安定の水着会
青い空、照りつける太陽、そして目の前に広がる青い海。
俺達は南の島にいた。
悪夢の選別(期末テスト)を終えた。
事前の勉強会のおかげか、バカ二人は赤点をぎりぎり回避することがで出来た。
「海行こうよ、シオン」
俺はレイトとノアの訓練をしていた。
「海?」
「うん、アイリス達に誘われたんだ〜。シオンも行かない?」
俺はいつも通り、レイトとノアの修行をしていた。
後ろから叫び声が聞こえるがいつも通りの事なので気にしない。
「いいぞ。俺も行くよ。どうせ夏休みの間は暇だしな。」
それに水着も見られるしな。サクッ。
「今、変なこと考えたでしょ?
アハハッソンナコトアルワケナイジャナイデスカー。ザクザクッ、すみません俺が悪かったから、これ以上剣を頭に刺さないでください。
土下座をする事で許して貰ったが、今言う必要はないよな?
「うわ〜、すご〜い。」
俺が男として大事なナニカを捨てた翌日、俺達はグラシス家の別荘に来ていた。
カレンの言う通り、目の前に広がる海はすごく綺麗だ。
「今年は、空間属性持ちが居たから、到着が早かったですね。」
ノエルとルドラさんが話をしていた。
「そうね。それに私も魔力消費が無かったから、今年は初日から楽しめるわ。ありがとね、シオン君」
そしてルドラさんは屋敷に入っていった。去年まではルドラさんが風魔法で全員を運んでいたらしい。
「それじゃ、着替えましょうか」
アイリスの言葉を切っ掛けに、ノアと女性陣は別荘に、俺とレイトは浜辺に残った。
「それにしても、すごいよな~」
俺は服を脱ぎつつ、レイトに話しかけた。
「まあ、たしかにグラシス家は世界有数の貴族だからね」
レイトの言うとおり、グラシス家は世界でもトップクラスの財力を持っている。
夫婦でオーバーランク所持者なのだから、当然と言えば当然なのだが
「それでも、日本にいた時は、島一つを持っているとか、考えられなかっただろ?」
俺の家族とリョウ以外では、レイトだけが俺が転生者という事を知っている。
俺が修行中にうっかり口を滑らせたからだ。
「え?別に島一つぐらい普通じゃない?」
・・・そうだ。忘れていた。コイツも前世は金持ちだったな。
着替え終えた俺たちが取っ組みあっている、というより俺が一方的に殴りかかっていると
「おまたせ~」
カレンの声が聞こえた。女性陣も着替えたようだ。
「おう、思っていたより早か・・・・た・・・な・・・?」
振り向いた俺の視界に映ったのは、こちらまで手を振りつつ走っているカレンと、その後ろをゆっくりと歩いてくるアイリス達だった。
しかし、そんな事は今はどうでもいい。問題は、
「なんで、スク水?」
そう、レイトのいうとおり、カレンだけは真っ白の旧スク水を着ていることだ。
さらに、ご丁寧に胸元にはゼッケンで、「かれん」と刺繍まである。
「え?だってドギーがこれが一般的な水着って言ってたよ?」
おのれ、肉ダルマェ。・・・いいセンスだ。
俺が、内心で肉ダルマに対する評価を改めていると、
「あれ?そう言えば、シヴァさんとルドラさんは?」
レイトが周りを見渡しながら言った。
言われてみれば、、あの二人がいないな。少なくとも、おっさんならアイリスの水着を見るな~とか言いそうだけどな。
「あの二人なら、今は屋敷で休んでいるぞ。」
ノエルが苦笑いを浮かべながらレイトの疑問に答えた。
ノエルは黒のビキニだ。胸元にある爆弾がノエルが動くたびに揺れ、実にすばらしい。
サクッ
「今、何か考えたでしょ?」
「気のせいだ」
いい加減、頭を刺されるのも慣れてきたな。
「シオンさん、私はどうですか?」
アイリスはその場で一回転した。
アイリスの水着は、黄色のワンピースタイプだった。
感想と言われても、
「相変わらずのz」
雷が落ちたような音とともに、俺の意識はブラックアウトした。
・・・気がつくと、俺は頭から下は地面に埋まり、頭だけは地面に出ている状態だった。
「それじゃ、スイカ割りならぬ、シオン割を始めようか。」
ノエルの合図に木刀を持った彼ら彼女らは、一斉にこちらを向いた。
全員の顔には満面の笑みが浮かんでいたが、今の俺には笑顔がすごく怖く感じる。
「「「「「「待てー!!!」」」」」」
俺は生き埋め状態から這い出し、
「誰が待つか!!!」
全力で逃げた。
「そろそろ、戻りましょうか。」
俺は結局、捕まってボコボコにされた。
ノアが日ごろの恨みーー!!と殴りかかってきたときは、少なからず傷ついた。
「えぇ~。もう帰るの~。」
アイリスの言葉に、カレンは駄々をこねた。
「また明日もあるんだから、明日も遊べばいいだろ?」
「それに、夜は魔獣が活発になるから、危ないよ。」
俺とレイトがカレンを説得する。
まあ、魔王だし問題ないとは思うが、もし面倒に巻き込まれたら困るからな。
しょうがないな~。と言って納得してくれるカレン。
俺たちの間に、そろそろ帰ろうかという雰囲気が漂っていたが、
そうは、問屋がおろさなかった。
「え?」
「な!?」
カレンとノエルの体に何かがまきついた。
そして、宙にぶら下げられてしまった。
「な、何これ!?」
珍しく焦った顔を浮かべる二人。
なんか、新鮮だな、と場違いな事を思っていると、
海から何かが顔を出した。
「なんだ、あれは!?」
雰囲気で言ってみたが、全く分からん。なんだ、あれ?
