サバイバルで一番の敵は虫だと思う
「来週からサバイバルな~」
夏休みが終わって一週間がたった。
姉さんには、もう会う事が出来なくなっていた。
分かっていたけど、空間魔法も万能じゃなかったようだ。
少し寂しく思ったが、分かっていた事だ。
「五人組で一チームだからな。メンドクセェが、俺のところまで言いに来いよ。」
ギルマスの言葉が終わると、いつものメンバーには人が群がった。
「シオン、一人なの?僕と組ま「死ね」」
そして、俺は孤立してしまった。しょうがないよね、俺だもの。
俺が一人心の汗を流していると、
「お兄ちゃん、僕と組もうよ。」
いつの間にか、ノアが俺の近くに来ていた。
いや、お前も人だかり出来てなかった?
「みんな、断わったよ~。」
俺が思った事をノアに言ったら、ノアの返答は実に簡単だった。
「私たちとも、組みませんか?」
アイリスとノエルも俺の近くに来た。
「僕とも組んでくれないかい?」
さらには、レイトまでも俺を誘ってきた。
「いや、俺以外でも組む奴いただろ?どうして、俺なんだ?」
俺の疑問を全員が笑った。それはもう、大爆笑だ。
そんなおかしい事言ったかな?
「シオンと、一緒に戦うほうが楽しいじゃないか。」
レイトが笑いをこらえながら言った。
イラッとしたので、とりあえずレイトの顔面に拳をプレゼントした。
「でも、そんな事ないだろ?俺自身戦うつもりないぞ。」
「「「「え?」」」」
息ぴったりだな、お前ら。
俺の発言がそんなに気に入らないのか?
「いや、お前ら一人になっても勝てるだろ?」
初期のリョウぐらいなら瞬殺出来るぐらいには、鍛えられているはずだぞ。
全員があれからも毎日訓練に参加しているからな。
まあ、リョウも多少は鍛えているみたいだから、全員が勝つのは難しいがな。
「そんなことないよ~」
((((シオンの敵になるほうがつらい))))
まさか、満場一致でそう思われているとは、さすがに俺も知らなかった。
「じゃあ、お前らまた訓練するのか?」
アイリスは首を横に振る。
ノエルに関してはバカにしたような顔をしていた。
「今回は父さんに鍛えてもらおうと思っています。」
「それに、シヴァ様の修行、いや拷問はかなりつらいぞ。」
二人とも顔が少し青ざめていた。そこまで凄まじい内容なのか。
面白そうだな。
「どうする?俺たちも参加するか?」
最近、マンネリ化してきているから、つまらなくなってきているしな。
まあ、俺だけで決めれる事でもないし、弟子たちの意思も聞くがな。
「僕たちも、強くなりたい。」
そう言った、ノアの目には強い意志が宿っていた。
俺の弟子も強くなったものだ。
結局、俺たち全員は、一週間おっさんに鍛えてもらった。
「・・・お前ら、大丈夫か?」
大会当日、俺たちは大会実行委員のギルマスの前にいた。
俺たちの服装は、ただの制服だった。
ただし、戦争行ってきたの?というぐらい、ズタボロなだけだ。
「大丈夫だ、問題ない」
チームを代表して、俺が答えた。
実際、服装がボロいだけで、傷は俺が回復させているからな。
それでも、副作用で疲れはかなりあるから、しゃべる余裕はないわけだけど
「頼むぜ?教師陣の中で、どのクラスが勝つかの賭けをしているんだからよ。」
おい、それを一生徒に言ってもいいのか?
「・・・奢れよ?」
じゃないと、負けるかも知れないぜ?
「冗談だろ?お前らみたいな金持ち集団奢ったら、金がいくらあっても足りねぇ。」
ギルマスの顔に笑顔が浮かぶ。
確かに、俺とレイトはオーバーランクで、アイリスとノエルは世界最高峰の貴族の一族だ。
でも、それとこれとは話が違うだろ?
まあ、そんな冗談は置いといて、頑張れよ。」
俺の金のために、そんな副音声が聞こえた気がしたのは俺だけじゃないはずだ。
「任せてください。あれだけやって負けるとかあり得ません。」
呆れる俺の代わりに、アイリスがサムズアップをした。
まあ、出るからには負けるつもりはないし、全力で遊ばせてもらうかな。
そして、俺たちは会場に向けて歩みだした。
「すごい熱気だね。」
コロセウムのような場所に集まった、大会の参加者。
ついでに、大会は学校主催のため、バラマンディ学園の生徒全員が集まっていた。
そして、観客席にはたくさんの観客がいて、その誰もがこれから始まる大会を楽しみにしていた。
「皆様、お静まりください。」
そんな、熱気に包まれた会場に、凛とした声が通る。
この声はイアン先生かな?でもどこにいるんだろうか?
