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修行シーンないのに最強とか、羨まけしからん

「それじゃ、修行を始めるぞ~」

「「「は~い」」」

俺の言葉に元気よく返事をする三人

「なんで、カレンがいるんだ?」

さっきまで、部屋で俺が作ったお菓子食ってたじゃないか。

「え~、いいじゃん。僕も暇なんだよ~」

カレンは頬を膨らませて言った。

不覚にも、萌えてしまった俺は、

「まあ、いいか」

カレンが修行に参加することを許可してしまった。

「やったね、カレンお姉ちゃん。」

カレンはノアと手を取り合って、喜んでいた。

魔王が満足できるような内容じゃないんだが、まあ何とかなるだろ。

「それじゃ、まずはノアの魔力を解放するぞ。」

俺の言葉を聞いた三人は三者三様な反応をした。

「ぼ、僕に魔力があるの!?」

ノアは俺の言葉に驚きの声をあげ、

「シオンはノアの魔力を解放出来るの!?」

カレンは俺の技量を信じられないようだ。

「待ってくれ!もしかして、ノア君は魔盲なのか?」

レイトは一人会話に追いつけてないようで、俺に説明を求めてきた。

そんな一度に言われても答えられないぞ。

「ノアに魔力はあるし、俺なら解放も出来る。」

俺はまずノアとカレンの疑問に答え、

「そして、ノアが魔盲だったら、なにか問題があるのか、レイト?」

レイトににっこりと微笑んだ。

もし、問題があるのなら、わかるよな?

「別に問題はないけど・・・出来れば教えてほしかったな。

あれ?なんで、レイト君はそんなに汗をかいているのかな?

