雪白&聖剣
「僕が気付いたことはいくつかあったよ。例えば彼のオリジナル属性が魔法を無効かする系統であることや、彼らが急激に強くなったのはなぜなのかとかね。でもそれは分かったからといってすぐにどうにかできるものじゃないんだよ」
黒羽 仁たちが強くなった理由は分かってもそれをどうにかすることは今すぐにはできないと言う。
そしてその話をするよりも先に別の場所に移動しないかという透の提案を受けた蓮たちはいまだに意識の戻らない悠弥と縛られたままの仁を連れて魔道具を使い転移したのだった。
「それでここはどこなのだ?おそらく初めて来た場所だと思うのだが」
「ここは雪白一族が住んでいた場所だよ。すぐにはこの場所にいるってこともばれないだろうし、ついでにここでならできることもあるからね。………まあこの場所に黒羽 仁を連れてくることに何とも言えない感情が渦巻くけど今は仕方ないと割り切るさ」
霧に覆われた町といっても差し支えのない規模の場所。いくつかの家は壊れていたりするのだが、それでもまだ誰かが住んでいる気配がしそうな場所だった。
そんな町の中を透たちは歩いていき大きな寺の中へと入って行った。
「さてと、それじゃあどうしてこんなところに来たのか説明しようか」
「お願いします」
「まず彼らがどうやって強くなったのかについて話すよ。彼の体は『愛情の聖剣』と混ざり合っているというのは話したよね。どうもそれを利用したみたいなんだよ」
「どういうこと?」
「つまりだね体と混ざっている『愛情の聖剣』に『勇者の聖剣』を合成することによって彼と彼の従者の魔力を合計したうえでその魔力を使うことができるようになっているみたいなんだよ」
「そんなことが………」
「なかなかいいところに目を付けたとは思うよ。そうしたことで魔力だけじゃなく彼らのそれぞれ思っていた適性なんかも使えるみたいだしね。このままより多くの人を従者にした場合は完全な魔法使いってやつを作ることができたかもしれないね」
「それは素晴らしいな。しかし時間制限があるというのはどういうことなのだ?」
「『勇者の聖剣』の力で彼らの魔力は増幅されていくからね。増えすぎた魔力に耐えられなくなる前に魔力を下げなければいけないんだ」
彼らの魔力の増幅はもはや自分たちの意思でどうにかできるものではなくなっているらしい。
そのために魔力があふれる前に魔力をいったん全部無くさなければならず、そうすることで弱体化することを時間切れとあらわしたのではないかと透は予想した。
そして彼がここに来たその目的とは隠れるだけではない。それは………
「だから力の源となっている『愛情の聖剣』をここで取り出すんだ」