白と赤のとりとめない話
校内予選が終わってから1週間がたった。代表選手に選ばれた生徒会の人たちは名伏さんにしごかれていた。どうやら彼は多くの魔道具を状況に合わせて使う戦闘スタイルであり、土屋が言うには僕もそうやって戦っていたらしい。
そして僕はというと紅と2人で部室でのんびりとしていた。
「それにしても、雪白君と2人で話すことってあんまりないですねー」
「そういえばそうだね、僕は普段風宮や土屋と話してることが多いしね」
「わたしも蓮ちゃんや瞬ちゃんと話すことが多いですからねー」
「それにしても彼らも大変そうだね。家から強制召集があるなんてさ」
「そうですねー、そういう意味では私は『紅』であるけれど、最初に生まれた子ではないので楽でいいですよー」
なぜ僕たちが2人で部室にいるかといえば残りの3人はみな家から召集され今日は学校に来ていないのだ。なんでも彼女たちは次期当主になる予定らしくそういう立場もあって何か大事なことがあれば必ずよばれるらしい。
紅は兄と姉がいるらしく呼ばれなかったために学校に来ているのだ。
「しかし、こういうふうに2人きりというのは珍しいので-、私たちの中を深めるためにいろんな話をしませんかー?」
「いろんな話といっても僕の記憶は全然戻ってないからね。あまり僕については話せないよ?」
「それじゃあー、このクラブのみんなについてどう思っているのか聞かせてくださいー」
このクラブのみんなか、そうだな………。
「まずは蓮ちゃんについてどう思っているか聞かせてくださいー」
「そうだね、黒羽は周りの人をよくみているよね。そうやって雰囲気をよくしていきつつ、人をからかうときも一線を見極めてやっているからみんな笑って済ませるんだよね」
「たしかにそうですねー、蓮ちゃんは人が本当に嫌がることはそうそうやりませんからー。では瞬ちゃんはどうですかー?」
「風宮はかなりいい奴だと思っているかな。黒羽とは別の意味でよく気が付くし、人の相談にも乗れるやつだしね。もしも女性だったら惚れていたに違いないね」
「瞬ちゃんは女性から見ても素晴らしい人ですからねー。もしも誰かと付き合うと言われたらその相手をよく調べておきませんとー」
「いやいや、それはやりすぎだろう。もし相手が何とも言えない人でも選んだのは風宮なんだから、笑っておめでとうと言ってあげようよ」
「雪白君は厳しいですねー。では最後に奈々ちゃんはどうですかー?」
「マスコット」
「即答ですかー!!」
「いや、だってそうだろう。どう考えたってマスコットでしょ」
「たしかに奈々ちゃんはとてもかわいらしいですけどー」
「そうだろう。そこで僕は考えていたんだけど依頼が来るように土屋にランドセルを背負わせて写真を撮って宣伝するのはどうだろうか?」
「なにか犯罪のにおいがしますねー」
「やっぱりそうなるか。まあ真面目に答えると仲間を思いやれるいい奴だと思うよ。若干戦闘好きなのが残念だけど」
「戦闘好きというより暴れるのが好きなんですけどねー。それにしても今日は雪白君とたくさん話せてよかったですー」
「僕としてもこのクラブで唯一といっていい癒し系の紅とこんなに話せてよかったよ」
「あららー、そんなふうに言われると照れちゃいますねー」
「そう言われると、もっと照れるようなことを言いたくなるね」
「雪白君はひどい人ですねー。そうやってわたしを照れ殺す気ですねー」
「照れ殺す!?なにそれ、褒め殺すの親戚かい」
「照れ殺すというのは、むかしテレーさんという人が………」
その日はそうやってとりとめない話を続けて言ったのだった。