まあ、冗談は大気圏まで巴投げしといて、俺はレイトに向けていた殺気を消す。

「基本的に、魔盲になる原因は生まれる際に持つ魔力量が多いから、母体に悪影響を出ないために自身で封印をする症状のことをいう。」

唐突に始まった俺の説明を、三人は静かに聞く。

さすがに、優秀な人材だけあって、混乱の回復も早いな。

「封印を解除するためには、封印に使用された魔力の質、および魔力量で上回る必要がある。」

もちろん、魔力を正確無比にコントロールする必要もあるが、な。

「しかし、魔力のコントロールがうまく出来ない胎児の段階では、全魔力が使用される場合が多い。」

そのため、魔力が一切使用出来ず、魔盲との判断が下されるわけだ。

「そこまでは、ボクも分かっているよ。僕も魔盲の解除した事あるし」

俺のバカでも分かる魔盲講座を終えて、最初にカレンが口を開いた。

「おそらく、ノアの魔力はかなり多いよ?それでも、シオンは出来るの?」

カレンは、心配そうな顔をしていた。

魔盲の解除をした事があるなら、知っているのだろう。

魔盲の解除に失敗すれば、二人とも死んでしまう事を。

「心配するな。俺はチートだぜ?」

俺は左手をカレンの頭に置く。

「それに、家族を殺す気はないよ。」

もちろん、死ぬ気もない。

俺の考えが読めたからか、カレンは一度俺の顔を見た後、笑ってくれた。

その笑顔さえあれば、俺は世界でも滅ぼしてやるよ。

「それじゃ、魔力の解放を始めようか。」

俺は左手をカレンの頭に置いたまま、右手に魔力を集める。

ノアはこの世界の主人公だ。魔力の量も質も他の魔盲とは比べ物にならない。

「おっと、忘れていた。カレン達は結界を張る事をおすすめするぜ。」

テンプレなら、魔力の暴走が起こるからな。

俺の右腕は銀に染まる。銀を使うのは、おっさんとの戦闘以来だな。

「どうやって、解放するつもりだ?」

ノアをかばうようにレイトが間に立った。

「ノアの中の封印を、俺の銀で破壊する。弟を傷つけるつもりはないから、そこをどけ」

まあ、気持ちは分かるがな。俺の右腕からは紫電が迸っているからだ。

俺は苦笑していた。その様子に俺を疑う事もバカらしくなったのだろう。レイトはしぶしぶその場をどいた。

「覚悟はいいか?ノア」

「うん」

ノアは静かにうなづいた。レイトもこれくらい素直だったらいいんだが、

俺はくだらない事を考えながら、ノアの胸に右腕を刺した。

「!?」

そして、俺の行動に血相を変えて、レイトがこちらに飛び出そうとしたのを

「動くな。シオンが集中出来ない。」

カレンが止めてくれた。レイトも俺の額に浮かぶ大量の汗を見て、動きを止めた。

パキンッ

何かが壊れるような音と共に、暴風が吹き荒れた。

否、正確にいうなら、ノアを中心とした魔力の嵐だ。

「グ、グウゥゥゥ!」

ノアは魔力の中心で、苦しそうなうめき声を上げる。

「結界が保てない!」

カレンとレイトの切羽詰まった声がする。

見ると強力な魔力の奔流が、結界にヒビを入れていた。

「気をしっかり持て!」

俺の言葉がノアに届いたのか、ノアは少し反応を見せた。

「お前なら魔力の制御ぐらい出来るはずだ!もっと!熱く!なれよぉ!!」

俺は暑さで有名な元テニスプレイヤーのごとく、ノアに檄を送る。

そのせいかもあってか、魔力の嵐も治まってきた。

「ハァ、ハァ」

そして、魔力の渦は静まった。

どうでもいいけど、ノアが息切れを起こしているのが、かなりエロかった。

だが、男だ。

「すごい密度の魔力だね。僕もここまでの密度の魔力は見た事ないよ。」

カレンは、冷や汗を袖で拭う。

さすが、主人公。魔王でも見た事ない密度とは、俺も予想以上だぜ。

「まあ、魔力の使い方は後で教えるとして」

俺は街中で適当に買っていた指輪を渡す。

「その指輪は魔力の流れを妨害して、一時的に魔法が使えなくするものだ。」

もちろん、市販の指輪にそんな機能はないから、俺が魔方陣を刻んだものだがな。

俺の説明に首を傾げる三人。

悔しいが美男美女なだけあって、それだけでも絵になってしまう。

フツメンの俺がやっても気持ち悪いだけなのに。

俺は少し、自己嫌悪をしながら

「だから、その指輪を着けて、鬼ごっこをしてもらう。ルールは分かるよな?」

説明を続けた。内心を少しも表情に出さない俺はかっこいいと自分で思う。

・・・すまん。ふざけすぎた。

異世界でも、鬼ごっこはあったらしく、質問はなかった。

「でも、場所は?まさか、ここでするわけないよね?」

レイトの質問はもっともだ。この部屋は空間魔法で広げたから確かに広いが、何もい。


「そんなわけないだろ?場所はここであって、ここでない。」

俺の言葉が終わると、部屋に木が生え、山が生まれ、そして部屋の内装は生まれ変わった。

ここは、俺の空間だ。この中だったら地形を変えるぐらい造作もない。

「10分後にスタートする。最初の鬼は俺がするから、お前らは早く逃げろ。」

驚いた顔を浮かべていた三人は、俺の言葉を聞いてバラバラに逃げ出した。

頭上には数字が浮かび、カウントダウンが開始される。

「この数字が、開始および終了の合図だからな。」

しかし、俺の声は部屋中に響き渡る。

まあこれも空間魔法の応用だけどな。

俺は放送を終えると、指輪を着ける。

俺は、魔力妨害と重力増加の魔方陣が刻まれた、俺特性の指輪だ。

それじゃ、楽しい楽しい鬼ごっこを開始しよう。



そして、三つの生きる屍が出来た。

・・・ノアは、幽閉されていたから身体能力が低いのは仕方ないとして

「お前らまで倒れるとは情けないな」

仮にも、勇者と魔王だろ?たかが準備運動でこのざまとは、呆れてものも言えない。

「なんで、僕たちの場所が分かったの?」

俺がこれからの修行に不安を抱いていると、

体力が回復してきたのか、カレンがそう言った。

見ると、他二人も声に出すほどの余裕こそなさそうだが、疑問に感じていたよう。

勉強熱心なこって、少し安心したよ。

「足跡とかで分かるだろ?」

他にも、足音や木が折れている位置、後はこっちの世界でしか通じないが魔力の残滓からも調べられたな。

「ほら、体力も戻ってきただろ?次に入るぞ」

俺は、こいつらにとっての絶望の言葉を三人に告げた。

「次からはひたすら俺と戦うだけだ。あ、そうだ。レイトお前の使い魔も呼んでくれ」

そしたら、さらに効率が上がるし

「ハァ、分かった、ハァ、来て、ハァ、コウ。ハァ、」

レイトは息も絶え絶えに使い魔を召喚した。

召喚の時は魔方陣が出るのか。カレンは基本召喚されぱなっしだから、知らんかった。

「お久しぶりです、レイト様~!ってどうしたんですか!?」

魔方陣からは、金髪のきょぬーがうるさく出てきた。

コイツがレイトの使い魔のコウだろう

コウは、状況を確認するためか、周りを見渡し、カレンを発見した。

「な!?お前はモゴモゴ」

あっぶねー、何この子?俺がカレンが魔王だってことを隠している事を知らんの?

