六日目………収録前のあれこれ(友人)
「こんなにラジオの収録場所って大きいんだね………」
「そりゃあ魔物や魔法使いに襲われてもどうにかなるようにある程度の防御設備を組み込んでいるからな。どうしてもそれなりに大きく作らなきゃいけないのさ」
なるほど。よく考えてみれば災害などが起こった時にラジオが放送できなかったら情報の伝達とかもしにくいからそう簡単につぶれないようになっているのか。
しかしそうと分かっていても僕のような一般市民にはこの大きな建物に入るのはそれなりの度胸と勇気がいるんだけど。
「ああー、それは俺も思ってるよ。俺なんていまだに慣れないからな」
「やっぱりどこまで行っても僕らは一般市民なのかねえ」
「そういうことだろ」
そんなことを言って笑いあいながら僕らは建物の中に入って行った。
「素人遅いわよ!!」
「遅いって10分前だろう?」
「私が来たのは今から10分前よ」
「なんで20分前行動してるのさ!?」
圭介に案内されてたどり着いた部屋に入ってすぐに水樹さんと楽しそうに会話をする圭介に殺意を覚えながら周りを確認する。
部屋の中は2分割してあり互いの部屋が見えるようにガラス窓がある。片方の部屋に集中して機材らしきものがあることを考えるとラジオをする場所と編集する場所で分かれていると考えるべきだろうか。
そしてお願いだからこんなところで放っておかないでほしい。スタッフだと思われる人たちがあの人は誰だ?って目で見てるから。
「ところでそちらの人は前にあった雪白君よね」
「あ、はいそうです。どうもお久しぶりです」
「あの時はいろいろ世話になりました」
「いえいえ僕の方こそ圭介の面白いとこを見せてもらいましたから」
「いえいえこちらこそ」
「いえいえ」
「なにを言いあってるんだよ!!」
『さすが圭介(素人)良いツッコミだね』
「そんなところで息を合わせないでくれよ!?」
さすが圭介、僕と水樹さんがうっかり息を合わせてしまうほどのツッコミだ。
「ここにいるってことは素人が呼んだのかしら?」
「そうだけど。何かまずかった?」
「いや、まずいとかじゃなくてあんたラジオのやり方とか教えたんでしょうね?」
「………さあ今日もラジオ頑張ろうか」
「言ってないのね。雪白君はラジオについて知ってるの?」
「いえ、全くの素人です。なのでほどほどに場の空気を呼んで対処しようかと」
それくらいしかできることはないだろうしね。まさか素人にいきなり全力で会話しろなんて言うはずもないだろうし。
「素人、あんたねえ………」
「思ってないよ。別に俺が経験したことをそのまま経験させてやろうなんて考えてないよ」
えっ?なにこの空気。