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二人の転校生

結局、カレンの説教は朝まで続いた。

そして、今朝解放された俺は、ノアの転校手続きをしに校長室まで来ていた。

「どうした?こんな時間にここに来るとは、何かあったのか?」

イアン先生は突然来た俺に少し驚いたような顔をしている。

俺はノアを転移で呼び出した。

「コイツの転校手続きをしてほしくてさ」

呼ばれたノアはソファーの上ですやすやと寝ていた。

「この子は?」

ノアだ。いろいろあって俺と義理の兄弟になったんだ。

俺はあえて説明を口に出さなかった。

「使うとモノク先生に怒られるからあまり使いたくないんだ。だから次からは声に出してくれないか?」

イアン先生は苦笑いを浮かべている。

まあ、あまりギルマスに嫌われたくはないだろうから仕方ないか~。

俺の思考を読んでいたイアン先生は顔を真っ赤にして

「な、なななな何を言っているのかな?そ、そんな事気にするわけないじゃないか。」

気にしてないなら、ギルマスに言っても問題ないよな?

「な!?それだけは止めてくれ!!」

イアン先生は俺の脅しをまともに捉えたようで、涙目になっていた。

「冗談ですよ、イアン先生」

俺は笑顔を浮かべていた。この前の仕返しが出来たからだ。

それにノアも目を覚ましたからな。

ノアはあくびをした後、部屋を見渡し、

「お兄ちゃん、あの人はだ~れ~?」

イアン先生を指さしながら言った。

ノアはまだ寝ぼけているのか目を擦っている。

「この人は、イアン先生だ。この学校の偉い人で、今ノアを学校に入れるかの相談をしていたんだぞ。だから、ノアからもお願いしなさい。」

俺の言葉で完全に目が覚めたらしい。ノアは目を輝かせながら、

「ノアを学校に通わせてください。おねがいします。」

そう言って、頭を下げた。

イアン先生は鼻を押さえながら、

「分かりました。ノアちゃんの入学を認めます。ただノアちゃんは何歳なの?」

・・・ああ、やっぱりいろいろ勘違いしているな。

「ノアは俺と同じ年だ。ついでに男だぞ?」

数秒後、イアン先生の大声が学校中に響いたのは言うまでもない。



「あ~と、今日は転校生が来ているぞ。」

今日もギルマスのだるそうな声で、学校が始まった。

「先生、転校生は男ですか?女ですか!?」

デジャブを感じるがアイツはクラスの中でもそういう立ち位置らしい。

「そうだな、・・・自分で判断しろ。」

ギルマスは微妙な顔をしていた。

当然だよな。ノアは見た目は完全に女の子だ。

「転校生って、ノアの事よね?」

後ろに座っていたカレンが俺に聞いてきた。

何を言っているんだ?

「当たり前だろ。なんのために俺がわざわざ朝から校長室に行ったと思ってるんだ?」

いや、それは自業自得でしょ。とカレンは言って、

「だったら、なんで扉の奥から二人の気配を感じるの?」

と続けてきた。あ、ほんとだ。二人分の気配がする。

「それじゃ、お前ら入って来い」

ギルマスの言葉を合図にまずはノアが入ってきた。

「「「「「おっしゃーーーーーーーーー!!!!!」」」」」

同時に叫び声をあげる男ども。耳栓をつけといてよかった。

ノアに続いて、イケメンが教室に入ってきた。

「「「「「キャーーーーーーーー!!!!!」」」」」

今度は女の黄色い声援が響く。耳栓を外してしまった俺は今度はダメージを受け。



や、やばい。耳がキーンってする。

俺が密かに治癒魔法を使っていると、

「それじゃ、お前ら自己紹介しろ。」

ギルマスがいまだにクラスのほとんど全員が叫んでいるなか言った。

絶対耳栓しているだろ、お前。

イラッとした俺は、ギルマスのしていた耳栓を転移してあげた。

「僕の名前はノアです。」

ノアがしゃべりだすと同時に静まりかえる教室。

チッ、これじゃ耳栓を外させた意味がなくなるじゃないか。

見ると、ギルマスはこっちを見ながらドヤ顔をしていた。

「えっとあの、性別は男です。皆さん、よろしくお願います。」

ぺこりと頭を下げるノア。

「「「「「なん・・・・だと・・・!?」」」」」

ほとんどの男たちは机に沈んだ。

俺も味わったから気持ちは分かるが、こんなクラスで大丈夫かよ。

ついでに言うと数人は、「男の娘とか、守備範囲過ぎて困る」と笑っていた。

一応言っておくが、ノアを嫁にするなら俺を倒してからだからな。

と俺がずれた事を考えていると、

「僕の名前は、レイト。サンサイト王国から来た勇者ですが、気にせずに仲良くしてください。」

レイトは微笑を浮かべつつお辞儀をした。イケメンってどうして、何をやっても絵になるんだろうな?

