2-1 本番前の練習問題
『脱出』じゃないやないか!
そんな事をつっこまれそうなので早めに弁解しておく。
当時、このネタの作成時は『修学旅行からの脱出』だった。しかし脱出、脱出ってなんで追い込まれなあかんのか、それが唐突に気になった。確かに『死を避けるための脱出』『追い込まれた場からの脱出』なんてどれも結果的にはプラスの脱出である。マジシャンの脱出劇というのもプラスだろう。しかし脱出という言葉自体はどうもマイナスな印象を受ける。
そこで考えた。超ポジティブな言葉はないか。
修学旅行先で閉じ込められるよりもこの問題が解けたら修学旅行に行ける!というのがよりプラスなのではないか、そう考えると全てがつながった。
・舞台はどこかの高校。
・そこで修学旅行当日に教師側から突き付けられた驚愕の事実。
・修学旅行は遊びじゃねぇんだ、頭の悪い学生に行かせる余裕なんてねぇ!
・こ、これは頑張って解いて何としてでもあそb……勉強しに修学旅行に行かな!
そんな設定を途中で生み出しながら問題を作っていった。有頂天だった。しかしよく考えるとこの問題が解けないと『旅行期間中は学校に登校して補習と自主学習の毎日』という設定なのであればたいして脱出と変わりないと気付いたのは比較的最近になってのことだ。
木南真哉と木内真子は恋人同士。前回のSTRAPの生ゲーイベント『あるレストランからの脱出』をきっかけに2人一緒に参加する事にした。
「そういえばサイトの練習問題解いた?」
「うん。解いたよ。簡単だったよね?」
「う……うん。そうだね」
真哉はたっぷり3分かかって解いたのだが、真子は瞬殺のような表情だった。STRAPのホームページはこの業界のトップだけあってなかなか凝った仕掛けがある。1つ目が練習問題。難易度は下がるものの、各公演の専用サイトには必ず練習問題が用意されている。今回の練習問題はコレだった。
すぐ下に解答を書き込む欄があり、正解しても特に何もないのだが確実に期待度は高まる。
「まーくんの高校は修学旅行どこだった?」
「ウチはど定番の京都・奈良だよ。真子は?」
「私の学校は沖縄だった」
「うわっ、すげーな。超羨ましい」
「でも台風の日にあたって着いた翌日から2日間ほとんど何もできなかったんだ。全くいい思い出がないよ」
「そっか。それは残念だね……いつか沖縄にも行きたいな。2人で」
「うん!」
ニコニコ顔の2人は会場へ向かった。