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学校と魔武器と、ときどき使い魔。後篇

召喚はアイリス、ノエル、俺の順番で行った。

アイリスはオオワシを、ノエルは小さいドラゴンを召喚した。

そして、今から俺の召喚だ。

「いでよ、我が隣を歩める強者よ。来たれ、我を倒すものよ」

ちなみに詠唱内容は個人の自由だ。ネタに走るか迷った俺は、あえて敵を呼び出してみる。

俺はそのまま、光に飲み込まれていった。



光が収まり目を開けると、目の前には腰ほどまである真っ赤な髪を持つ、赤目の少女が、幼さの残る顔を真っ赤に染めて立っていた。

発育途中の胸を持っていた布(おそらく服だろう)で隠し、腰には真っ白の布が一枚あるだけだ。

簡単に言おう。少女は着替え中だった。

「な、なななななななーーーーーー!!??」

少女は壊れたおもちゃのような叫び声をあげた。

「どうしましたか!?」

すると、さらに俺の後ろにあった扉からごついおっさんが四人入ってきた。

「きぃゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

少女はついに叫び声をあげたまま暴れまわった。



数分後、やっと落ち着いた腕を組んだ少女の前で土下座をしている俺たちの図があった。

「それで、君は何者なのかな?」

しばらく沈黙が流れている中、少女は口を開いた。

かわいらしい声だった。

「使い魔召喚したら、逆召喚で呼ばれました。」

俺は土下座したまま、少女の疑問に答えた。

「え? 召喚ってボクのことを? プッ」

アハハハハッと笑いだした少女。

見ると後ろのごついおっさんたちは驚いた表情を浮かべた奴もいる。

「お、おなか痛い。すごいね、君。魔王を使い魔召喚で呼ぶなんて。」

少女は楽しそうな顔でそう言った。ちょっと待て。今なんて言った?

「え? 魔王?」

「そう、ボク、魔王」

少女は言葉を単語ごとに区切りながら言った。

え、えええぇぇぇぇぇぇええぇえええ!?

「ほんとか!? なら俺は魔王の裸を見たのか!?」

よっしゃあぁぁぁあ! と全身で喜びを表していると、

「君、やっぱり処刑ね?」

少女は、目だけは笑っていない満面の笑みでいつの間にか持っていた剣を振り下ろした。

そして、俺の視界はブラックアウトした。



「コイツは何者なんでしょうね。」

僕の四天王の一人である筋肉ダルマことドギーがそう言った。

確かに。ボクは真っ二つに斬ったはずだけど、彼の体がくっつき始めたからだ。

「さあね。でも敵意はなかったから害はないと思うよ。」

・・・ボクの裸を見たことは事故だったみたいだしね。

「しかも、彼は僕を召喚したみたいだしね。」

もう一度彼をみると、もう彼に斬られた跡はなかった。

「別にいいのではないですか? 彼の使い魔になってしまっても。」

四天王の一人で僕の世話係でもあるジンはそう言った。

「私は反対です。こんな得たいのしれない化け物のもとにカレン様を預けるの」

ドギーは反対のようだ。まあ彼は少し堅いところがあるからね。

「しかし彼ほどの人間なら、カレン様しか相手に出来ませんよ? それにカレン様にも人間界の見学に行ってもらう必要がありますしね。」

ジンがそう言って、ドギーを説得した。

「僕もこの人について行ってみたいんだ。ダメかな?」

僕の後押しでドギーは折れた。



「僕もこの人について行ってみたいんだ。ダメかな?」

俺が目を覚ますと、少女のそんな声が聞こえた。

「契約してくれるのか!?」

俺は飛び起きた。・・・なんだよ、その化け物をみるような眼は。

「うん、僕も君とだったら退屈しそうにないからね。」

「サンキューな。それじゃ契約しようぜ。対等の契約ってどうすんだ?」

俺がそう言うと、今度は少女自身も驚いた表情を浮かべた。

「え? 使い魔契約なのに、対等でいいの?」

少女は驚いた表情のまま、そう言った。

何言ってんだ?

