1-4 話し合い
イベントが終わったのが夕方5時過ぎ。そのまま2人は居酒屋に入った。
注文をし終えてから最初に行動に移したのは真哉だった。
「ゴメン!」
まだ客もいない静かな店内で土下座をした。
「ちょ、ちょっと、やめてよ。恥ずかしいって」
「……本当にゴメン。もう察してはいるけど勉強会というのはウソなんだ。ただこのイベントに参加したくてそれでウソをついたんだ。ほら、真子はこういったイベントが嫌いだって言ったから堂々と言い出せなくて。本当にゴメン」
真子にも疑惑があるのだが素直に自分の罪だけを懺悔した。どんな理由があれ、真子を裏切ったことに違いはない。
「そっか。……ううん、謝るのは私の方だよ。知らない間にまーくんを縛っていたんだね。ほら、私ってスポーツが好きだし、他の人と付き合ったことがないからどう彼女を演じればいいのかもわからないし、それまでスポーツ漬けの毎日だったから急にも変えられないし……うん、言い訳だよね。えーっとね、本当は私の方こそ謝らなくちゃいけないよね。だって嫌いなゲームとかに参加しちゃってんだからね」
「どーゆー経緯で?」
「……実はまーくんには内緒にしていたんだけど。私ドイルが好きなの」
「……ドイルってあの名探偵ドイル? マンガの?」
「うん。ドイルだけ本は買い集めていて家に本棚があるんだ。あ、まーくんが来たときは押し入れに隠してるんだけど」
「それで?」
「それで、そのドイルとこの生ゲーがコラボするイベントがあるのを知って参加してみたくなったんだ。それが生ゲーとの最初の出会い。それで参加してみたら……面白かったの。今まで毛嫌いしていたゲームとかパズルとかが好きになって。でもまーくんの前であんなことを言ったから今更一緒に行こうって言えなかったし、まーくんもあまりそういったの好きそうでもなかったし、だから……」
「えーっと。ちなみにこれは何回目になるの?」
「今日のを入れたら6回になる」
そこまで聞いて真哉は脱力した。
なんということだ。
互いにドイル好きを表に出さず、漫画は押し入れに隠し、ドイルがきっかけで生ゲーを始め、そしてはまり、参加した回数も同じで今日が6回目。
なんて日だ。
正直、今日の出来事を機に別れるのではないかと、蹴りの一撃でも食らうのではないかと考えていた。縮こまって緊張していた力が一気に抜けた。
「真子、俺たちって実はすごい仲良しだったんだね」
そう言って、自分も押し入れにマンガを隠し、初参加も同じ、以降全て同じであることを伝えた。
「え、えぇ!? ホントなの? ……なんだ。隠さなくてよかったんだ。……そっか。それならこれからは一緒に参加できるね」
その日は2人にとって特別な記念日になった。
以上、プロローグ編でした。
次回から本番です。それなりにガチですのでよろしくお願いします。