてから一月余り経った時だった。
仕事の途中でク・クーレの近くまで行く事になった時に、久しぶりにレインに会いたいと言い出したのはヴィーだった。ニコニコしているヴィーを不思議に思いつつも、わたしには異存はなかった。わたしとて、レインに会いたかったからである。
短い滞在だったが、そこでわたしとヴィーは、ドクタ・カツラギの息子と彼の友達に会った。彼らはレインと友達になってくれていた。同年代の少年少女がレインを囲んで楽しそうに話している姿は、わたしとヴィーをとても安心させたのである。
『こんにちは、ライフォー船長』
「やあ、イリーナ」
通信スクリーンに映るイリーナは笑顔でわたしに言う。いつも思うのだが、イリーナの笑顔は、ヴィーの次にだが綺麗だ。もっとも最近では、用がなくとも連絡を入れてきて、ヴィーと何か話しているようだが――女同士の話に立ち入る趣味はわたしにはない――何を話しているのかは知らなかった。
『船長宛に、伝言を預かりました』
「わたし宛?」
『ク・クーレのケンジ・カツラギと言われる方です』
「ドクタ?」
わたしに直接連絡をするのではなく、FTCへ伝言を入れてくるとは不思議だった。ドクタ・カツラギには、わたしへ確実に繋がる回線を教えていたはずなのに、なぜ連絡を入れなかったのだろう。ここしばらくはドクタと連絡を取ってはいなかったわたしは、レインの様子を見に行くのに都合がいいかと、この時は頭の隅で思っていた。
「どんな、伝言なのかね」
『出来るだけ早めにク・クーレまで着て欲しいとの事でした』
「解った。ありがとう」
ドクタ・カツラギがわたしを呼び出すのは、これで二度目になる。一度目は、二年前のシンディの結婚式の前、ク・クーレ野海底都市に移る時だった。今回もまた、わたしをメッセンジャーがわりに使うつもりなのだろうか。とにかく行ってみるしかない。理由はその時にわかるだろう。
「レオン。早めに終わらせて行きましょう」
ヴィーが航宙士席からわたしに言う。振り返るわたしは、ヴィーが笑顔を浮かべているのに首を傾げてしまった。そればかりか、なんだか楽しそうに見えるのは、わたしの思い違いなんだろうか。
「ヴィー。何か知っているのかい?」
思わず問いかけていたわたしに、ヴィーは笑顔のまま首を振っていた。
「いいえ、知らないわ。ただ、レインにとっては、いい事が起きているはずなのよ」
「何だね、それは?」
「判らないわ。でも、そろそろまた、レインに会いたいと思っていたから、ちょうど良いと思うわ」
「そんなものかね」
「そうよ」
頷くヴィーは楽しそうだった。わたしは、レインに起こった良い事と言うのを、ヴィーには見当がついていると感じている。そうでなければ、ヴィーがこんなに楽しそうなはずがない。だが、ヴィーの言うとおりでレインに会えば、その訳も判るだろう。
一八才になったヴィーは、少女と呼ぶには抵抗がある。二年前にはあった子供らしさが無くなり、落ち着いた大人の女性らしさの雰囲気を醸し出していた。四・五年とわたしは思っていたが、どうやらそれは間違いだった。ヴィーと魔女ヴィーはバランスが取れてきているように思える。ボクと言っていた少年のような言葉遣いが、私に変わり女性の言葉遣いに変化し始めてから、それは顕著に現れ始めた。もちろん、この変化をわたしが歓迎したのは言うまでもない。
後数日で今回の仕事の目的地に到着する。その後は、今のところ仕事は入れてはいなかった。ここ三ヶ月は休暇を取らずに星々を渡っていたわたし達だった。ドクタ・カツラギの呼び出しはいい口実になる。しばらくは、のんびりとするのもいいかと、わたしは思っていたのだが……。
わたし達が、ダ・ヒール星系のク・クーレに到着したのは、それでも伝言を受けてから一〇日ほどが経っていた。ク・クーレの宇宙港で、ドクタ・カツラギ夫妻は、わたし達の到着を待っていた。