「黙れ。殺すぞ。」

俺は、コウの口を押さえつつ、久しぶりに本気で殺気をコウだけに放つ。

「魔王の事はレイトに言うな。説明するのが面倒だ」

俺はコウの耳元で囁いた。

コウは、何かに恐怖したように顔を青くしながら、何度も小さく頷いていた。

俺はコウから離れ、

「それじゃ、お前は戦いを見て、ダメだしをしてほしいんだ。」

そしてにっこりとほほ笑んだ。

「・・・わ、分かりました。」

コウは小さくそう言って黙り込んでしまった。

何かを怖がっていると、可愛い顔がもったいないよ?

「大丈夫、コウ?体調が悪そうだけど。」

「そんな事はありません!」

レイトの心配も焦っているかのように、返答した。

俺はさすがに可哀相に思えてきたので、殺気を収めた。

「まずは、レイトからな」

そして、俺自身の手によって、地獄への入り口を開けたのであった。



「お前らは帰っていいよ」

俺は、ノアとレイトに今日の修行の終了を告げる。

「もちろん、お前はまだ戦えるよな?」

俺の言葉に剣を振り下ろす事で、返答するカレン。

まだ、余裕そうだな。

「お前ら、最後に限界まで、魔法を撃ち続けろ。別にしなくても、お前らなら問題ないが、やったほうがいいと思うぞ。」

そしたら、魔力総量も増えるだろうからだ。

「よそ見するとは、余裕だね!」

剣が振り下ろされたが、俺はそれを見ずに避ける。

「お前こそ、ふざけてんの?その程度じゃ、俺に当てる事は一生出来ないぜ?」

その後も、カレンの斬撃を避け続ける。

「言って、くれる、ね!」

剣の振りがブレてきたな。剣速も鈍くなってるし、潮時かな?

「ガハッ」

俺はカレンの腹を蹴り飛ばした。

カレンはそのまま、3メートルほど飛んで行った。

「もうお前も限界だな。休んでてもいいよ」

「まだ、まだぁ!」

カレンはそう吠えて、向かってくるが、

もう、この程度だと弱すぎて話にならないんだよね。

「お休み」

そして、俺はカレンを斬った。



「・・・・あ・・・れ・・?」

まどろみの中から、カレンの意識は戻ってきた。

先ほどから、轟音が耳を震わせるからだ。

「あ、起きた?」

シオンの声がした。

カレンは何が起こっているか、状況を確認するためうっすらと目を開ける。

「・・・え?」

そして、絶句した。

目の前に広がる景色が信じられなかったからだ。

「ハァッ!!」

その景色の中、シオンは持っていた刀を水平に振りぬく。

辺り一面にいた黒い人型のナニカが吹き飛んだ。

「・・・・なに・・・・・これ?」

カレンは目の前の景色がいまだ信じられなかった。

なぜなら、どう見ても知っている姿がところどころにいたからだ。

もちろん、その中には、カレン自身もいた。

「・・・ここは、俺の世界だ。」

近くに来たシオンが、そう言った。

「故に、俺の終わりもここでなら再現出来る。」

カレンには、シオンがまったくの別人に見える。

「だから、俺の終わりを覆せるような強さも身につける事が出来る」

「そして、お前を殺して俺はさらなる高みに行く」

シオンはカレンの近くで刀を上段に構える。

まるで、カレンを殺すためだと言っているようだ。

「じゃあな」

そして、刀は振り下ろされた。



「カレン!!!」

俺はさっきから、大量の汗をかき、呼吸も不規則になっているカレンに声をかけていた。

悪夢でも見ているのか?それでもこれは異常なはずだ。

「う・・・うぅん。」

そして、俺の呼びかけにやっと答えてくれたカレンは目を覚ました。

「・・・・ヒッ!?」

そして、俺の顔を見て後ずさり、背中を壁に自分から叩きつけた。

「どうした?大丈夫か?」

俺はカレンに恐る恐る声をかける。

また、驚かせる事がないようにするためだ。

「・・・シオン?もう、なにもしない?」

俺はカレンの言っている事がいまいち理解出来なかったが、少なくとも悪夢の俺はカレンに何かをしたという事は分かった。

「ああ、大丈夫だ。俺は、カレンに何もしないよ」

そして、俺はカレンの頭を優しくなでた。

今度はカレンに怯えられる事はなかった。

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