一高VS三高 圧倒的な勝利
ついに最初の試合が始まろうとしている。雪白君から聞いた情報では生徒会の人たちが負けるとは思わないけれど、この試合が長引けばそれだけ五高の参加者に情報を与えることになる。どれだけ手の内を見せずに勝てるかが今回の課題でしょう。
「では一高と三高の団体戦を開始します!!双方位置についてください」
こちらが5人であるのに対し相手は6人、数の不利を気にせず戦えるのか。私たちは見ているしかない。
「試合開始!!」
(ドーン!!)
試合開始の銅鑼が鳴ると同時に副会長の速水さんが相手を3人引き離し、4対3と1対3の状況を作り出した。速水さんが雅さんたちが勝つまで負けなければ有利になれるがあの人はそこまで強いのだろうか。
「風よ敵を捕らえる縛鎖となれ《風の戒め》」
「こんな魔法で俺たち3人を捕らえられると思ってんのか!?炎よわが敵を………」
「風よそこに無を作り出せ《風隠し》」
速水さんがその魔法を唱えた瞬間に相手の3人は倒れた。おそらく今の魔法は真空に近い状況を相手の口の周りに作り出し気絶させたのだろう。むかし瞬ちゃんが似たようなことをしたことがあるから予測がついたけれど、三高の選手からしてみれば何をされたかわからないだろう。
しかしまさか1対3であっさり勝利するとは思わなかった。そのあとは5対3の人数差を利用しあっさり勝っていた。
そして次は個人戦が始まるが、あのやけに偉そうな影縫がどれだけやれるのか見せてもらうわ。
「ではこれより一高選手、影縫 始。三高選手、宮城 翔の試合を開始します!!」
(ドーン!!)
開始の銅鑼が鳴り、三高の選手は様子を見ようとしている。影縫はというと右手を相手に向けて………
(ドガッ!!)
「ガハッ!!」
何が起こったの!?気づいたら相手は吹き飛び壁に当たって気絶していた。あまりの試合に審判も茫然としていたがすぐに意識の確認を行い、きっぜつしていることを確認した後、影縫の勝利を宣言した。
「みんな、いま何が起きたかわかった?」
「彼は緑髪ですから空気をぶつけたのだと思いますが、全く見えませんでした」
「瞬ちゃんにもわからないなんてかなりの腕ですねー」
「少なくとも口だけの奴じゃあないみたいだな」
これで一高は2勝したために3回戦はなくなったので、私たちは急いで宿に帰った。今の時点で仁に会うのはできるだけ避けておきたいのだ。そのために仁の対策を雪白君に押し付けたのは若干罪悪感があるけれど、この大会が終わったら謝るのでそれで許してもらうとしよう。
「いやはや、アレは化け物だねえ」
それが試合を見てきた雪白君の第一声だった。
「何か付け入るスキはありそう?」
「それがさあ、団体戦も個人戦もどちらにも出て、しかもどちらも瞬殺だったから全然わからないんだよ」
「そうか、黒羽は彼の癖などを知らないか?」
「すみません速水さん。私もそういうのは知らないんです」
「僕として1つだけ考えはあるんですけれど、それは決勝戦の時に話させてください」
「そうね、兎にも角にも五高に勝てないと決勝も何もないからね」
「ええ会長、あいつがへましない限り負ける気はしませんよ」
「そういうことは言わないの。いちおう私たちの仲間なんだから」
「………わかりました」
このとき私たちは何もわかっていなかった。これから何が起ころうとしているのかを。勇者を隠れ蓑にどのような悪意が渦巻いているのかを。私は知ろうとしなかった。