漫才&説教
床には上半身と下半身で分けられた雪白 透の死体がある。
その体からは血も流れているし、斬られたところからは臓器も見える。………にもかかわらず同じ部屋に雪白 透が立っているというのはどういうことなのだろうか?
「ふう、ようやくできたよ」
「な、何をしたんだ貴様は!?」
「ん?何をしたかなんて君には関係ないだろう。まあ答え合わせぐらいになら付き合ってあげるから頑張って予測して見なよ」
さきほどまでとは違い、余裕をなくした黒羽 仁。その胸にはいまだに聖剣が刺さったままであるのに抜こうともせず透へとつかみかかろうとする。
それをギリギリのところで避ける透は彼をおちょくろうとしているのだろう。
「ディアは時間を稼いでくれてありがとうね。君がいなかったらここまでうまくはいかなかっただろうからね」
「ふっ、そんなに褒めるものではない。この程度我にとっては当然よ」
「ひゅーかっこいいよ!!さすがディア、他の人とは格が違うね!!」
「褒めたいならもっと褒めるがいい!!」
「………いいかげんにしなさい」
「「はい!!」」
突然漫才じみたことをし始めたディアと透に蓮がキレた。蓮から感じられる威圧感によりどちらもすかさず土下座をして謝る始末。
ちなみにこのときも仁は透に攻撃をしようとしているのだがどうやったのか土下座をしながらかわし続けている。
「それで?どういうことなのか説明してくれるのよね」
「も、もちろんですよ………」
蓮の説教が30分ほどしてようやく終わったころには緊張感なんてものは消し飛んでいた。
ちなみにどうやったのか仁は説教の間に体を貫いていた聖剣によって縛られていた。
さらに言うなら瞬たちは巻き添えを恐れて一切口を開いていない。
「えっとですね、僕の聖剣が雪白一族の体から作られていることは知っていますよね?」
「ええ知っているわよ」
「僕はその成り立ちを利用して『破滅の聖剣』の中に隠れていたんですよ」
だから気配を感じさせることなく仁を刺せたのだと透は言う。
「でも、それならあの死体は何なの?」
「あれは偽装工作用の魔道具です。あれを動かして戦わせながら彼を観察していたんですけどそのおかげで色々と対策が練れたんです」
「………そうなの。ところでディアちゃんはどうして見抜けたの?」
「透が聖剣の中に入ることができるのを知っていたことと、こいつが偽装した死体が勇者に向かって行ったように思えたことから推測したのだ」
「どういうことですか?」
「いまの勇者には透は勝てないと、戦えば殺されると思っていたのだ。ならばこやつは勇者と出会った時がむしゃらに突撃をするのではなく情けない姿をさらしてでも逃げようとするはずだからな。そうでなかったということは何か生きるための策があったのではないかと思ったのだ」
『なるほど』
こればっかりは透と知り合ってからが長いディアだからこそわかったことだろう。瞬も長いと言えば長いが彼はどちらかというと日常的な彼と長く過ごしてきたのでわからなかったのだろう。
「さて、それじゃあ最後に。どうやって仁を縛っているのか教えてもらうわよ?」
答え合わせもまた終わりに近づいていく。