「ドクタ。お久しぶりです」
ヴィーが笑顔でドクタ・カツラギ夫妻に言うが、わたし達に向けるドクタ夫妻の笑顔はどことなく変だった。不審に思ったわたしが言うと。
「ドクタ、何か問題でも?」
途端にドクタ夫妻の笑顔が引きつった。やれやれ、相変わらず正直な二人だ。ヴィーの顔からも笑顔が消え、心配そうな顔に変わる。
「レインに何かあったの?」
「あ、いや……」
言いよどむドクタ・カツラギにわたしは提案していた。
「移動しましょう。わたしを、いや、わたし達を呼び出したのは、レインに関する事なのでしょう」
「そうだ……」
ドクタ・カツラギにしては、重々しいくらいの肯定だった。
「ドクタ!」
反射的に叫んだヴィーを、わたしが止めていた。
「待ちなさい、ヴィー」
「レオン!」
「ここで何を言っても始まらない。レインに会わせるためにドクタはわたし達を呼び出したと思う。心配するのは判るが、先に向かうべきだよ」
「すまないな。ライフォード、ヴィー」
頭を下げるドクタ・カツラギ夫妻にわたしは首を振っていた。何がレインの身に起こったのかは判らないが、レインにとっては良くない事が起こったようだ。ヴィーは訳が判らないように困惑した顔になっている。
「おかしいわ。レインにとっては良い事が起きているはずなのに……どうして?」
「ヴィー。レインに会う事だよ。何があったのかは本人から聞いたほうが早い」
「ええ、そうするわ」
わたしとヴィーを連れてドクタ・カツラギ夫妻は、宇宙港に併設されている桟橋へと案内した。そこには大型の潜水艇が停泊していた。七〇メートルほどのティアドロップタイプ。船体は黒く塗装され、出港準備が進められていた。
潜水艇中央部のハッチで船長帽を被った初老の男が立っている。わたしはその男を見て軽く頭を下げた。
「レオン・ライフォードです。わたしと航宙士のヴィヴィアン・ランハル・アスディス、二名の乗艦許可をお願いします。艦長」
わたしの言葉に、船長帽を被った男は笑顔で返してきた。
「軍艦ではないので必要はありませんよ、ライフォードさん。わたしは潜水艇ノーチスの船長カンドウと言います。どうぞ、中へ」
「おりがとうございます、カンドウ船長」
航宙船よりも潜水艇、潜水艦のたぐいは至って狭い。大きさが限られる上に、エンジンやらソナーやら船室まで詰め込まなければならないから、必然的に狭くなってしまうのは仕方がない。わたし達は出港の邪魔にならないように、ドクタ・カツラギに割り当てられている船室に向かった。
「狭いが、許せ」
「判っていますよ、ドクタ」
カレン婦人とヴィーが、備え付けられているソファー兼ベットに腰を下ろす。わたしとドクタ・カツラギは立ったまま壁に寄りかかる。
「それで、ドクタ。何がありました?」
海底都市までの所要時間は二時間ほど。その間に、何が起きたのかを聞いておく方がいい。時間を無駄にする事はしたくは無かった。
「キミ達がク・クーレを離れてから三日後の事だった……」
前回は仕事の途中で二時間ほどの滞在だったが、レインと話ができた。ほとんどヴィーが話してはいたが、レインは嬉しそうにしていたはずだった。
「レインがさらわれた」
「えっ?」
「救出はしているから、安心してくれ……」
そう言うドクタ・カツラギの顔は、とても安心できるものではない。ますます訳が判らなくなり、わたしは次の言葉を待つしかなかった。
「……だが、その後で、レインはふさぎ込んでしまった。私達は一時的なものと思っていたのだが……今だにふさぎ込んだままなのだ」
「食事もあまり取らなくて、何を聞いても首を振るだけで、何も言ってくれないのよ」
なるほど。たしかにレインにとっては良くない事だ。
レインをさらった物達の事も気になるが、それは後でいい。先にレインに元気になってもらわないといけない。だから、わたし達を呼び出したのだろう。
