白(完全版)の実力の一端
僕が剣を召喚したにもかかわらず、何の警戒もせずに僕を石にしようとしている。
「いまさら何をしようが無駄だ。この光で石になるんだからな。《固めろバジリスク》!!」
「それはどうかな?《滅ぼせワールドエンド》」
僕は召喚した剣の力を使い、石化の光を切りつけた。
「なにっ!?」
「ほらね、石にならなかったでしょ」
「そんなはずはない。今のは何かの間違いだ。もう一度くらえ!!《固めろバジリスク》!!」
「何度やっても変わらないよ」
さきほどと同じように光を切ってから影縫を見るとおびえているように見える。そういう態度は結構傷つくんだけどな。
「な、なんなんだその剣はいったい!?」
「この剣はね………」
side 名伏
「いつの間にこんなところに!?」
どうやら透の奴が俺たち全員を会場から逃がしたみたいだな。しかもあいつにとってある意味大事な奴は一カ所に集めて守っているのか。丁寧に結界を張ってここから出られないようにもしてやがる。
正直に言うと今回のことはある程度予測できていた事件ではあった。透が記憶を失ったと知ってからどうにも腑に落ちないことがあったので魔法をかけたアイツに聞いてみたら、記憶を封じたのはごく一部だと答えられそこから魔法を改変されたらしいということがわかった。そのうえである程度対処はできるようにして泳がせていたんだが、今回のことが吉と出るか凶と出るかはまだわからない。
「名伏さんあなたに聞きたいことがあります」
「なんだよ黒羽のお嬢ちゃん」
「今は軽口に付き合う気はありません。雪白君について教えてください」
まあ気になるよな。だがどこまで答えていいものか、今ここには一高の関係者に勇者の仲間、聖剣使い、そして黒羽 徳治がいる。徳治のじいさんはともかく勇者に聞かせるのはまずいか?
「そんなことをあなたが知る必要はありません」
「なぜそんなことを言えるの?そもそもあなたは誰なの?」
「私の名前は夢見 悠です。彼と同じギルドに所属している人間の1人です」
おいおい、悠の奴ずいぶんと機嫌が悪そうだな。普通なら『あなたが知ったところでどうなるというんですか?しかもその人のいないところで個人情報を知ろうだなんて恥ずかしいと思わないんですか?』ぐらいは言うのにな。まあ3年近くも会えなくてようやく会えたのがこんな状況じゃあイラつきもするか。
「いいですか、ここに私たちが送られたのは彼にとって邪魔になるからです」
「それと私が雪白君のことを聞くのに何の関係があるのよ」
「彼の邪魔になるというのはですね、これから彼がやろうとしていることを見られるだけでもダメだということです。そんな人が彼のことを知るなんて本末転倒というものです」
「そんなっ!?」
「まってくれ夢見さん。僕は聖剣を持っているんだ。彼の力になれるはずだから行かせてほしい」
「馬鹿ですかあなたは。あなたこそ行かせるわけにはいきません」
「ちょっとあんた仁に何を言うのよ!!」
「そうです、仁さんは彼の力になろうと善意から言ったのですよ」
「仁君は馬鹿じゃない」
悠のやつ総攻撃を受けてるな。この場合悠の忍耐力をほめるべきか、これほど愛されている勇者をほめるべきか。というより誰か生徒会の奴らを回復させるの手伝ってくれないかな。校長と鉄壁は手伝えないから申し訳なさそうにこっちを見ているが他の奴は気づいてすら………おっ、土屋が気付いたな。よしよしこっちに来い。茶色の活性で手伝ってくれ。
そんな感じで生徒会を回復している間にも勇者の取り巻きの文句は続いているが爺さんが動きそうだから放っといていいな。
「夢見君、私からも質問させてもらっていいかな?」
「どうぞ」
「君たちは今回の事件の結末はどうなると思っているのかね?」
「私の個人的な予想では影縫は破壊、それからはアリスト王国に聖剣と魔道具が流出したことに関する問い合わせ。流出が発覚した場合には情報を知らせなかったことでなんらかの補償を求めるというものだと思います」
「雪白君だけで倒せるかな?」
「もちろんです。彼が何者かあなたは知っているでしょう?」
「そうだな。しかし彼のことを知らないここにいる人たちが安心できるように何者かだけは教えてもいいのではないかな?」
さすがに上手いな。結局教えたくなかった透のことを教えないといけなくなったわけだ。
「………そうですね、何者かだけなら教えましょうか。彼は、雪白 透は聖剣の使い手です」