「当然だろ。仲間になるんだから、対等な関係じゃないと」

俺がそう言うと、少女はまた笑いだした。

そんな変なこと言っただろうか?

「君、面白いね。もう笑いすぎて、おなか痛いじゃん。でもごめんね。こちら側にも対等な関係の契約はないかな。」

でも、と少女は続けて

「君とだったら、普通の使い魔契約で大丈夫だよ。」

カレン様!? と後ろの筋肉ダルマが声をあげるが無視だ。

「そっか、ありがとな。それじゃ、契約とするか」

そう言って俺は右手を差し出した。使い魔契約は魔力の交換が必要だからだ。

「そうだね。そろそろ君も困るだろうし。僕の名前はカレンだよ」

そう言って、俺の右腕を掴むカレン。

「俺のなま!?」

そのまま、カレンは俺の唇にキスをした。

そして、行きと同様に光に包まれた



光が収まると、学校の闘技場に戻っていた。

カレンはいつの間にか俺から離れていた。

「おかえりなさい。遅かったですね。心配しちゃいました。」

アイリスは安堵したような顔で俺にそう言った。

「だから、コイツを心配する必要がないと言ったじゃないですか。」

ノエルも少なからず安堵したような顔をしていた。

そう言ってお前も心配してくれていたのか。

「シオン。この人達がシオンの友人?」

後ろにいたカレンが俺に話しかけてきた。それよりも、

「おい、カレン。どうして俺の名前を知っている?」

俺はまだカレンに自分の名を告げてないはずだぞ。

「知らなかったんだ?使い魔契約するときにその人の事が分かるようになっているんだよ。発動条件は名前を知らない事、だけどね。」

なるほど、だからお前は契約の前に名乗ったわけか。

そして契約の時の事を思い出して、我ながら少し顔が熱くなるのを感じた。

カレンも思い出したようで少し顔が赤くなってやがる。

「この子がシオンさんの使い魔ですか?」

アイリスが微妙な雰囲気になった空気をぶち壊してくれた

た、助かった〜。

心なしかカレンを見るアイリスの目が冷たく感じるが多分気のせいだろう。

「そうだぞ。彼女が俺の使い魔だ。」

「僕の名前はカレンです。よろしくね。」

カレンはアイリスの視線に気付いてないようだ。

「種族はなんなんだ?」

ノエルさん、そこは聞かないでほしかったな。答えに困るんだよ。カレンが魔王とは言えない。目立ちたくないからだ。

「え?僕はまおモガッ」

カレンは正直者なのな。でもここで言う事ではないだろ?