「わたし達と言うより、ヴィーを呼び出したかった訳ですね」
「そうだ。私達ではどうする事も出来ない。しかし、ヴィーなら、レインが姉と慕っているヴィーなら、何か話してくれるのではないかと思ってな。悪いと思ったが、呼び出した」
「どうして……どうして、そうなるの? あの娘はいったい何をしたの?」
黙って聞いていたヴィーが首を振りながら言う。どうしてもレインの事が信じられないようだった。
「ヴィー」
静かにわたしはヴィーを呼んでいた。わたしに向けてくるヴィーの瞳は、理解しかねる光があった。レインに何があったのかを知っていて、それと違う事になったため混乱しているように思えてならない。
「レインに何が起こるのか判っていたのかい?」
沈黙が返ってくる。ヴィーの沈黙は肯定と同じ事だった。
「それと違う状況になったから、戸惑っている?」
ヴィーの瞳が見開かれる。どうしてと言いたそうなヴィーに、わたしは溜め息が出てしまった。 やっぱり知っていた訳だ。この二年間、わたしはヴィーに魔法に関する知識を教えてもらっていた。ヴィーの使える魔法の中で一つだけ、それに該当する魔法がある。
感覚系最上位呪『未来予見』。
それがその魔法。
「レインに何が起こるはずだったか、教えてくれないか。何も知らなければ何ともしようが無い。判れば、何とかできるかもしれないよ」
「…………」
「ヴィー?」
「わたしも、どうしてこうなったかが判らないわ」
溜め息をついたヴィーが、顔を上げてわたしを見てくる。そう言われても、わたしには何の事だか判らなかった。
「わたしが知っているのは、二年前にレインに言った事だけ」
「言った事?」
「ええ。たぶんレインは、夜色の髪と瞳を持つ者に出逢っているはず。わたしがレオンと出逢ったように、あの娘も出逢っているはずなのよ。ふさぎ込む訳が無いのに、ふさぎ込んでいるなんて。どうして、そうなったのかが判らないわ」
ヴィーがわたしと出逢ったように、レインも出逢っている?
夜色の髪と瞳を持つ者に?
それが……まさか、でもそれはヴィーだけの事ではなかったのか。レインもヴィーと同じなのか。わたしの戸惑いが判ったのか、ヴィーは大きく頷いている。
「あの娘も、わたしと同じなのよ」
思わずわたしは、片手で顔を覆って呻いてしまっていた。そんなわたしをドクタ・カツラギは、不思議そうに見ていた。
「ライフォード、いったい何の事だ?」
わたしに答えられる訳がない。レインのふさぎ込んでいる理由が判ってしまった。
それはたぶん、離別が原因だろう。ヴィーと同じなら、夜色の髪と瞳を持つ者が、レインにとっては唯一人の者だ。
どうしてそんな事になってしまったのかは、本人で無いと判らないが、レインにとってはもっとも大事なことだろう。だが、それを今の段階で、ドクタ・カツラギ夫妻に言う訳にはいかない。
「ドクタ……レインの事は、本人に聞かないと、どうする事も出来ませんよ」
「ライフォード? もしかして、原因が判ったのか」
「たぶん間違いないと思いますが、ここではどうする事も出来ません」
「ライフォード!」
「判っています、ドクタ。だけど、これはヴィーに任せた方がいい事です」
「レオン?」
ヴィーは思いつかなかったようだ。
それはそうかも知れない。こんな事はヴィーには経験が無いだろう。ヴィーは何が起こったのかは理解していないし、思いもよらない事なのだろう。だから、困惑している。
さて、ヴーに判ってもらうにはどうすればいいか……。
「ヴィー。二年前の事を憶えているかい?」
「二年前の事……」
「あの時、わたしはキミをここに残そうとした」
「今でも、そう思うの?」
あの時の事を思い出したのか、ヴィーの瞳が急速に冷たくなった。慌ててわたしは両手を挙げて首を振っていた。
