波乱の決勝戦 聖剣対策
「それではこれより、第57回高校選抜魔法大会決勝戦。国立第一魔法学校対国立第二魔法学校の団体戦を開始しますっ!!」
「勝たせてもらうわよ、勇者さん」
「僕たちもいい試合ができるように頑張ります」
都さんと仁が互いに挨拶を交わしている。この試合で仁が個人戦に参加できないほどのダメージを与えればおそらく優勝できるだろう。問題は影縫がどこまでできるかだけど。
「では両者ともに位置についたので試合……開始っ!!」
(ドーン!!)
「みんな、まずは僕が突っ込んでいくからフォローをお願い」
「まかせなさい」
「わかりました」
「影縫君、君はどうするの?」
「俺か?こうするんだよ」
その言葉が放たれたのと同時に、戦況は劇的に変化した。
「きゃあっ!!」
「ガハッ!!」
私の目に映ったのは影縫に攻撃され吹き飛んだ、都さんたちの姿だった。
「おおーと、これは一高仲間割れか!?この決勝戦でこのようなことが起こるとはだれも予想していないだろうーー!!」
「仲間割れ?そんなんじゃねえよ計画通りさ《結界》」
「な、なんだー!?このコロシアムの周りが結界でおおわれていく!!こんなことは予定になかったぞ!?」
「そこの君!!これはいったいどういうことなんだ!!」
「なんだよ勇者様、もう少し落ち着こうぜ。この計画はあんたのためにもなるんだからよ」
「どういうことだ!!」
「今この結界の中にはこの国の主要人物たちがいる。それを皆殺しにするんだよ」
それが目的だったのか。こんなことができているということはそれなりに勝算があるのだろうけど、本当にできるつもりなのだろうか。
「なっ!?そんなことは」
「させないなんて言うなよ?お前だって黒羽一族や五家のことを嫌ってるんだろ。その手伝いをしてやるって言ってんだよ」
「それは………」
「そのようなことはさせるわけにはいかないね」
「はっ、鉄壁の持ち主か。おまえとほかの2人の聖剣使いも殺してやるから楽しみにしとけよ」
「君は4人もの聖剣使いを相手にして勝てる気なのかい?」
そう言うと彼は、いや残りの2人も闘技場の結界をすり抜けて入って行った。これであそこにいる聖剣使いは4人、仁が影縫と手を組んでも勝ち目はあるだろう。だけど、そんな状況でも影縫はその笑みを消していない。
「その質問に答えるにはまだ役者がそろってねえな。さっさと来いよ!!」
「はい、マスター」
「その子も一高の生徒みたいだけど、それでどうなるものじゃないよ」
「そいつはどうかな。その認識は甘いとしか言えねえよ」
彼の呼びかけに応じたのは雪白君だった。どうして彼があそこに!?
「ほら、雪白。テメエに武器を貸してやるよ」
「ありがとうございます、マスター」
「あなたたち、その剣はいったい!?」
「さすがに聖剣使いにはわかるもんだな。これは俺たちが聖剣を作る過程で生まれた失敗作だよ。強大な力がある代わりに代償もでかい。まともな奴なら使わないもんだよ」
「その剣をどうしてその少年は使おうとしているのかな?」
「そりゃあ簡単だ。今のこいつは俺の言うことを聞く人形だからだよ。もともと仕組まれていた記憶を封印する魔法に干渉して、魔法に関する知識を全て封印することで俺の魔法に抵抗できなくさせて洗脳したんだよ」
「そんなことを雪白君にしたのか!!」
私は気づけば観客席の一番前で影縫に対して怒鳴っていた。
「そういえばお前はこいつと同じクラブの一員だったか。だがよう、こいつのことを何もわかってないよな」
「なにをいっているの!!雪白君を解放しなさい」
「うるせえなあ。雪白、それを使ってあいつを殺してこい」
「了解しましたマスター」
「そんなことはさせません。グレートウォールその力を解放しなさい」
「それこそさせねえよ。『聖剣封印具』」
鉄壁の聖剣が力を使おうとしたその一瞬に影縫は魔道具を使い聖剣を抑え込んだ。
「なにっ!?」
「これも聖剣を作る過程で生まれたもんだよ。これでお前らの力も半減だろ。ほら雪白さっさとやっちまいな」
「はいマスっ!?」
(ガンッ!!)
「そんなことはさせません、たとえ聖剣の力がつかえなくても生徒を無力化するくらいはできます」
「聖剣の柄で殴ったのか。だけどそんなんじゃ止まらないぜ」
その通りだった。雪白君は普通なら気を失うほどの一撃を受けたのにすぐに立ち上がっていた。
「わかったろ。そいつは殺しても止まらない。言っておくが俺をどうこうしようっても無駄だぜ」
「そんなっ!?」
「これは少々まずいですね」
あいつの言うことが本当ならもうこの状況は詰んでいる。私は雪白君を助けられないの?
私があきらめかけたその時、隣に現れた人たちがいた。
「残念だけどお前の計画は失敗だぜ」
「誰だっ!!」
「おいおい、学校でよくあってた俺のことを忘れたのか?」
「お前は名伏か」
「さんをつけろよ。年上は敬うもんだぜ」
「はっ、俺より弱い奴のことなんてどうでもいいんだよ。そんなことより、俺の計画が失敗するだと?お前ごときに止められると思ってんのか」
「あなたの計画を止めるのは私たちじゃない。そこでバカみたいに操られている人。それでも一応は私たちの仲間だから、自分の失態は自分で何とかしてもらう」
「こいつが俺を止めるなんてできるわけねえだろ女っ。どうやってこいつが俺の邪魔をできるっていうんだ、ああっ?」
「こうするの《記憶はありのままに蘇る》」
名伏さんと一緒に現れた彼女がそう言うと雪白君が白い光に包まれた。
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