海から出てきたのは、イカとタコを足して2で割ったようなやつだ。
「あれはまさか、クラーケン!?SSSランク指定の魔獣がなぜここに!?」
説明乙。アイリス。
しかし、SSSランク指定なら大したことはない。こちらはオーバーランクが二人に魔王様までいるのだから。
駄菓子菓子、オーバーランクの俺とレイトは動けなくなってしまった。
「ちょ、そこはらめぇぇぇ」
「や、やめ、やあぁぁん」
なぜなら、カレンとノエルを捕えていた触手が二人の胸に手を出したからだ。
俺とレイトが前かがみになってしまったのは察してほしい。
その間もカレンとノエルは責められ続けた。
顔は赤みが増し、抵抗も少なくなっていた。
「・・・のか」
このままでは、二人が取り返しのつかない事になるが、正直に言ってまだ見ていたい。
そんな葛藤と戦っていると、アイリスがぼそりと呟いた。
「やっぱり、胸なのか!!!」
アイリスは女性陣の中で一人だけ、クラーケン先輩の魔の手を逃れていた。
否、正確に言いなおすなら、アイリスだけはクラーケン先輩に相手にされなかった。
そのため、アイリスが目に涙を溜め、怒鳴ったのは、仕方ない事だと言えよう。
「トリス!!!」
アイリスは魔武器を呼びだした。
そして、捕らわれた二人を避けて、クラーケン先輩に矢を放った。
「クラーケン先輩ィィィィ!」
矢はクラーケン先輩の体に大量の風穴を開けた。
俺の叫びもむなしく、崩れ落ちる、クラーケン先輩。
悲痛な叫びをあげる俺。
そして、解放された女性陣に俺は血祭りにあげられたのであった。
「大丈夫ですよ、お嬢様。胸の大きさが女性の魅力にはなりませんよ」
夜にあり、俺たちは別荘の前でバーベキューをしていた。
アイリスはクラーケンの件をまだ引きずっているようで、さっきから、
「どうせ、私なんか女に見られませんよ。・・・」
とぶつぶつ言っていた。
そんなアイリスをノエルが慰めているが、女性陣の中で一番大きい爆弾が慰めても皮肉にしかならんだろ。
「お肉が焼けましたよ~。アイリスさん達も一緒に食べましょうよ。」
ノアが肉の乗った皿をアイリス達に持っていた。
ノアの存在に元気が戻ってきたのか、
「私だけじゃ、ありませんしね」
そう言って、アイリスは肉をやけ食いしてきた。
確かに、ノアもクラーケンに襲われていなかったが、コイツは男だぞ?
心やさしい俺は、その事実をそっと胸の中にしまうのであった。
「ほら、シオンも食べなよ。」
俺が心の底から、アイリスに同情していると、いつの間にか隣にいたカレンが、俺にも皿を差し出してきた。
「おい、カレン。この食材は、もしかして・・・?」
皿の上にはこんがり焼けた白い塊が乗っていた。
「さっきのクラーケンだよ。それがどうかした?」
カレンは可愛らしく、首をかしげた。
カレンの言うとおりなら、この肉はあの男のロマンの具現化された存在であるクラーケン先輩という事だ。
俺はクラーケン先輩に心の中で、合掌した。
クラーケン先輩よ、安らかに眠れ。




