回復&想定外
「さて、貴様が死ぬのにはまだ時間がかかるが何か言っておきたいことはあるか?」
「そうだね。君は雪白 透の仲間だと思っていたんだけど敵討ちをしないっていうのはどういうことなんだい?」
敵討ち。
確かにディアは国のことと友達の事ならば前者を優先するが、今回は彼女の国は絡んでいない。
なのに透の敵を討とうとするのではなく仁がうっとうしいからという理由で戦おうとするのはなぜなのか。それは蓮たちも気になっていた。
「そうねディアちゃん。もういまさら仁を殺そうとすることを止めようとは思わないけれどその理由が敵討ちじゃないのはどうしてなの?」
「案外貴様もわかっていないのだな」
蓮の質問にたいしてディアは若干失望したといった表情で答える。
「蓮。そもそもの話だがな貴様は復讐というものがどれだけ無駄で、無意味で、無価値なものか。ほかならぬ透によって教えられているであろう。それなのに復讐をするということは我にはできんよ」
「………それはそうだけど」
「そうだけど感情が納得しないなんてことは言うな。それは結局のところ分かってないということと同義であるからな」
ディアの言うことにしぶしぶではあるが納得した蓮たち。しかし仁はあと1分時間稼ぎをする必要があった。だから彼はさらに話を続けようとする。
「なるほど、だから敵討ちじゃあなかったのか。納得納得。まあ僕としてはあいつの無様な姿が見れただけで満足できたんだけどね」
「ほう。透の無様な姿か。どんなものだったのか聞かせてもらおうか」
仁の目論見通りディアは話に食いついてきた。復讐はしないとか言っているがあいつのことを話せば聞いてくると思った通りだった。
「先に僕の相手をしたのは悠弥さんだったんだけどさ。悠弥さんが僕に負けた瞬間に彼は逃げようとしたんだよ」
「ほう。悠弥殿は見捨ててか?」
「ああそうさ。しかも僕が逃げられないようにしてからは適当に聖剣を振り回し始めてさ。全部の聖剣を壊したら殺さないでくださいって泣きながら言ってたんだよ」
「仁!!」
「それはまた実際に見ておきたい光景であったな。その場にいたなら爆笑できたであろうに」
「ディア。てめえ!!」
残り時間10秒を切った。しかし仁は違和感を覚えていた。
いくら復讐が空しいと言っても死んだ仲間をこれだけ馬鹿にしているのにこんなに堪えないものだろうか?
そんな仁の疑問はディアの言葉によって解消される。
「そうだ。一つ言い忘れていたが貴様が解毒をしているのことには気づいていた。気づいたうえで放っておいたのだよ」
「………なんだって?」
「まあその答えは透に刺されてからわかるであろうよ」
そして解毒が終わると同時に体の修復も完了した仁はディアを殺そうとするが。
胸に剣が生えてきたことでそれはできないのだった。