白の全力(準備中)
今の状況を整理しよう。闘技場全体に結界が張られているために脱出はしにくい。また聖剣の力を封じる魔道具により聖剣を使うこともできない。しかしその魔道具の力を受けずに聖剣を使う方法はある。
そうなると手っ取り早いのは影縫が使っている聖剣を解析することなんだろうけど、さきほどから魔道具が使いにくい。そのことから聖剣を封じる魔道具の能力は魔道具を使いにくくするというものだと考える。それを聖剣に対する力を強く調整したものだろう。だから聖剣は使えないし魔道具も使いにくくなっているのだろう。
ならば
「影縫、君はどんな記憶を持っているんだい?」
会話による時間稼ぎで解析を進める。
「うるせえって言ってんだろ」
「しょうがないだろう、どうしても気になるんだから。君が僕の言う通りの存在ならかなりの実力があるはずなんだよ。それにこういうことはどうしてもはっきりさせたい性格だからね」
「かなりの実力も何も俺は聖剣を使えるんだぜ。これ以上の力なんてないだろ」
「いやいや、そんなことはないよ。なんといってもあの時僕が作ったのは聖剣に対抗できる魔道具だったからね。聖剣を使うまでもなく強かったのに今の君からはそこまでの力を感じないんだよ。君は聖剣を使っているのにもかかわらずね」
「お前は聖剣を作ったというのか!?」
「聖剣を作ろうとするなんて時間の無駄だろ。あれは素材と精製方法がかなり面倒だからね。まあそうじゃないと聖剣なんて言われて魔道具と別の分類をされることはなかっただろうけど」
「ずいぶんと聖剣に詳しいみたいだな。お前は生かして連れて帰ったほうがよさそうだな」
話が終わりそうだな。もう少し時間を稼ぐ必要がある。そうだこの話をしてみよう。
「ところでさ、君はどうして僕を操ろうとしたんだい?」
「そんなのはお前に記憶を封印する魔法がかかってたからだよ」
「それだけで僕を選んだの?」
「ああそうだよ」
「それはおかしいねえ」
「なにがおかしいんだ」
「いくら操りやすいと言っても僕はかなり弱かったんだよ。そんな僕を操るより君が一人でやったほうがましなんじゃあないかい?」
「それは………」
「君はどうしてそんな当たり前のことを考えず、僕を手駒にしたのか。もしかしてどこかで知っていたんじゃないかい?僕がいったいなにをできるのか」
「そんなはずはねえ!!俺は、俺はお前のことなんて知らねえ知るはずがねえんだ!!」
彼が叫ぶとその手にある聖剣が灰色の光を発した。その光が当たったところはどうやら石になったようだ。
「そうだ全部石になっちまえ………あ?ほかの奴らはどこだ?」
しまった気づかれたか。
「おい雪白、ここにいた奴らはどこに行ったんだ。この結界から抜け出す方法はないはずなのにどうなってるんだ!?」
「抜け出す方法がないっていうのは言いすぎだろう。名伏や悠みたいに結界に入る手段があるんだから、出ることだってさほど難しいことじゃあないよ」
何とか全員を逃がすだけの時間は稼げたし、聖剣の解析も終わったからそろそろこいつを黙らそうかな。
「よくも俺の邪魔をしてくれたな!!こうなったらお前を石にした後にほかの連中を石にしてやる!!」
「そんなことはできないよ。君はここで僕に負ける、それが今回の結末だ」
「聖剣を使える俺に白髪のお前が勝てるはずがないだろう!!」
「それじゃあ僕も聖剣を使おうかな」
「なに?」
「おいで『ワールドエンド』」
これが僕の切り札だ。さあ彼の物語を終わらせよう。