「いいや、そうは思ってはいないよ。キミがいてくれてわたしが、どんなに救われているかキミは判らないだろう。今はキミといれるのがわたしは嬉しい。だけどね、ヴィー。あの時、キミがわたしを追いかけずにク・クーレに残っていたら、キミはどうなっていた?」
「えっ?」
小首を傾げてしまったヴィーだった。ドクタ・カツラギ夫妻は、訳が判らないような顔をしてわたしとヴィーを交互に見ている。遠回しの言い方で悪いとは思うが、はっきりと言うことはわたしには出来なかった。
「どうって……?」
ヴィーは考え込んでいた。そして、結論に行き着いたようだ。顔を上げてわたしを見てくるヴィーの瞳が涙に濡れている。わたしは頷く事で肯定をしていた。
「レオン……どうして、あの娘が……」
「どうして、そうなってしまったのかは、わたしにも判らない。レインに話を聞いてみないとね。それは、キミの役目だよ」
「ええ、そうね……」
「ライフォード、ヴィー。原因が判ったのなら教えてくれ」
耐えかねたようなドクタ・カツラギの声に、わたしとヴィーはそろって首を振っていた。
「どうしてだ!」
「私達が心配していないとでも思いますか」
ドクタ・カツラギ夫妻には申し訳ないが、わたしは話す気にはなれなかった。それはヴィーも同じだろう。
「今は、まだ話せません。レインと会って話してみないことには、言うべき事ではないと思います。ドクタ達のレインを心配する気持ちは解りますが、今はだめです」
「ライフォード!」
「レインの事はヴィーに任せましょう。それよりも、レインをさらった者は何者ですか?」
途端にドクタ・カツラギは言葉に詰まってしまう。
嫌な予感がわたしにはある。それが何であるかは解っていた。あの時、二年前にレイン達をドクタ達に預ける時に海賊に襲われたふりをした。計画を破棄したとしても研究者が死んだわけではない。
そして、レインに関しての資料は残っているはずだ。何かの拍子にレインの事が彼らに知られたら、奪い返しに来ても何ら不思議ではない。彼らは、そう簡単に諦める事は絶対にしない。
わたしもエルリアで、再び拘束さそうになったが、ヴィーのおかげでまぬがれた。
まったく、アーシェン陛下には頭が下がる思いだ。ヴィーだけではなく、わたしまで護ってくれたのだから。
『わたしはヴィヴィアン・ランハル・アスディス。アスディース星系王国の王女。この人、レオン・ライフォードはわたしの伴侶となる人です。それでも、連れて行きますか』
実に堂に入ったヴィーの恫喝だった。星の名を持つ者の伴侶。手出しするなら、相応の覚悟があるのか。言外に含んだ言葉は、ただの役人や現場の軍人が、その場で決められるような事ではなかった。
それで彼らが諦めた訳ではないと思うが、それ以上の手出しはしてこなかった。それと同じ事がレインの身に起こっても不思議ではない。いや、起こらない方がおかしいと言うべきだろう。
「クロワード財閥ですか? ドクタ」
「そう……だ」
苦い顔をするドクタ・カツラギには申し訳ないが、わたしとしては、はっきりとさせておきたい。一度あったから、二度はないとは言えないはずだから。
「どこで判ったのです?」
「判らない。偶然かも知れない。そうでは無いかも知れない」
「財閥の関係者が海底都市に訪れましたか?」
「いや」とドクタ・カツラギは首を振っていた「それは無いと思う。海底都市の部外者が、立ち入る事が出来るのは限られている。レインがいるのは、部外者が立ち入る事が出来ない場所の一つだ」
そうなると、内部の者としか考えられなくなるが、それはすぐにでも調査が入っているはずだ。 まだ結果が出ていないのか、それとも本当にそんな者がいなかったのか。
「内部の者の手引きがないとレインをさらうのは無理でしょう。内部には?」
ドクタ・カツラギは、わたしの言葉に溜め息をついていた。