黄色い声援が飛ぶ。

俺とギルマスの鼓膜にダメージが入ったのは今更言う必要はないだろ?

「そ、それじゃあ闘技場に集合しろよ。」

ギルマスは耳を押さえながら、教室を出ていった。

同時にノアとレイトに集まるクラスメイト達。

俺の時はこんなに集まらなかったのにな。

と、少し鬱になっていると、

「私達も、闘技場に行きましょう?」

アイリスからお誘いが来た。

「アイリス達は転校生に興味ないのか?」

俺は少なくともノアの事は知っていたが、アイリス達には教えてないはずだぞ。

「見てれば分かる。少なくともノアという子は、シオンの知り合いだろ?」

よくわかったな。どうやって知ったんだ?

と、俺が何気なくノアのほうを眺めると、

ノアと目があった。なるほどな。

「あの子、ずっとお前を見ているぞ。助けに行ったほうがいいんじゃないか?」

ノエルの言葉に頷くアイリス。

俺も移動のために、席を立つ。

「ほらお前ら、ノアは俺の弟だ。離れろ。」

俺の言葉でノアの近くのクラスメイト達は今度は俺のもとに来た。

「弟さんを僕にください!!!」

さっきの数人が何を血迷ったか、俺に頭を下げてきた。

「いいぞ。最低でも、俺に戦闘で勝ったらだけどな。」

ついでに、俺はクラスでもトップクラスの戦闘力の評価を受けている。

俺の言葉に固まるアホども。

「ほら、ノアも行くぞ。」

「うん!お兄ちゃん待ってよ。」

ノアが俺に追いかけてきた。

後ろからブシャアアァァァと音が聞こえるが気のせいだと信じたい。

あ、忘れてた。

「そうだ、勇者に聞きたい事があるんだが」

俺は振り向いた。真っ赤なペイントがクラスに施されているが見間違いのはずだ。

「人殺しに対してどう思う?」

俺の言葉に怪訝な顔を浮かべるレイト。

「急に何を言うんだ?」

「いいから、答えろ。」

俺は少しの殺気をぶつけた。少なくともリョウなら気付けないくらいでだ。

「・・・よくない事だとは思う。でも、場合によるから、絶対悪とは言えない。」

リョウがごちゃごちゃ言っているが無視した。

「そうか、変なことを聞いて悪かった。じゃあな。」

そして、俺は今度こそ闘技場に向けて歩き出した。

「彼は、何者?」

「シオンは僕の親友さ!」

リョウが声を張り上げる。シオンがいたら、まず否定の言葉を言うだろう。

(まさか、彼が奴隷市を襲った事件の関係者?)