俺がカレンの口を塞いでいると、

「禁忌召喚だ!」

魔方陣のほうからそんな叫び声が聞こえた。と同時に空気が少し重くなった。

「禁忌召喚を犯したのはドイツだ?」

魔方陣から寒気がするほど低い声と共に、フード付きの黒ローブを着た骸骨が現れた。

「ぼ、僕の使い魔になれ、死神!!」

魔方陣の前には、傲慢が服を着ているような男が立っていた。

「愚かな、禁忌召喚を犯した罪人のもとに付く気はない。」

死神はそう言うと、持っていた鎌を振りかぶった。

「あ~あ、あの人間死んじゃったね」

おあいにくさま、とカレンは続けて言った。

俺もあんなのを助ける気はないが、刀を創りつつ死神のもとに走り出した。

ガキィッ

「なんで、止めるんだシオン!?」

このバカを止める必要があったからだ。

「やめろ、リョウ!アイツはそれだけの事をしたんだ。罪人は裁かれなければならない!」

俺たちはつばぜり合いをしていた。

「それでも、僕は見殺しには出来ない!」

リョウはそう言って力を入れた。

「禁忌召喚を犯すという事は!」

俺はそれに合わせて力を抜き、

「使い魔として呼ばれた奴らを殺すという事なんだよ!」

体勢を崩したリョウを蹴り飛ばした。

「だから、それを塞ぐために死神が来るんだ!」

俺は吹き飛ばしたリョウにそう怒鳴った。



「はやく仕事をして帰ってくれないか?」

俺たちの戦いを眺めていた死神の横にはいつの間にかカレンがいた。

「感謝するぞ、魔王。」

そのまま死神は鎌を罪人に向かって鎌を振り下ろした。

仕事を終えた死神はそのまま魔方陣の中に沈んでいく。

「しかし、人間嫌いのお前が人間の使い魔になるとはな。」

「・・・うるさい。」

そのまま死神は魔方陣に沈んで消えた。


お、死神が帰った。

ずっと感じていた重圧が無くなった事で、死神が帰ったことが分かった。

しかし、カレンと死神は何を話していたんだろ?

「ふぁ~、メンドクセェな。」

気付いたらギルマスが隣にいた。

ギルマスは生徒だったものを見ている。

「禁忌召喚とは、バカな真似をしやがる。」

メンドクセェと呟き、死体を片づけた。

「どうして、見殺しにしたんだ!」

俺がそんなギルマスの作業を見ていると、リョウが叫びだした。

「シオンなら、彼を助けることも出来たはずだ!」

理由ならさっき話したと思うんだが、聞こえてなかったのだろうか?

「理由はさっき話しただろ?それで納得できないなら黙っておけ」

俺が冷めた目をしていることが自分でも分かった。

「し、シオンさん?」

後ろで困惑の声が聞こえるがそちらに気を向ける気は今はない。

「ふざけるな!だからって見殺しにする必要はないだろ!?」

リョウはまだ騒いでいる。俺はコイツのこういう偽善が嫌いなんだ。

「だったら、どうする?もう死んだ人間でも生き返らせるのか?」

声も冷めていることに気付いた俺は内心で思わず苦笑いを浮かべた。

「決闘だ!決闘でどちらが正しいかを決めてやる!」

ずいぶんと野蛮な考えだな。こっちの世界では自分が一番強いと思ってんのか?