「いない。内部調査を始めて二週間で、該当する者が誰もいない事が判った。どこからレインの事が洩れたのかが判らないから、都市代表はその事で頭を悩ませている。洩れるはずのない情報が洩れた。これは海底都市全体に関る危機だから、二度とないように対策を検討しているところだが、人の出入りがある以上は難しいらしい」
内部の者ではないとすると、嫌な事だが一つだけ考えられることがある。そこまで調査はしていないと思うし、まずそんな事は考えないだろう。しかし、可能性が無いとは言えない。情報だけ引き出せば後は必要が無くなる。それを実行すれば、足取りはつかめなくなる方法が一つだけあった。
「ドクタ。一つだけ、方法がありますよ」
「どんな方法だ?」
「レインがさらわれる前後一ヶ月以内に、行方不明や死亡した者はいませんか?」
「それが?」
「そこからレインの事が判ったのかも知れません」
我ながら恐ろしい事を言っているなと思った。ドクタ・カツラギのような学者には判らないかも知れないが、わたしやヴィーには思い当たる事がある。ヴィーも伊達に六年も彷徨っていた訳ではない。そして軍人、特に情報部に所属していた者は理解できるだろう。
「どういう事だね?」
やっぱり判ってはいなかった。つまり、その可能性は考えてはいなかったと言うことだ。その事に関して調べてもらわないといけない。
「ドクタ。世の中には、情報さえ得られれば、後は必要が無い。そう考える者がいるんです。そう言った者達が情報を提供した、あるいは強制した者を生かしておくのは、自分達の足取りを残すようなものです。そんな危険を犯すような事は絶対にしないはずなんです。だから、死亡者や行方不明者を調べ直してください。おかしな所が出てくるはずですよ」
「そこまで…するのか?」
理解しかねるようなドクタ・カツラギは、眼を見張って言っていた。ドクタのような人には理解しがたいだろう。しかし、相手はそんな事を気にするような者達ではないはずだ。
「二年前の事を忘れましたか? クロワード財閥の担当者は、ヴァルキリアの乗っ取りが失敗したら、連合軍を利用してヴァルキリアを沈めようとしましたよ。そんな相手です。目的のためには手段を選ばないでしょう」
「判った、調べてみよう。何も出なければ問題は無いが……」
ドクタ・カツラギはそう言うが、わたしは何かが必ず出てくると思っていた。出なければレインの事が判るはずがないだろう。たぶん初めは偶然だったと思う。それが偶然でなくなった時、計画が成されて実行された。
そして失敗した。
どうして失敗したのかは知らないが、そのあたりは気にはしてはいなかった。必要であればドクタは、わたし達に話してくれているだろう。
「ドクタ。実力行使が失敗したら、次はどんな手でくると思いますか?」
「次? 次があるのか?」
不思議そうにドクタ・カツラギは首を傾げていた。わたしは溜め息が出るのを止められなかった。いや、まあドクタが理解していない事は判ってはいたが、ここまでとは思ってもいなかった。
「ドクタ……信じられないのは判りますが、簡単に諦めるような相手ではないと思いますよ」
「そうかも知れないな……」
ドクタ・カツラギの呟きは、わたしから気力を奪うのには十分だった。普通に生活していれば、こんな事には遭遇はしない。する方がおかしい。だからと言って、経験した方が良いと言う事でもない。
わたしには相手が取る次の行動が予測できる。たぶん、交渉を持ち掛けてくるだろう。それは、海底都市計画その物を危機に陥らせるかもしれない。それだけの圧力を持っている事も事実だ。へたをすれば、連合まで出てくる可能性がある。それを防ぐにはどうすればいいのか。方法が無い訳ではない。
それにはレインを矢面に出さなくてはならない。元々それを避けたかったから、ドクタ達に預けたのだが、今後の事を考えるとそうも言ってはいられなくなる。その事は、レインの事が終わってからでもいいだろう。
後編をお楽しみに




