窮地&休憩
「ところでー、徳治さまが最後に言った『時間切れは3日らしい』っていうのは何のことなんでしょうかー?」
「ん?それは勇者たちの強化の制限時間じゃないかな?まあ3日も耐えなければいけないっていうのは相当難しいと思うけど」
「私は仁と戦ったのだけど、あれはもう別物だったね。何とか死んだふりが成功したからよかったもののそうじゃなかったら私はここにはどころかこの世にはいなかっただろうね」
「そんなに強くなっていたんですか?」
前までは悠弥どころか蓮にも敵わなかったことを考えるとその強化度合いはかなりものだろう。
それほど強い強化が3日も持つというのはなぜなのか。魔法や術式、聖剣の研究者でもある透からしてみれば興味は尽きないのだが、今の状況では調べる前に殺されてしまうので我慢している。
のだけど
「それほどの強化を聖剣を用いて行うならどうすればいいのか?今回使われた聖剣にはおそらく『勇者の聖剣』が使われているのだろう。でもそれを合成した時点で効力は落ちるはずなんだよな。………いや、でもあの『勇者の聖剣』がそんな力を失うことがあるのかな?」
「………透君?」
自分の家に帰ったことでいつも通りの行動をしてしまう透だった。
「まったく、そういうのは全部終わってからにしてよね」
「いやいや、もしも今彼らの強化の謎が解ければその対策だってできるかもしれないじゃないか」
「なるほど一理あるな。しかし透よ、貴様はいまわかっていることだけでその謎を解くことができるのか?」
「………できません。おそらくは『勇者の聖剣』が鍵だとは思うんだけどね」
「だったら師匠、『勇者の聖剣』を彼らから奪うっていうのはどうですか?」
透の話を聞いてそんな考えを言ってみた瞳だったがそれは却下された。
「今の勇者から聖剣を奪ってもまた彼の手元に聖剣が戻るだけだろう。だからといって聖剣を壊そうとしても僕の『破滅の聖剣』でもおそらくは壊せないんだよな」
「壊せる、壊せないの前にアレは一応国の所有物ですから勝手に壊すと罪に問われる可能性がありますよ」
「あー、そうだったっけ?あの聖剣、国の都合なんて考えないから忘れてたよ」
「まあ国が取り上げようとして取り上げられるものでもないしな。むしろ仁が起こした問題の処理を国がしなければいけないからってずいぶん大変そうでしたよ」
『勇者の聖剣』の持ち主はこの国の顔みたいに扱われるため勇者が人に言えないようなことをした場合は国が総力を挙げてその事実をもみ消すというのはよく言われていることだ。
「こうやって考えると国で働きたくはないね」
「そうですねー」
こんな休めるはずはないのにのんびりしてしまうそんな一幕だった。