緑の考え 白の回想
「僕の気持ちは愛とも恋とも断言できないものです」
「へえ、いったいどうしてそんなふうに思ったんだい?」
「僕はただ彼女が今までの人と違うと思ったから気になって、それから一緒に訓練をしたりして好きになったんだと思っていた。でもそれじゃダメなんだ。特に僕は純色の五家の次期当主だ。たとえ彼女ができたとしてもその人にはとてつもない苦労や苦痛を与えるだろう。だあら僕は………」
「「「「………」」」」
「さてそれじゃあクラブを始めようか?」
「「「「今までのことをなかったことにした!?」」」」
なんて奴だ、まさかこんなことができるとは思わなかったぜ。
「ところで瞬」
「なんだい透?」
「さっきから素でしゃべってるけどいいのかい?」
「………え?」
「いやさっきから一人称は『僕』になっているし、いつもみたいな丁寧語でもなくなってるよ」
「あっ」
今日はやけにぼけてるというか抜けてるな。これが気になる人ができたということの害なんだろうか?
まあ瞬がいくらぼけていようと被害を受けるのは僕じゃないからいいけどね。
「瞬ちゃん、いまのが素っていうのはどういうことなの?」
そう、体中から魔力が漏れ出して火花やら電気やらが体から出ている彼女の相手をするのは僕じゃないので放っておこう。
「い、いえこれはですね」
さてと瞬が尋問されている間は暇だからどうして瞬がああいう言葉遣いになったのかを思い出してみようかな。
そうあれは桜が舞う冬のある日のことだった。
いや僕はふざけているわけじゃないからね?あの時は本当に桜が冬に舞ったんだよ。
そう、それはある馬鹿が桜吹雪という言葉を知ったことから始まった事件だった。
その日の国語の授業で同音異義語についての話があったのも悪かったのかもしれない、いやそれどころか家庭科の授業で桜餅を作ったのも悪かったのか?
まああいつはいったい何が原因で何をするか全くわからないやつだった。
………と、話がそれたな。まあそんな感じで冬に桜が舞ったあの日に僕は瞬と知り合った。
「この馬鹿もんが!!いったいどうやってこんなにたくさんの桜の花びらを集めたんだ!!」
「ああそれさあ手に入れるの苦労したんだぜ。とりあえずこの学校にある桜の木に魔法を使って花を咲かせたんだけど超大変で」
「この大馬鹿もんがー!!」
はあ、彼も毎回毎回よくやるもんだ。僕なら最初の一回もやらないことを1日100個くらいやるんだから。まあそんなことをしてるからと言って何とも思わないけどさ。
「すみません雪白君、いま少し時間をもらえませんか?」
僕に用があるなんていったい誰だと思い振り返った先にいるのはイケメンだった。