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リアル脱出彼女  作者: いちの くう
2・修学旅行への進出
14/15

2-9 解説

 55分経過――


 既に余裕を持っているチームがちらほら見かけた。そんなチームの仲間入りを目指してまだ多くのチームが問題に挑んでいた。


 59分経過――


 いつものごとく、焦りを生ませるBGMが5分前から流れ始め、のこり1分のところでさらにボリュームが上がった。もうこうなっては集中できない。隣のチームからは「あぁー」と文字通り頭を抱えている男性が目に付いた。


 50秒……55、56、57、58、59……ゲーム終了です。スタッフは解答用紙を回収してください。


 毎回のように1時間という時間があっという間に感じるのはこの時だ。本当はもっと時間があるのではないかと時計を確認したところでやはり確かに1時間なのである。






 回収し終えたのを確認して、再びステージに上がる司会の男性。

「みなさん、おつかれさまでした。……あれ、みなさん、高校生ですよね? 一気に老けてませんか?」

 そこで起こる笑いとブーイング。

「すみません。大変失礼しました。今回のみなさんの大好物の謎解きでかなり若返っていましたね。それでは今回のヒアルロン酸的な謎、みなさんはどうすればよかったのか遡って確認していきましょう」

 スクリーンに問題などが表示され、簡単ではあるが問題と答えが説明された。冒頭のAからGの問題は全て正解していた。

「実はこの時点で読み方に気付いて次のステージへ行くチームもいたのですが、横読みや縦読みでは読めない文字の塊に苦労されたチームが大勢でした。そこで先生からの問題です」

 スクリーンには火星の大きさを問う問題文が映し出されていた。

「みなさん気付いているかもしれませんが、この問題は今日、本日、リアルタイムで作成しました。各公演、修学旅行先が変わるたびに問題もその都度変わります。旅行先決定の直後からスタッフが色々必死になって調べて、答えが必ず『×』になる問題を作ります。今回は正解に自信がないチームが多かったですが、この問題の時間的な意図と冒頭の『先生は皆さんが思っているよりかなり親切』というヒントから最低でも2択であるので、この読み方に気付くことができたと思います。そして正解するとこのようなものを貰いました」

 4枚の紙の問題も解いた通り。そして箱に入っていた最後の問題が登場した。

「この文章の意味。十字架という言葉。4つに囲まれているということで熟語問題やカリウムという言葉に反応して元素記号表をじっくり見つめていたチームもありましたが、そこにもそれらしきものはなかったはずです。では本当にどこにもなかったのでしょうか。……いいえ、ありました。それは一番初めに皆さんが書き入れた解答用紙です」

 映し出された解答用紙の画像。

挿絵(By みてみん)

「文字を見渡すと、グループ分けができそうです。『キヨウト』、『カリウム』、『イドバタ』、春の七草である『セリ』。それに囲まれている6マスに注目すると……十字架に見えませんか?」

「あー」と言う言葉と「えー」という言葉が入り混じっている。

「横になっていますので起こしてみましょう。そして『上、左、右、中、下~中』の順に読んでいきましょう」


 ガ、ツ、コ、ウ、チヨウ


「そう、『学校長』つまりこのSTRAP高校の学校長に許可を取ればよかったのです。そして合格者は…………?」

 そこで司会が何やら外部と連絡を取り始めた。何事か。

「失礼しました。合格者は私からではなくこちらの方から伝えていただく事にしましょう」

 言いながらステージを下りてしまった。誰が出てくるのか。ライトが哀しくステージを当てている。まさかその学校長ではあるまい。


「よくやった、お前たち!」


 その声が聞こえたのはステージと真逆の後ろからだった。「うわ、びっくりしたー」と直近のチームの女性の声が聞き取れた。

 どこかで聞いたことがある声だった。そしてスクリーに映し出されていた教師に似た白シャツ赤ネクタイの姿。この人物が教師役の声の持ち主だった。その先生役は参加者のテーブルを分けるように中央をズカズカと歩き、ステージに上がった。

「本当によくやった。1時間もの間、真剣に解いているお前たちの姿はとてもよかったと思う。しかし、結果は結果だ。これから合格したチーム番号を発表する。……1番、4番、5番、9番、15番、以上だ」

「やったぁーーーーーー!!」

 真哉のチーム1は合格した。のこり10分の時点で最後の問題に向き合った真哉たち。数分間、にらめっこが続いていたが閃いたのは真子だった。

 ことのほか正解チームが多かった。合格したチームが多いからなのか、場は大きく盛り上がった。

「ただ――」

 そこに水を差すように先生役の男性が言葉を付け加えた。再び戻る静寂。

「ただ、先生はこの目で見ていたが、お前たちの努力は素晴らしいものだったと思う。それは間違いない。本来は謎を解いた者だけに学校長に許可をもらった者だけが行くことができる修学旅行であるが……こ、今回は……と、特別に許可をしてやっても良いと思ってる。べ、別にお前たちの為ではないぞ。行けない者が出ると先生たちもジャンケンで負けた先生が残らなければならないからな」

 このあたりで序盤感動的なシーンを迎えるのかと思われたが、ある所からお笑いの要素が浮き出てきた。オッサンでツンデレかよ、というツッコミがそれぞれの脳内で行われた。我慢の限界と思われたところで、

「それでは学校長の許可を取ってくる。お前たちはここで待機しているように」

それだけ言ってまた後ろへ去っていった。というより逃げた。


 再びバトンは司会の男性に代わった。

「……と、どうやら皆さんは火星に行けるみたいですね。ちょっと男のツンデレというものを私初めて見たのですが……うん、気持ちいいものでは決してないですね」

 適切すぎる感想に場内一致の笑いが起きた。

「さて、結果的には全員が行けることになった修学旅行ですが、今一度修学旅行へ進出できたチーム1番、4番、5番、9番、15番に盛大な拍手をお願いします。おめでとうございます。司会進行はSTRAPの高橋でした。ありがとうございました!」

 最後に盛大な拍手と共にイベントは幕を閉じた。






「ちょー、楽しかったです」「また来ようね」

「今日はありがとうございました」「また機会があればぜひ」

 女子大生2人組と夫婦らが挨拶をして帰っていった。

「真子のおかげだな」

「え?」

「最後の真子のひらめきがなければ俺は7戦全敗だったよ」

「まーくんのおかげだよ」

「え?」

「まーくんがいなければ私だって色々わからない問題だってあったし、計算とか苦手だからさ……」

 運動機能には抜群の自信を持つ真子も決して学校の成績は優秀ではない。

「じゃあ、2人の……今回の4名もなかなかの活躍ぶりだったよな。色々助けられたよ」

「そうだね。今回はみんな頑張ったからだね」

「そうだな」

 1人では解けない問題も、2人では解けない問題も、3人では解けない問題も、チームで力を合わせれば解ける問題になる。

 2人一緒で『修学旅行への進出』に脱出ができた思い出のイベントとなった。

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