理由&分析
「それで透君はどうやって仁を縛っているの?」
蓮の疑問は当然のことだった。今の黒羽 仁を捕まえるというのは相当難しい。にもかかわらず透は説教を受けているときに何気なくそんなことを行っている。
だから蓮たちは気になっているのだ。
「いやあ、よくよく考えてみたら案外簡単にできたんだよ」
「どういうこと?」
「彼の体には『破滅の聖剣』と同じく雪白一族を使って創られた『愛情の聖剣』が埋め込まれているんだよ。まあすでに埋め込まれているというよりも彼の体と混ざり合っているみたいなんだけどね」
「それが何か関係あんのか?」
「大ありだよ。『破滅の聖剣』と『愛情の聖剣』にはその製造過程によって生まれた繋がりがあるんだよ。それを僕は利用して『愛情の聖剣』の機能を封印し、その副産物として混ざり合っている彼の体も封じているというわけなんだよ。ちなみに彼に『破滅の聖剣』を刺したのはその繋がりをより強くするためだったのさ」
「なるほど。しかしそれなら逆に乗っ取られる可能性もあるのではないですか?」
瞬の鋭い質問に対して透は笑ったまま気楽に答える。
「それはないよ。2つの聖剣は雪白からできているんだから雪白である僕の方が力を引き出せるんだよ。とはいえ彼は聖剣を合成したようだから実は確実といえるわけじゃあなかったんだけどね」
『え!?』
あっさりとそんなことを言う透。しかしこれはまだいい方だった。
「まあ体と溶け合っている聖剣とあの『勇者の聖剣』を混ぜ合わせた時点でかなり危ない状態だったのに『破滅の聖剣』でわざと均衡状態を崩して力を乱すってこともやっていたから成功確率が低いわけじゃあないんだよ」
「………それって下手したら彼が扱う魔力が暴走して爆発するということはないですよね師匠」
瞳がおそるおそる聞くと満面の笑みで、それはもう嬉しそうに答える透。
「僕は師匠じゃないけど答えよう。爆発って………ロマンだよね!!」
「さすが師匠!!」
「なんで喜んでるんだよ!?」
この2人、透の方は否定しているがどう考えてもお似合いの師弟だろう。しかも人の体が爆発するかもしれないのに喜ぶというのはどういうことなのか。
もう彼らには一般常識を期待できないのかもしれない。
「それで透。こいつらの力がどういったものなのかわかったのか?」
それかけていた話題を修正するディア。さすがにこれ以上は遊んでいられないと思ったのだろう。
すでに仁が来てから1時間半ほど経っている。もしかしたら増援が来るかもしれないこの状況では彼らについての情報はあればある方がいい。
まあ、最初から遊ぼうとするなといえばそれまでなのだが。
とにかく一番強いであろう仁を捕まえることに成功したのはいいが、その方法は他の敵に通用するやり方でない以上、別の方法がなければ結局は負けてしまう。
透は何か気づくことがあったのだろうか?