白の復活 影の事実
目を覚ましたのはいいけれど、どうして僕は横に倒れているんだろうか。とりあえずこのままでいたくはないので立ち上がると周りの人が奇妙なものを見るような目で僕を見ていることに気付いた。しかもよく周りを見てみると僕の記憶の場所から離れていて、僕がいたはずの場所は地面がえぐれていた。なるほどこれで分かったぞ。
「悠、僕に魔法をぶつけたな?」
「気のせいです」
即答された。しかし今この場では彼女ぐらいしか僕に魔法をぶつけてくる人はいないし、魔法が当たって吹き飛ばされたという予想も外れてはいないと思う。だって体がなぜか痛いし。
「おいテメエら俺を無視してんじゃねえよ!!」
なぜか影縫が怒ってる。そんなに怒りやすいのはどうなのだろうかと思うんだけど。
「雪白、お前が俺の邪魔をするのかどうかさっさと答えろ!!」
ああなるほど、僕がいつの間にか質問されててそれに答えなかったから怒ってるのか。それじゃあ答えを返して安心させてあげようか。
「黒羽一族を殺さないなら僕は邪魔をするつもりはないよ」
「なに?」
「雪白君なにを言ってるの!?」
あれ?ちゃんとした答えを返したはずなのに影縫は呆けているし黒羽は怒っている。勇者のほうを少し見てみると影縫に聖剣を向けて戦おうとしていた。
「雪白君!!君は何を言っているのかわかっているのか!!」
「うるさいなあ、わかってるに決まってるだろ。というかお前が僕の名前を呼ぶんじゃあないよ。気分が悪くなるだろう」
「なっ!?」
「透、今回はあなたの失態でこんなことになっているのに何もしないつもりなの?」
「そうだけど?僕は黒羽一族が殺されなければ後はどうでもいいってこと知っているでしょ」
まったく、僕のことをよく知っているのにどうしてそんなことを言うのかな。
「おい雪白、黒羽を殺さなければお前は邪魔しないんだな?」
「そうだよ。さっきからそう言っているじゃあないか」
「本当に止める気はないのですか?」
「そうだよ」
「それじゃあひねくれている役立たずな透君にお知らせです。ギルドマスターからの強制依頼書があります。こんなこともあるかもしれないとあの人が持たせてくれました」
「なんだよ、なら僕に聞く必要はなかったのに」
「ひねくれているあなたがまっとうな性格にならないかと期待していたんです。それなのにあなたときたら余計ひねくれているんじゃないですか?」
「失礼なことを言うね。僕はいつでも自分に正直だよ」
「はいはいわかりましたよ。とりあえず依頼ははたしてくださいね」
意外と彼女は僕のことを理解していないんだろうか?それを置いておくにしても、あの人からの依頼があるなら断ることはできないしな。
「というわけだから、僕は君を止めないといけなくなった」
「なんだよ、結局は邪魔すんのか。まあいいお前が俺に勝てるとは思えないからな」
「本当にそう思っているのかな?君の親といっても過言ではない僕にそんなことを言ってもいいのかな?」
「お前はいったい何を言ってるんだ」
あれ、もしかして僕のことを覚えていないのかな?
「旧日本の自動人形だった君を魔道具に作り直したのがだれか忘れたのかい?」
「何を言っている。俺は生まれながらに強大な力を手に入れた人間だぞ」
「君こそ何を言っているのやら、普通の検査ならごまかすこともできるけどきちんと調べれば君が人間じゃあないことはすぐわかるだろうに。君の組織はそんなことも調べられないのか?」
「俺が魔道具だと?そんなはずはない。俺は特別な人間なんだ」
いったい彼はどうしたというのだろうか。自分のことを忘れて人間だと思うなんて、僕はそんな不良品を作った覚えはないのに。
「いいかい君はね」
「うるせえ!!もういいうんざりだ。テメエらまとめて俺が殺してやるよ!!見ろこれが俺の力だ!!」
そういうと彼の手に剣が現れた。
「これが俺の力『石化の聖剣・バジリスク』だ!!」
「なぜあなたがそれを持っているのですか!?それはアリスト王国の宝物庫にあるはずなのに」
「そりゃあ盗まれたからでしょ。そもそも今は影縫と名乗ってるアレだってアリスト王国にあげたものだしね」
しかし国の宝物庫から盗めるとは案外彼を使っているのはすごい組織なのかな。
「それよりさ、ここには聖剣が使えなくなる結界があるのにそんなのを出してどうする気だい?」
「馬鹿かテメエ、この聖剣には結界の影響を受けないように手を加えられてるんだよ。自分で使った魔道具の対処法なんてあって当然だろ」
それはいいことを聞いた。そういうことなら僕も全力を出すことができそうだ。