「私は、バラマンディ学園学園長のイアンです。」
イアン先生は、空から舞い降りた。
「生徒諸君の手元には、事前に配られたペンダントがあるはずだ。」
俺は先ほど配られたペンダントに目を通す。
よし、魔方陣に不備はないな。
「そのペンダントは、オーバーランクの一人である黒夜叉が制作に協力してくれたものだ。」
歓声が上がる。オーバーランクなんて、そう会えるものでもないしな。
まあ、俺の事なんですがね。
「そのペンダントは持ち主にダメージが溜まると、壊れる仕掛けらしい」
らしい、とつけたのはイアン先生じゃ理解できないほど高度な魔方陣だからだ。
魔方陣は複写こそ簡単だが、解析をしようと思うとそれだけで数年かかる場合もある。
まず、魔方陣に使われる属性を持つ事が大前提だ。
なぜなら、属性が違うのに、魔方陣の解析を行うという事は、
英語が出来ない日本人に、英語の説明書を渡すようなものだからだ。
それだったら、最初から英語の話せる奴に翻訳してもらったほうが楽だろう?
しかし、俺の作ったのは空間属性の魔方陣だ。
ただでさえ、希少な空間属性で、解析が出来るほどの知識を持つ奴を俺はまだ一人も見た事がなかった。
だから、イアン先生が魔方陣の内容を詳しく知らないのも仕方ないといえよう。
「そのペンダントが壊れると、この会場に戻ってくるよう転移される。だから」
イアン先生はそこで一度言葉を切る。
「だから、思う存分戦ってほしい。」
そして、先ほどとは比べ物にならないほどの大歓声が沸き起こった。
「それでは、簡単にルール説明をしますね。」
俺たちと同じ制服の女子が一人、イアン先生の隣に立っていた。
「ペンダントについては、先ほどイアン先生が説明してくれた通りになります。ですので、ペンダントが壊れ次第失格となりますので、注意してください。」
うん、そうだろうね。なんせ、そのためだけに俺がただ働きさせられたんだから。
「それでは、最初に予選として、サバイバルを開始します。なおこのサバイバルはチームの数が半分になるまで続きますので、頑張ってください。」
あ、サバイバルって予選だったんだ。
・・・俺は予選のために、おっさんの拷問の後にただ働きをさせられたのか。
俺が密かにため息をついていると、
「それでは、頑張ってくださいね!」
司会の明るい声を最後に、俺たちは会場から転移した。
視界が変わってすぐに目に付いたのは、虎と熊を足して2で割ったような猛獣だった。
・・・すごく、デジャブを感じる。
「ガァァァァァァ!!」
「やかましい!!!」
俺は熊虎の顎を下から蹴りあげた。
一撃で熊虎の頭は粉砕され、熊虎だったものは動かなくなった。
「うわ~、懐かしいですね。」
もはや、ただの生肉の塊を見て、目を細めるアイリス。
どうでもいいが、事情を知らない奴から見たらだいぶ怖いぞ、お前。
「まあ、確かにコイツと会った時もこれに追いかけられてましたしね。」
あの時は、本当に死ぬかと思いましたよ。と俺に向けて話すノエル。
確かに、お前だけは死にかけたけども、それまだ引きずってたのか?
ついでに、このお肉はしっかり解体して、後ほどカレンが美味しく頂きました。
「「「覚悟!」」」
うん?三人ぐらいが俺に向かってきた。
ハァ、この程度かよ。
「遅ぇよ」
俺は的確に三人のペンダントのみを蹴る。
ペンダントは砕け、モブキャラ三人は転移されていった。
「なんで、通したよ?」
俺たちが会話している間、レイト達が向かってくる雑魚どもを片づけてくれていたはずなんだが。
「暇だったろ?」
レイトの言葉にぐうの音も出ない。
実際、相手が弱すぎて暇だしね。
近くで爆発音が響いた。
「なんだ!?」
レイトが爆発音のあったほうに顔を向ける。
「まあ、落ちつけよ。魔力探査したら、すぐわかるだろ?」
アイツなら、魔力を隠してないし、お前ならすぐわかるだろ?
魔力探査をしたであろうレイトの顔が苦虫を噛んだような表情になった。
「これは、似非勇者の魔力だね。」
そう、さっきの爆発音はリョウが起こしたものだ。
アイツは、主人公補正だけで戦ってるようなものだからな。
温存という考えが頭にないのだろう。
「様子を見に行きますか?」
アイリスの提案の意味に俺たちは気付いた。
すなわち、潰しに行きませんか?と言いたいのだろう。
「「嫌だ」」
だれが、好き好んでアイツに近づくものか。
俺と同じ考えのレイトも頷いていた。
「そういうと思ったよ。それじゃ、爆発とは反対側に行こうか」
ノエルの提案に乗り、俺たちはその場から移動した。
「しゅ~りょ~」
え?
俺たちはペンダントに傷一つ着けてないのに会場に転移された。
見ると、会場にいたのは、開会式の半分ほどの生徒たち。
まさか、本当にサバイバルが終わったのか?
「勇者様であるリョウ様の活躍で、怒涛の早さで予選が終了しました。」
アイツ、まさかそこまでアホだったなんて、
サバイバルで一週間かかる場合もあると聞いていた俺は、少なからず衝撃を受けた。
なぜなら、大会期間中は授業がないからだ。
その期間が大幅に減らされてしまったのだ。これで衝撃を受けない生徒は少ないと思う。
「それでは!予選を切りぬけたチームには、明日からトーナメントが始まります」
ちなみにトーナメントもペンダントは使用されるらしい。
「それでは、みなさまお疲れさまでした~」
こうして、大会初日は幕を閉じたのであった




