色々の憂鬱
「みんな遅れてごめ………何この空気」
紅と話し続けた次の日。織羽先生に雑用を頼まれたためにクラブに行くのが遅れた僕が見たのは、大切な人がなくなったかのように沈んでいる4人の姿だった。
黒羽が何やら気分が沈んでいるのはクラスが同じだから知っていた。だがほかの3人もそうだとは、しかも紅に関しては昨日が普通だったためにより驚かされる。
「いったいどうしたのさみんな」
「ああ、雪白君来ていたのね」
「そんなこと今気づいたの!?」
「ええ、私たちはいま人生の中でも最悪と言っていいほどの状況にいるの。この先によっては雪白君にみんなで襲って既成事実を作るかもしれないけれど、その時はよろしくお願いね」
いったい何があればそんなことをしなければいけなくなるのか見当もつかない。あまりの事態に茫然として突っ込みを忘れてしまった。
このまま流されると僕の常識人ポジションが獲物男子ポジションにジョブチェンジしてしまう。それは避けなくては。
「いやいや落ち着こうよ。まずはどうしてそんなことになるか説明してみなよ。何か手伝えるかもしれないからさ」
「そうね、とりあえず説明しておくと仁のことなの」
仁?たしか黒羽のいとこの名前だがそれと何の関係が?
というかほかの3人が何も言わないのが少し怖いんだけど。
「雪白君は聖剣のことを知ってる?」
「聖剣と言ったら魔道具の中でもかなりの力を持った件につけられる名前だっけ?魔道具について調べると一番最初に出てきたから覚えたんだけど」
1月以上たった今でも記憶が戻る気配はないので、魔法や魔道具について基礎的なことは覚えようとしているのだ。
「そうよ。詳しく言うなら聖剣のほとんどは世界が変わってから見つかったものが多く、その数もかなり少ないものよ。また持ち主を選ぶ魔道具でもあるわ」
「その聖剣と仁君が関係しているということなのかな?」
「ええ、この国にある聖剣は全部で2本。『勇者の聖剣・カリバーン』『鉄壁の聖剣・グレートウォール』、このうち『勇者の聖剣・カリバーン』の持ち主に仁が選ばれたのよ」
「へえ、それはすごいじゃあないか」
「「「「全然すごくない(ねえ)!!」」」」
「うわぁ!!」
びっくりした。死んでいるかのように動かなかった3人がいきなり黒羽とっしょに大声をあげてきた。
「いいか雪白、あいつは大きな力を持たないほうがいい奴なんだよ!!」
「奈々さんの言う通りです。彼はある意味かなりの危険人物なんですよ!!」
「そうですよ!!そもそもそういう人だから私たちの気がめいっているんです!!」
すごい怒りようだった。紅なんて普段の間延びした話し方がなくなるほどに怒っている。
しかし、彼はそんなに危険な人間なのだろうか。病院であったときはそんな気はしなかったのだが。
「3人とも落ち着きなさい。今からアレのことを説明するから」
いまいとこをアレって言ったぞ。
「それじゃあ雪白君いまから言うことをしっかり聞いてね」
黒羽は満面の笑顔で笑っていない目で僕を見てそう言った。