力&摘出
「この寺はね、雪白一族の建物の中でも特別な役割を持っていてね。雪白の誰かが死にそうになったとき、その雪白が持っていた力を取り出し保管する場所なんだよ」
「持っていた力を取り出すというのはどういうことですか?」
「例えば僕で言うなら『自分自身』、意識を分割し、その意識を成長させていくのが持っていた力だね。雪白一族はそういう力を持っていたから聖剣になることができたんだよ」
透は雪白一族の力について語る。彼らは生まれついて白髪で生まれ、魔力が使えない代わりに魔法では再現しにくい力をもって生まれてくるらしい。また時折雪白一族の血縁ではないのに生まれながらの白髪と力をもって生まれる自然発生の雪白もいるらしい。
自然発生についてはまた別のところで話すとしてとにかく話を戻そう。
「で、だよ。彼の体にある『愛情の聖剣』は多くの雪白の力が1つに集まってできたものだからね。もしかしたらここを使って取り出せないかなと思ったわけなんだよ」
「………なるほどね。確かにそういうことならできるかもしれないわね。でもいまの『愛情の聖剣』は『勇者の聖剣』も混ざっているんでしょう。そんなある意味不純物が入っているのに上手くいくのかしら?」
「それについては問題はないと思う。すでに『愛情の聖剣』は『勇者の聖剣』を取り込んで自分のものとしているんだ。だから取り出すことの邪魔にはならない………はずだよ」
「最後まで自信をもってよ!?」
そんなことを言われてもここまで初めてのことが重なると断言できないのは仕方がないだろう。
まあ失敗したところでおかしくなるのは黒羽 仁なので透はためらうことなく実験するのだが。
「まあとにかくやってみればいいさ。失敗したとしてもそれで弱くなってくれたのなら悪いことじゃあないしね」
「さすが透ゲスいな」
「そういうところもまた良いですよねー」
「茜さん、一回病院に行きませんか?」
「なんで僕を貶すのさ!?」
敵に心配することなんて何もないだろう!?それなのにどうして僕がこんなに言われるんだ………。
「まあ透の人間性が低いことは後で話し合うにしてだ。聖剣を取り出すのにどれくらい時間がかかるのかは分かっているのか?」
「ディア、君までそんなことを言うのか………聖剣を取り出すのにはおそらく半日から一日ってところだと思うよ。ちなみにさっきから僕は準備をしているんだけどそれはもう少しで終わるから」
「随分と長いわね。その間敵が来た場合は足止めをすればいいのかしら?」
「そうだね。相手が彼の力で強化されているなら時間がたつごとに力を失くしていくから。ただ少なくとも4時間が経つ前に全員が襲ってきたらかなりまずいかもしれないけど頑張ってね」
「任せなさい!!」
そうして透と仁は光に包まれ消えていった。