俺は、俺が去った後の教室でそんな事を考えられているとは思ってもいなかった。



「あ~、今日は面倒だから模擬戦しとけ。」

ギルマスの言葉と同時にクラス委員の指示で、戦闘の組み合わせが決められた。

もうギルマスの対応にもなれたものだ。

「お兄ちゃんは混じらないの?」

俺が壁際でクラスメイトの戦闘を見ていると、横にノアが来ていた。

「俺が戦ってもメリットがないからな。お前はちゃんと参加しろよ。」

まあ、勇者いじめで俺と戦おうって奴もいなくなったしな。

「うん、分かった!」

そう言って、ノアは試合場の近くに観戦しにいった。



「最後の試合は勇者通しでしてほしいんだが、大丈夫かな?」

クラス委員は試合場の真ん中で仕切っていた。

彼がいなかったら、ギルマスの給料はマイナスになっていたところだろう。

「僕は大丈夫だよ」

レイトの同意に対し、

「僕が勝つよ!」

リョウは勝利宣言をした。

まあ、どちらが強いかは明白だよな。

「それじゃ、試合開始!」

クラス委員は手を振り下ろす。開戦の合図だ。

同時にリョウの首元には、剣が突き付けられていた。

「君程度の、才能にふんぞり返った奴に負けることはないよ。」

レイトは冷たい目をしていた。

意外だった。まさか、リョウに対してそんな対応が出来る奴が俺以外にいるとは思っていなかったからだ。

「それに、僕は君のような雑魚じゃなく、」

そこで、言葉を切り、あろうことか俺に剣を向けた。

「君みたいな人と戦ってみたいかな?シオン君」

・・・ほぉ、面白い事を言うな。

「俺の戦いをちゃんと見てろよ、ノア」

そして、俺は試合場に上がった。



「君みたいな人と戦ってみたいかな?シオン君」

僕がそういうと、彼は獰猛な笑みを浮かべた。

ついでに彼の名前は、クラスメイトに教えてもらっていたから知っていただけだ。

彼は、ノア君に何かを言った後、試合場まで上がってきてくれた。

「試合に応じてくれてありがとう。」

やっぱり、頼みを聞いてもらったんだから、お礼は言わないとダメだよね。

「別に、礼を言われるほどではないさ。それより、早く始めようぜ?」

彼は準備が完了しているようだ。彼の体を魔力が循環しているのを感じる。

「すごいね。身体強化をそのレベルで行えるなんて、さっきの勘違い勇者より強そうだ」

実際に強いだろう。身のこなしからして、強者のそれだしね。

「ご託はいい。やるのか?やらないのか?」

瞬間、シオン君からかなりの濃度の殺気が飛んできた。

殺気で体が震えるのはいつ以来だろう。

「ごめんね。それじゃ、始めようか。」

「今回は俺が審判を務めてやるから、思う存分に戦え」

いつの間にか目を覚ましていたモノク先生が、さっきまでのクラス委員の位置にいた。

シオン君も少なからず驚いた顔を浮かべたが、

「思う存分、ね。言ったからには責任は持てよ、ギルマス」

彼は楽しそうだ。僕も嬉しさが、顔に現れる。

「不安しか感じんが、考えんのもメンドクセェ。それじゃ、開始!」

モノク先生は頭をかきつつ、開戦の合図を出した。

同時に先ほどより早く、彼の首を斬ろうと動くが、

甲高い音と共に、僕の剣は止まった。

「ヘェ、早いな」

不敵な笑みを浮かべたシオン君の持つ刀が僕の行く手を遮っていたからだ。

予想通り、シオン君はさっきの勘違い野郎より段違いの強さらしい。

楽しくなってきた。

僕は速さのギアを一段階あげる。

そして、シオン君に斬りかかった。

「早い、早いぞ、勇者!動きに追い付けないじゃないか!」

嘘つかないでよ。僕の斬撃をすべて最小の動きで、紙一重で避けてる癖に。

シオン君は獰猛な笑みをその顔に刻んでいた。

そう言う僕の顔にも似たような笑みが浮かんでいる事は自覚していた。

そのまま、剣が結局カスらせることも出来ずに、

「降参だ」

シオン君は両手をあげて、そんな事を言った。

「な、なんで!?」

僕も動きを止め、シオン君に詰め寄った。

彼が、楽しい戦いに水を差すとは思ってなかったからだ。

「すまんな、もう魔力が残ってないんだわ。だから、今日はここまでだ」

{それに、生徒が見ている前では、お互いに全力が出せないだろ?}

彼からの念話が同時に飛んできた。

確かに、僕は大勢の前では、全力で戦うのは止められている。

それに、勇者でもない一般人が勇者に勝つと、それだけで負けた勇者は役立たずの烙印が押されてしまう。

しかし、その言い方だと、まるで僕には余裕で勝てると言っているようではないか。



「すまんな、もう魔力が残ってないんだわ。だから、今日はここまでだ。」

俺はそう言って、降参した。

案の定、レイトは不服そうな顔をしていた為、念話を送らせてもらった。

もちろん、魔力無限の俺には魔力切れという現象は起こらない。

「ああ、疲れた。じゃあな。」

そして、重力増加の魔法を消す。

ついでにレイトが身体強化だと思っていたのは、この重力増加の魔法だったりする。

俺はそのまま、闘技場を出た。



放課後、

「僕を弟子にしてください!」

あの勇者様が俺の部屋の前で頭を下げていた。

「は?やだよ、メンドクセェ。」

俺はこの後、用事があるんだよ。

それに師匠とか、それこそ支障をきたすっつの

「いんじゃない?僕もこの人の成長を見てみたいし。」

しかし、俺の考えは部屋の中にいたカレンに却下された。

ハァッ、メンドクセェな。

「しょうがないな。俺は厳しいぜ、修行に付いてこれるかな?レイト」

それに、結局はノアを鍛えてやらないと、いけないし。

まあ一人も二人も似たようなものかな。

「望むところだ。」

レイトはお辞儀をした体勢のまま、顔だけをあげるという変な姿勢のまま、ドヤ顔した。

とりあえず、絵になっていたので顔面を殴っておいた。

・・・・・・ああ、世界中のイケメンが滅びればいいのに。

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