「よろしい、ならば決闘だ。」

もしそんな幻想を抱いてるなら俺がぐちゃぐちゃに壊してやるよ。



「ルールは降参したほうの負けだ。」

俺たち以外の生徒は離れた場所にいた。

「それで、勝者になったときの望みはなんだ?」

俺たちの間にいるギルマスはそう聞いてきた。

望みだと?決まってんだろ。

「今後の関わりを断つこと。」

「見殺しにされた彼に対する謝罪です。」

俺たちは互いに睨みあったままだ。

「そうか。それならメンドクセェが、始め!」

ギルマスの合図と同時に俺たちは魔武器を召喚した。

リョウは光る片手剣を、

俺は闇衣の顕現をすこし抑えた。知らない奴から見たら学ランを着たようにしか見えないだろう。

「僕の魔武器の名前はへクリエイト。能力は僕の意思が折れない限り、この剣もおれないことだ!」

わざわざ、能力の解説をするとは相変わらずバカだなコイツ。

『僕の魔武器はなんだっかな?まあいっか。』

そのまま手に持っていたねじを投げる。

「その程度!」

リョウは剣でねじをはじき、そのまま突っ込んできた。

そして、剣が振り下ろされた。

『グフッ』

それをあえて避けず、俺は斬られた。そのまま倒れる俺。

「なんで避けないんだ!?」

『それは、僕が弱いからだよ。』

俺はゆっくりと、立ち上がった。傷口からは血があふれだす。

『痛いな。こんな弱い僕にそんなひどい事が出来るなんて、さすがリョウだよ。』

リョウは一切気にいた様子もなくまた斬りかかってきた。

また肉を斬られる音が響く。

今度は倒れる暇なく斬撃を食らう。

次第に赤く染まる地面。

『これだ、け斬られる、とはぼ、くもおも、わなか、たな』

俺の言葉が区切られるのは、リョウが斬ってくるからだ。

いまや、彼を応援している人はハーレムしかおらず、他は目を背けたり吐いている人もいる。

「これで、トドメだ!」

そして、俺を斬り飛ばすリョウ。

倒れこんだ俺の体は、右腕も斬り落とされており、足は曲がってはいけない方向に曲がっている。皮膚はほとんどはがされ肉はえぐれ骨が見えている個所もある見るも無残な姿となっていた。

後ろではアイリスが涙を流し、ノエルはゴミをみるような眼でリョウを見ていた。

『まだ、終わらないぜ。だって僕は降参していないんだから。』

俺はまた立ち上がる。そろそろ、立つのもつらくなってきたな。

『それにしても、さすがの僕でもここまでやられたら死んじゃうな。』

やばい、声を出すことも難しくなってやがる。それでも俺は続ける。

『ねえ、どんな気持ちなのかな?親友だと思っていた奴を殺すのはさ。教えてよ、リョウクン。』

俺の言葉に顔をゆがめるリョウ。

「でもシオンならなんとか出来るだろ!?」

リョウはそう叫んだ。叫ばれただけで俺の体にはダメージが入る。

『無理だよ。考えてもみなよ、これでも生きていられるのは人間じゃないだろ?今はまだ動けるけど、あと数分で僕は死んじゃうんだ。だから答えろよリョウ。』

リョウの剣に小さなヒビが入った。

『ねぇ、答えてくれよ。死んじゃうじゃないか。ほら、冥土の土産に持っていくからさ。早く答えろよ。』

リョウは俯いており、顔を見ることは出来ない。それでも分かる。

「ぼ、僕は・・・・」

コイツの心は折れかけている。

『そんな言い訳はいいからさ。早く答えてくれよ。ほら早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早くさぁ!!!』

直後に血を吐きだす俺。

このままだとほんとに死んじゃうかもな。

「あ、ああ、」

リョウは何かを呟いた。

「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあ!!!!!」

リョウは頭を押さえながら絶叫した。

同時に剣持っていた剣も砕け散った。

「やっと壊れたか」

俺はそう言って服に付いた血を右腕で払った。

いや~死ぬかと思ったぜ。まさかここまでぼろぼろにされると思ってなかったしな。

「まったく、無茶をするね。僕だって知ってても心配になったじゃん。」

隣に立つカレンにジト目で睨まれた。

「悪いとは思っているよ。 」

俺は不老不死だ。故にこの程度なら魔法を使えば1秒もあれば完治する。

その事を知らないアイリス達には、心配をかけたと思う。

「彼に降参させるから、ちゃんと謝っておくんだよ。」

ハァとため息を吐いて、魔法の詠唱を始めるカレン。

「みなさん!心配をおかけしてすみませんでした。どうしてもコイツに勝ちたかったもので大人げない方法を使ってしまいました」

俺は全員に聞こえるように大きな声で謝った。

「心配させんなよ」「これは、全員に飯をおごる刑だな」「お、そりゃいい考えだな」「え?シオン君がおごってくれるの?」

「「「「「ゴチになりまーす!!」」」」」

・・・まあ化け物として見られるよりはマシだけどさ。全員におごるってマジ?

「俺の分も頼むぜ。」

ギルマスも笑いながらそう言った。

「こうさんします」

カレンの魔法により、リョウは降参した。

「それでは、この決闘はシオンの勝ちだ。」

こうして、俺の初めての決闘は終わった。

ついでにあの後、本当にリョウ達以外に飯をおごる羽目になった。

・・・まあ楽しかったけどな。財布がすごく軽くなった事に俺は一人目から汗を流した。

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