1-2 解説
再び室内に明るさが戻ると1人の男性が中央の舞台に上がった。店主役でもなくボーイ役でもない、司会進行の係の男性だ。
「はい。皆様いかがでしたでしょうか。何だか最後におかしな叫び声が聞こえてきましたが、それでは今回の謎の解説を最初から行っていきましょう」
司会の解説は冒頭は全てのチームが解けておりさほど声も上がらなかったが、後半から「あー」や「そっちかー」などの声が部分的に上がった。
「そして、最後に貰ったのはこの紙だと思います。ようやくこのお店のメニュー表を手に入れます。ただこれも普通のメニュー表ではありません。背面には数字が書いてあるのですが、それが何を示すのか悩んでいたチームがいました。
数字というと冒頭に解いた覆面算がありましたが、使わない数字が使ってあり上手く読めません。ではこれに関するモノはなかったのでしょうか? いいえ、ありました。最初の封筒に入っていたこのレストランに関する歴史を記載したプリントです。そこには西暦や従業員の数など様々な数字が書かれています。そしてどうやら同じ数字がこのメニュー表の方にも書かれています。では順に確認していきましょう」
言われてたくさんの問題の下敷きになっていたレストランの歴史の紙を取り出した真哉。この手のゲームは紙類がたくさん出てくる。そしてその管理方法が大切になってくる。前に解いた問題をまた別の問題で使用するのが多分にあるのだ。雑に置かれては解ける謎も迷宮入りである。
「――と、『終了時左上と右下』という文章になりました。では、この左上と右下というのは何を示しているのでしょうか。そのような場所があったのでしょうか? ……ありました。漢字スケルトンの解答用紙に注目するとその左上と右下の部分に『完』と『敗』という言葉があります。つなげると『完敗』。おや、確か上の方に『この問題を解いたら完敗宣言するしかないでしょうね。』と書いてあります。ということはゲーム終了時に完敗宣言をしろ、というメッセージになりました。……しかし、完敗宣言とはどうすればいいのか。これにも悩まされていたチームがいました」
そこで舞台に別の男性が上がった。彼はボーイ役だ。
「ところで今回の問題はどなたが作ったか皆様は覚えているでしょうか?」
その質問に「ボーイさん?」とどこからか答えが出る。
「そうです。今回の問題は傲慢な店主に押しつけられた彼が作ったという事になっています。実際はスタッフみんなで必死な思いをしたのですが」
そこで小さな笑い。
「今回の解明のポイントはそこにありました。謎はボーイが作りましたが、そのボーイにはある特徴がありました。皆さんもよく見ていたと思いましたが、彼は結構ミスをしています。それはどんなミスでしたか?」
そこまできたところで「そっかー!」と完全に漏れた独り言が室内に響いた。
「皆様の前で判明したのは2つです。1つはナイフとフォークを逆に置いたこと、もう1つは会場の案内をした時の説明です。ナイフとフォークを左右逆に置いて店主から叱られており、会場内の説明でもしきりに左右の言い間違えでしどろもどろになっていました。どうやらボーイは左右の判別が苦手なようです。そしてその事と今回の謎はリンクできなかったでしょうか? ……できました。最後の問題にもしっかり左右の表記がありました。つまり『終了時左上と右下』というのは誤りで、正しくは『終了時右上と左下』であり、その部分を読み解くと『乾杯』になります。つまり『終了時に乾杯宣言をしろ』と読み解くことができるのです。それができたのは……3班と7班です!」
湧き上がる歓喜の声とその栄誉をたたえる拍手の嵐。
「いやー、これはわからんわ」
真哉は完敗宣言しかできなかった。