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リアル脱出彼女  作者: いちの くう
2・修学旅行への進出
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2-2 修学旅行への進出

 東京の原宿という若者の街。その中心部を通る表参道からひとつ道をそれて1分の距離にあるとあるビル。その半地下にそれはあった。

 『STRAPのヒミツキチ』

 STRAPの生ゲー用の会場だ。おおよそ100名が一度に参加できる規模の広さである。

 毎回開始時刻の30分程前から受け付けが開始され、2人が到着する頃には何名かが下へと続く外階段手前で待機していた。

「まだみたいだね」

「うん。もう少しかな」

「何だか新鮮だな。真子と一緒なんて」

「私も。まーくんと一緒だと嬉しいし、なんだか頼もしい」

「えー、でも6回中成功したの0だよ? そんな俺より真子の方が実績があるんだからぜひ頑張ってもらわないと」

 そう、真子は前回のレストランのイベントでは脱出成功している。それが初めての成功であったが、貴重な成功体験だ。

「でもあれは他の人がすごすぎたんだって。私なんてあまり貢献できなかったもん」

 おおむねこの生ゲーのイベントはチーム戦であることが多い。時に個人戦もあるのだが、多くが6名1組で挑戦するシステムになっている。前回の真哉は3人組とカップルに囲まれており、真子のチームは男性ソロ、男性2人組、ペア1組の組み合わせだった。


「おまたせしましたー」


 少し話をしてると扉が開き、中からスタッフが顔を出した。

 さて、いよいよ本番である。2人は階段を下りて会場の中へ入った。



 会場内は少しだけ照度が落とされていた。教室の机より面積がひと回り大きい丸テーブル。囲むように丸椅子6つがそれぞれ置かれている。それが約20セットあった。

 受付が早かったのか1番テーブルに案内され、他の参加者を待った。

 残り4名はすぐに来た。女性の2人組とカップルらしき男女ペア。共に年齢は若い。こういったチーム戦である場合、ある程度チームレベルの確認をしておくのが重要だ。

「こんにちはー」

「こんにちはー」

 女性の2人組は大学生の友人同士であり、男女ペアはもう結婚している夫婦だった。そして女子大生2人は共に初参加。夫婦は2回目の参加だった。

「じゃあ、そちらにお任せすれば大丈夫ですね」

 夫が真哉と真子の2人を指した。この6名の中では7回目と経験値が圧倒的に高い。ゲームがスタートするとある程度場を仕切るものがいると比較的スムーズに事が進む。もちろん逆にそれが徒となるケースもあるのだが。

 こうしたやり取りがコミュニケーションにもなり、結果的にチームの士気も高まる。


・謎解きはスマートに、そしてエレガントに。強引な手法はお勧めしません。

・会場内は飲食禁止です。もっともそんな余裕もありませんが。

・探索するのが基本ですが、一部立ち入り禁止の箇所があります。指示に従いましょう。

・謎解きの道具などは大切に扱いましょう。それは次の参加者へ繋ぐ絆となります。

・本作はネタばれ禁止です。SNSへの感想・画像の投稿などもご遠慮ください。

・帰るまでが修学旅行です。道中他の参加者が近くにいるかもしれません。うっかり口を滑らせないでください。


 入場時にもらったパンフレットにはそんな事が簡単に書いてあった。

「帰るまでが修学旅行って、茶目っ気たっぷりだねー」「だよね」

 このパンフレットも重要なアイテムになる事がある。謎解きのヒントになるイベントも過去にあった。また、なくてもさらに雰囲気を高めてくれる大切なアイテムだ。

「もうそろそろだね」

「うん。えーと、まだ1回も成功してない人からのアドバイスとかいいですか?」

 真哉の経験上、初参加がSTRAPであると目の前にある謎を解くのに精一杯でそれ以外の勝手がわからずに気付いたら終わっているケースが多い。初心者へ外枠を簡単に説明するだけでも多少は違う。


・今テーブルにあるのはチーム番号『1』が貼られた紙。

・6本の鉛筆と1個の消しゴム、1個の鉛筆削り。

・3つのバインダーと6枚の白い紙。

・『修学旅行からの脱出』と『指示があるまで開封厳禁』と書かれた1つの大きな書類入れのファイル。


・開始前の映像などにヒントがある場合も。

・その後、司会者の挨拶があってゲーム開始となる。

・共に目の前のファイルを開封して解ける謎を解き、周囲の壁に貼られているヒントなどは携帯で撮影して画像を参考に解く謎もある。

・それぞれ小問題を解くと最初の中問題の答えになる。

・そしてまた別の問題を貰い……2段・3段くらいの中問題であることが多い。

・最後はその場でわかることもあれば、開設後にわかるパターンもある。


「そんな感じかな」

「えー、難しそう」「その時はお願いしますねー」

「いやいや、色々参加しているだけで、謎自体は俺も知らないし、同レベルですよ」

 と、毎回経験者は何かと実力以上の期待をされる。ひとつ誤解してほしくないのは謎に慣れている、環境になれているだけで、謎解きのスペシャリストではない。それだけは毎回力説したかった。



 そうしてひと通りのコミュニケーションと簡単なオリエンテーションをし終えてしばらく。急にBGMが大きめになった。

 真哉が腕時計を見る。もう時間だ。

 そして音量が徐々に、大きくなりある一定に到達して急に無音。そして照明が落ちた。

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