冬休み初日………目標達成不可?(緑)
「いきなりですが透に頼みがあって」
「断る!!」
冬休み初日。僕の家に何の知らせもよこさずにやってきた瞬は僕がドアを開けた瞬間にそんなことを言ってきたのだった。
まあいやな予感がしたので言い切る前に断わったのだが。
僕の冬休みの目標は『のんびりだらだら平和に過ごす』なので今回ばかりは話を聞くことなく断るのが正しい。
そして断ったのだからドアを閉めるのは当然のこと。というわけですぐさまドアを閉めようとしたのだが………
「ふん!!」
「おいこら足をどけろ!!ドアが閉まらないだろうが!!」
「させません!!させませんよおおおお!!」
ドアが閉まらないように足を差し込んできた瞬の行動と彼の切羽詰まったような気迫に僕は必ず断るべきだという予感が強まった。
というわけで相手が体を張ってくるのならその張った体を壊すのが僕のやり方。なのでドアの隙間から『流星』を瞬の体に向け3発撃ち込む。
「うわっ!?何するんですか!?」
「シャラップ!!君の頼みを聞いて最近僕がどんな目に合ったかを知っているだろうが!!」
「しかしそれでも頼みを聞いてくれるのが透でしょう!!」
くそっ、体じゃなくて挟み込んでいる足を狙うべきだったか。ちなみにさっき撃ち込んだ『流星』の弾丸はこの家の敷地から出ることなく境界で消えるように設定してある。きちんと周辺の住民の皆さんに迷惑のかからないようにしているのだ。
しかしそんな配慮のできる僕に配慮をしてくれない瞬をどうやって帰らせるべきなのか。
「お願いします透!!もう君しか頼める人はいないんですよ!!」
………もうどうして僕はこんなにチョロイのかねえ?
「なるほど、話は分かった」
「そうですか!!」
話を聞き始めて早くも後悔した僕。なんといっても瞬が頼みたいということは………
「クリスマス・イブにデートをする予定でその時にプレゼントを渡したい。しかし何を渡せばいいのかわからない。だから僕にも考えてほしいってことなんだね」
「はい、そうです!!」
「ちなみに聞くけど、今日が何日か知ってるかい?」
「12月10日ですよね?」
「そう、つまり君は2週間も前から!!恋人のできたことのない僕に!!よりにもよってクリスマスに渡すプレゼントについて!!相談しに来たってことだよねえ!!」
「ええ、そうですね」
こ、こいつは………
「ふざけんなよ!?なんでそんなことをよりにもよって僕に頼むんだよ!!しかも2週間も前から彼女に渡すプレゼントを何にするかを考えるのを放置するっていうのはどういうことだ!!」
「だってもう2週間しかないんですよ!?今からだとアリスト王国へ行って特産品でもある宝石類やダンジョンの最深部にある宝物などを取りに行く余裕があまりないんですよ!?」
唖然
彼のことは結構知っていると思っていたんだけどまさか恋愛が絡むとここまで馬鹿になるとは。
早くも冬休みでの僕の平穏が崩れていくなあと思いながらボクは瞬に恋愛についての一般常識を(僕に彼女ができたことなど一度もないので体験のともなわない聞いただけの話だが)教えていくのだった。