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一番目から五番目の白まで

この話から基本視点が雪白 透に戻ります。

 ここはいったいどこでしょうか、早くマスターの命を実行しなければいけないのに。

 いま僕はあたり一面が暗くて静かなところにいた。さきほどマスターに女を1人殺すように言われたのに、このままでは出来そうもない。そんなことはあってはならないのでとにかくこの場所について調べようとしたところで気づく。この場所から動けそうにない。いや、体を動かすことはできるけど無重力空間にいるかのように、足で踏む場も手でつかむ場所もない。これは困った、どうすればいいのだろうか。


「ずいぶんと困ってるみたいだね」


 とりあえず体をむやみやたらと動かしていると、どこからか楽しんでいるような声で話しかけられた。人がいるのならちょうどいい、いろいろと聞いてみよう。


「誰ですか?」


「君がだれよりも知っている人だよ」


 まともに答える気はないのだろうか?まあそれならそれで構わないから質問を続けよう。


「ここはどこですか?」


「君がだれよりも知っているところだよ」


「僕はどうしてここにいるんでしょうか?」


「君がここに来る必要があったからだよ」


「僕はマスターに必要とされるだけです」


「今の君はそうみたいだね。今度は僕から質問をしてもいいかな?」


 まともな答えを返されてはいないけど、僕だけが一方的に質問をして相手の質問に答えないのは失礼なのでとりあえず頷いておこう。


「許可がもらえたから質問をさせてもらうね。君にとって一番大切な人は誰だい?」


「僕にとって一番大切な人はマスターです」


「君にとってこの場所はどう思う?」


「僕にとってこの場所は早く抜け出したい場所です」


「それはいったいどうしてだい?」


「早くマスターの命を実行しなければいけないからです」


 そう、マスターの命を実行しなければいけない。なのに僕はどうしてこの姿の見えない人と長々と話をしているのだろうか。


「確かにおかしいね。どうして君はマスターの命よりも僕との会話を優先しているんだろうね?」


「それは、なぜでしょう」


「嘘はいけないよ。君はその理由をわかっているだろう?」


「わかりませんよそんなもの。わかるはずがないでしょう」


「へえ、そんな理由はないんじゃなくてわからないんだね」


「!!」


 たしかにそうだ、なぜそんな理由はないと言わなかったんだ。どうして僕は理由があると考えたんだ!?


「そんなの君は答えがわかっているからだろう?」


「僕は答えなんて知らない!!」


「君は目をそらしているだけだろう?」


「僕が何から目をそらしているというんだ!!」


「君自身からだよ。ほらこれを渡しておくから見た後にどうするかを決めればいいよ。僕は先に行ってるからね」


 そう言うと僕の手には本が置かれ彼の気配はなくなった。この本を読めば僕の知りたいことがわかるのだろうか。どこか懐かしい気配を感じながらページを開いた。






 最初は愛された子供だった。父親に母親に一族に愛された子供だった。そんな子供だったから愛された分だけ愛していった。幸せな生活だった。

 でもその生活は4年で終わった。子供の前で一族も母親も父親も生まれて2年の妹も殺された。それで愛された子供の話は終わった。


次は優しさを受け続けた子供だった。周りの人は皆優しく、子供は何もしなくてよかった。子供が何もしなくても周りが何でもしてくれた。周りが子供に言う言葉は「白髪の君は何もできないんだから私たちが全部やってあげるからね」だった。

 そう言われ続けて2年、それでその生活は終わった。


 三番目の子供は復讐にすべてを費やした子供だった。復讐するために力を求め、魔物狩りの1人に弟子入りした。子供が弟子入りした人はめちゃくちゃな人で弱い子供は死にかけることもよくあったけれど、なんだかんだで優しかった師匠に助けられて成長していった。

 師匠との生活は6年続いた。その6年でたくさんの仲間ができた。そして子供の復讐も半分が済んだ。それでとりあえず子供は満足した。


 四番目の子供は記憶を少し封印されながら学校に通う普通の子供だった。友達を作り、勉強に励み運動もする。戦いで勝つことは少なかったけれど、そんな生活を子供は楽しんでいた。

 その生活は三年と少しで終わった。最後までそれなりに楽しんでいた子供だった。


 五番目の子供は人に従う子供だった。それまでの子供と違って自分よりも大切な人がいる子供だった。たとえその大切な人がまがい物でも構わないほど壊れた子供でもあった。

 その子供は生まれて半年もたっていないけど、納得してその生活を終えた。






「やれやれ、ずいぶんと久しぶりに全部がそろっているね。普通の人はそもそも自分が欠けたり増えたりしないんだけどなぁ。まあそれも僕らしいってことにして、僕を始めるとしようか」


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