白の夜這い
歩く
ひっそりと歩く
誰にも気づかれないようにひっそりと歩く
現在の時刻は午前1時。僕は夜襲をかけようとしていた。………夜這いではないと言っておく。
今日逃げ回っていた本当の目的はこの夜襲をかけるためだ。
彼女たちを相手にまともに勝てるだなんて最初から思ってはいない。
彼女たちの異常ともいえる実力はよく知っている。だからこの夜襲もうまくいくとはあまり思ってはいない。
だから今回の目的は倒すことにはない。その目的は僕の実験だ。
すべての記憶が戻ってから僕は『黒札』から僕に流れてくるダメージを『破滅の聖剣』で無くしている。そのおかげで僕は黒札を遠慮なく使えるわけだ。
そして今回は『収納の聖剣』と『増殖の聖剣』、そして『連結の聖剣』について実験する。
その実験がなぜ夜襲かというと、基本彼女たちは寝起きに弱くなる。弱くなると言っても十分に強いのだが、その弱体化によって僕は30分程度なら正面からまともに戦える。
そして目的の彼女たちのテントが見えた。彼女たちは5人とも同じテントで寝ている。そこを一気に叩き潰す!!
「《つなげろコネクト》《収めろキャビネット》」
まず『連結の聖剣』で『収納の聖剣』の刃と彼らのテントが接触するようにつなげる。そして本来刃に当たったものしか収納できない力を発動させる。
この2つの聖剣の力で300メートル離れた位置にあるテントを聖剣の所有する異空間に収納することに成功した。
本来なら中にいる5人も収納するはずだが、そうはならなかった。なぜならブラウンが魔法を使い邪魔をしたからだ。ほかの4人は眠そうに目をこすっているがブラウンは違うようだ。
いや、そう見えただけで実際は分からない。なぜなら全員、仮面をつけたままだからだ。………寝てる時ぐらい外せよ!!と言いたいがもしかしたら今月はコスプレ強化月間なのかもしれない。時々本当にあるからこのギルドは油断できないんだよな。男女逆転月間なんて言うのもあったし。
(ドプッ)
「おあっ!?」
気が付くと膝までが沼に埋まっていた。この距離で届くとはさすがだな。と思いつつ『連結の聖剣』を発動。沼の効果範囲を彼女たちとつなげる。
それを理解したブラウンが魔法を解く。その瞬間にブラウンの頭を蹴る。予想以上の聖剣の使い勝手の良さに驚きながら、これができるのは僕がちゃんと何と何をつなげたいのか理解しているからだと考える。
そして次の手を打とうとした瞬間引っ張られる。
それがイエローの持つ『磁力の聖剣』の力だと気づき、その力である《仮想磁力》を《滅ぼす》。そして『増殖の聖剣』で………
(グニャッ!!)
「くっ!?」
世界が歪んだ。300メートル離れていたのに今は目の前にいる。
(ドンッ!!)
リーダーの聖剣と僕の聖剣がぶつかる。その余波で周りがいくらか吹き飛ぶ。
「夜襲とはやってくれるね透。これでお肌が荒れたらどうしてくれるのかな?」
「その時は肌荒れを直す魔道具でも作りますよ」
「それじゃあ作れる程度にボコそうか!!」
その瞬間、僕のほうが押し負けていく。本来なら一瞬で終わるがまだ全力が出せるわけではないらしい。それならば
「そう簡単に負けませんよ《引き寄せて弾けマグネット》」
「なに!?」
左手を聖剣から離しその手に『磁力の聖剣』を作り、その力で彼女を引き離す。
「えっ!?先輩どうして僕の聖剣を持っているんですか!!その剣はいま僕の手にあるのに!!」
驚いてくれてうれしいな。それじゃあ種明かしをしようか。